2018-05-06

[] #55-4「代々大原則」

≪ 前

「……それで……こんなところに連れてきて何のつもり?」

ウサクの言っていた“ヤツ”とは、生徒会長のことだった。

「かなり警戒していただろうに、よく連れてこれたっすね。どうやったんすか、マスダ」

「いや、別に。『相談したいことがあるから来てくれ』って頼んだら、フツーに付いてきてくれたが」

不真面目団でも何でもない生徒ならば警戒されにくいから、ウサクは俺に頼んだのだろう。

「あー、はいはい、“フツー”にね」

だが、俺の言葉を、誰もそのまま受け取ってくれなかった。

どうやら拉致まがいのことでもやったと思われているらしい。


それにしても、連れてきたはいいが、ウサクはどうするつもりなんだ。

まさか生徒会長を力づくで脅して、大校則修正撤回させるなんてわけでもないだろうし。

「大校則修正について尋ねたい。あれは、貴様の案か?」

「それが聞きたいこと?……だったら答えはノーだよ……むしろ反対した」

意外な返答だった。

どうやら生徒会というのも一枚岩ではないらしい。

「でも……オレっち一人が反対したら通らない……っていうわけにもいかないでしょうよ」

「反対しているのは貴様一人ではない、としたら?」

「そりゃあ不真面目団は反対するだろうけど……」

「そうじゃない。学級代表委員会の者どもに、今回の大校則修正が如何に問題か、説明して回ったのだ。すると数名が反対派に入ってくれた」

そんなことをしていたか

ということは、生徒会長にも反対派に加わって欲しいってのが目的か。

「なるほどね……でもオレっちが公に反対派に入るわけにはいかんよ……」

しかし、生徒会長の返事は色よくない。

会長個人がどう思っているかはともかく、生徒会トップである以上は、それを押し殺さないとならないからだ。

味方に引き入れれば有利になるのは間違いないが、考えが甘かったか

「誤解するな。要求はそんなことではない」

だが、ウサクの目論みは別のところにあった。

「不真面目団は生まれ変わる。『大校則修正・反対団』としてな。貴様には、それを公式に認めてもらいたい」

なるほど、話が見えてきたぞ。

不真面目団で数を揃えて、デモとかは出来るかもしれないが、それだけでは決定打にならない。

校則修正に立ち向かうには、どうしても生徒会干渉できる立場人間と、そこに集う組織必要だ。

まり不真面目団を、公に認められた組織に挿げ替えようってわけだ。

「へえ……あんさんみたいなのが一般生徒にいたとはね……面白い……手続きはとっておこう」

ウサクは思想人一倍強いだけの輩だと思っていたが、どうやら俺は少しみくびっていたらしい。


…………

こうして不真面目団、もとい“大校則修正・反対団”の進撃が始まった。

カジマなどの、もとから不真面目団にいたメンバー啓蒙活動

「大校則修正に反対!」

「た~い! たいたい!」

生徒会の横暴を許すな!」

「すな! すな! すな! すな!」


加入した学級代表委員会メンバーは、集会にて積極的意見を発した。

そこには大校則修正・反対団の代表である、ウサクの姿もあった。

「……であるからして、大校則修正すれば、既存校則も作り変えなければならない。しかも、狂った内容の校則が作られる可能性も出てくる。学級は、学校社会崩壊する」

「懸案要素は分かりますが、そうならないよう、慎重に内容を修正するつもりです」

「そのための論拠を出せ。それに、わざわざ大校則修正する必要性についても、生徒会説明できていない」

普段からこういったことに関心のあるウサクは、とても弁が立つ。

さすがというか、何というか。

このまま行けば、いずれ大校則修正も止められる。

その時、皆そう思っていた。

だが生徒会は、俺たちが思っているよりも遥かに、これが仁義なき戦いであることを理解していたんだ。

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