他の学級代表や委員会が提案したり、是非を語ったりすることはあるが、最終的な結論は生徒会が決めることになっている。
“大校則”はいわば校則の支柱であり、故にこれを無視した校則は作れないし、変える事もできないようになっている。
大校則に反するような校則は、たとえ生徒会でも作ってはいけないんだ。
だから生徒会は、不真面目団が悪目立ちするような行為をしたところで、それを厳しく取り締まったり、罰則を与えるようなことはできない。
今まで作れなかった新しい校則を作ったり、既存の校則を変えたり出来る。
生徒会の狙いは、それだったのか。
「え、じゃあオイラのピンクヘアーも、『髪を染めるの禁止』みたいな校則ができる可能性が……」
「『身体に影響を及ぼすオシャレは禁止』って校則の適用範囲を広げれば、いずれそうなる」
「生徒会がそれを気に入らないと思っているなら、いくらでも適用できるように校則を作り変える。『大校則すら修正できる』という前例も作れるしな」
「このようなことは、許されることじゃない。ルールを特定個人にとって都合よく扱うなど、あってはならぬ!」
ウサクは決起した。
どうもウサクは思想が強いというか、こういうことに敏感な人間なので、見過ごせないのだろう。
「オイラも名乗りをあげるっす!」
カジマも、不真面目団の存続の危機なのもあって、それに同調する。
「まあ、やめとけって嗜める理由はないな」
普段なら、こういった事柄に俺は距離を取るのだが、今回は協力するとことにした。
不真面目団がどうなろうと興味ないが、俺にまで大きく関係する可能性が出てきたなら話は違う。
そっちのほうが、面倒くさそうだからな。
とはいえ、学級代表でもなければ委員会にも入っていない俺たちでは、出来ることはそう多くない。
ロクな手札がないように思えた。
しかし、ウサクの頭の中では、既にゲームの攻略法が見えていたらしい。
「じゃあ、とりあえず、デモっとけ。カジマは不真面目団を掻き集めろ。人数は多ければ多いほど良い」
あまり期待できそうにはなかったが。
「え~? でも~?」
「文句を言うなら我にじゃなく、ストライキで生徒会に向けてやれ。それで問題意識を大衆、ひいては生徒会や学級代表、委員会にも植え付ける」
「だが、それで解決するとも思えないぞ」
在校生のほとんどは、そういう行為を悪目立ちの範疇だと思っている。
かくいう、俺もそうだ。
「全く、マスダはそういうのが本当に嫌いなんだな。デモ自体は、民主主義の世界において真っ当な行為だぞ」
「それをしなきゃいけないってのなら、俺はいつだって鞍替えしてやる」
「やれやれ、意固地だな。デモやストライキが健全な社会を築くために必要かどうかは、フランスや韓国を見ていれば分かるというのに」
「その例えが好例なのか皮肉なのか、俺たちには分からないんだが」
ウサクのこういう、都合の良いときだけ他国を例えに出す性分は、どうも苦手だ。
「お前のやること自体に反対するつもりはないが、それを俺にやれっていうのなら、悪いが抜けるぞ」
「ふん、そう言うだろうと思った。デモは我と、不真面目団でやる。貴様は“ヤツ”を連れてこい。生徒会に悟られぬようにな」
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