夢見りあむのSSRが実装された。目に入ったのはそのコミュの内容だった。
「アイドルになってすぐのよくわかんない選挙?とかでみんなが好き勝手言ってさ。」
「ぼくじゃないぼくの話をしてた。」
「結局、ぼくが求められてるわけじゃなかったんでしょ?ただ飽きるまでオモチャに出来ればよかったんだよね?」
正しい。
夢見りあむは私が思っていたより強く聡い娘だった。無論りあむを純粋に好いての票もあっただろうし、彼女自身が思っているほど酷い状況ではなかっただろう。
しかしりあむの想定は間違いなく正しい。夢見りあむを純粋に応援している票があれば、面白がった外野の票もある。踏みにじられた者達からの呪いの票もあった。
界隈は大盛り上がりだった。「夢見りあむが許せない」を皮切りにお気持ち表明文学が大流行し、あらゆる人間の感情が入り乱れた。
その中に夢見りあむという女をちゃんと見たものがどれだけいたのだろうか。
当時の私は(今の私も)追加キャラを素直に応援できない複雑な気持ちの中にいたが、りあむには同情していたんだと思う。デレステのコミュを見る限り、こんな形で「評価」をされるのは彼女の本意でないどころか、地雷のように見えた。
これから彼女が炎上系アイドルとしてどのような顔を見せたとしても、総選挙というメタな次元から張り付いた人々からの印象、レッテルは剥がれない。
「可哀想に」という哀れみを抱いた人間は私だけではなかったのを観測している。彼女はずっとこの呪いを背負わざるを得ないのだと思っていた。
しかしりあむは強かった。自分の状況を理解した上で、それに反抗する気概を見せた。かけられた呪いすら飲み込んでしまった。
あまりにも正しく、強い。デレステが始まって以来最高のコミュを見たと思った。
と、同時に。
アイドルマスターシンデレラガールズというゲームを作っている人間のことを、理解させられてしまった。
[夢見りあむは救われたい]という、お気持ち表明文学をなぞった称号。
総選挙におけるりあむの立ち位置を完璧に理解したコミュの内容。
夢見りあむを作っている人間は、夢見りあむのことだけではなく、我々のことも完璧に理解している。
考えてみれば当然のことだ。キャラ人気で商売をしているのだから、プロデューサーのことを理解せずにこのゲームが作れるわけはない。
であれば、夢見りあむにかけられた呪いも、彼らは当然知っている。
総選挙への呪いを、声無し担当の喘ぎを、待遇格差に苦しむ者達を。
[夢見りあむは救われたい]が「お前らを見ているぞ」という宣言に他ならない以上、「お前らは救わない」という宣言であることにも他ならない。
明言されていないうちは直視せずに済んでいたものを、はっきりと見せつけられた。
ああきっと、Velvet Roseの扱いも想定通りなんだろうな、とふと思った。
夢見りあむをこうも見事に描ける彼らが、彼女達の初登場に気を遣えないわけはあるまい。
旧いファンを煽って、ヘイトを一身に受け、後から出てくる久川姉妹の分まで全て背負ってもらう。
彼女たちがいるから、比較的に久川姉妹は受け入れられやすくなる。久川姉妹のライターは無難に、素直に、彼女たちの可愛さだけを書いた。
そしてVelvet Rose自身は、自分の好きなデレマスを否定されたくない、まあ有り体に言ってしまえば「信者」と呼ばれるファンたちが応援してくれる。(りあむのファンと一緒で、そういう人たちだけってことは当然ないだろうけど)
アイドルマスターシンデレラガールズの運営が一番アイドルのプロデュースが上手いに決まっているのだ。
……自分でも推理と邪推の区別がつかないが、少なくともちとせ達のおかれている状況を知らないってことはないだろう。
彼らが全て知っていることだけは間違いない。夢見りあむがそれを証明した。
そう、彼らは私を知っている。
あの子に声を、あの子に出番を。才がないながらも選挙活動をして課金をしてイベ走って、あの子のためだけに上げ続けた声を彼らは聞いていた。
でも救わないんだ。彼らは私を、あの子を救わない。それを事実として認識してしまった。
この世は資本主義なんだから、彼らにあの子を救う義務なんてない。「救わない」と言われたところで、私は文句を言うこともできない。
お前はもう客じゃないよ、って言われた気分だったし、実際そうなんだと思った。
ミュウツーの逆襲のリメイクを見た時と同じ気分だった。その数倍重かったけど。
辞めてえなあ、このゲーム。
でもすこだなあ、夢見りあむ。
今の今まで運営が何も見てないと思ってたとかピュアすぎない?
こういうお気持ち長文が出れば出るほど運営の思うつぼなんだよなあ
ただユーザを煽るだけの炎上商法に好意を持てるなんて奇特な人間もいたもんだな