2018-05-05

[] #55-3「代々大原則」

≪ 前

校則を作ったり変えたりする場合基本的には生徒会主動だ。

他の学級代表委員会提案したり、是非を語ったりすることはあるが、最終的な結論生徒会が決めることになっている。

はいっても、好き勝手にできるってわけじゃない。

理由としては、大校則存在が大きいだろう。

“大校則はいわば校則の支柱であり、故にこれを無視した校則は作れないし、変える事もできないようになっている。

校則に反するような校則は、たとえ生徒会でも作ってはいけないんだ。

から生徒会は、不真面目団が悪目立ちするような行為をしたところで、それを厳しく取り締まったり罰則を与えるようなことはできない。

だが、大校則の方から変えてしまえば、話は違う。

今まで作れなかった新しい校則を作ったり、既存校則を変えたり出来る。

生徒会の狙いは、それだったのか。


「え、じゃあオイラピンクヘアーも、『髪を染めるの禁止』みたいな校則ができる可能性が……」

「『身体に影響を及ぼすオシャレは禁止』って校則適用範囲を広げれば、いずれそうなる」

「で、でも、タトゥーシールタイプなら……」

生徒会がそれを気に入らないと思っているなら、いくらでも適用できるように校則を作り変える。『大校則すら修正できる』という前例も作れるしな」

どうやら事態は、俺の第一印象よりも割と重大だったらしい。

「このようなことは、許されることじゃない。ルール特定個人にとって都合よく扱うなど、あってはならぬ!」

ウサクは決起した。

どうもウサクは思想が強いというか、こういうことに敏感な人間なので、見過ごせないのだろう。

「オイラも名乗りをあげるっす!」

カジマも、不真面目団の存続の危機なのもあって、それに同調する。

「まあ、やめとけって嗜める理由はないな」

普段なら、こういった事柄に俺は距離を取るのだが、今回は協力するとことにした。

不真面目団がどうなろうと興味ないが、俺にまで大きく関係する可能性が出てきたなら話は違う。

そっちのほうが、面倒くさそうだからな。


とはいえ、学級代表でもなければ委員会にも入っていない俺たちでは、出来ることはそう多くない。

ロクな手札がないように思えた。

しかし、ウサクの頭の中では、既にゲーム攻略法が見えていたらしい。

「じゃあ、とりあえず、デモっとけ。カジマは不真面目団を掻き集めろ。人数は多ければ多いほど良い」

まり期待できそうにはなかったが。

「え~? でも~?」

文句を言うなら我にじゃなく、ストライキ生徒会に向けてやれ。それで問題意識大衆、ひいては生徒会や学級代表委員会にも植え付ける」

「だが、それで解決するとも思えないぞ」

在校生ほとんどは、そういう行為を悪目立ちの範疇だと思っている。

かくいう、俺もそうだ。

「全く、マスダはそういうのが本当に嫌いなんだな。デモ自体は、民主主義世界において真っ当な行為だぞ」

行為正当性うんぬんは関係ない。

嫌なものは嫌なのだ

「それをしなきゃいけないってのなら、俺はいだって鞍替えしてやる」

やれやれ、意固地だな。デモストライキ健全社会を築くために必要かどうかは、フランス韓国を見ていれば分かるというのに」

「その例えが好例なのか皮肉なのか、俺たちには分からないんだが」

ウサクのこういう、都合の良いときだけ他国を例えに出す性分は、どうも苦手だ。

「お前のやること自体に反対するつもりはないが、それを俺にやれっていうのなら、悪いが抜けるぞ」

「ふん、そう言うだろうと思った。デモは我と、不真面目団でやる。貴様は“ヤツ”を連れてこい。生徒会に悟られぬようにな」

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記事への反応 -
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    • ルールとは何だろう。 俺がその問いに回答するには辞書に頼らざるを得ないし、それ以上の答えは用意できない。 そういった概念について、漫然としか考えていないからだ。 知って...

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