「反対×反対……え、何だアレは」
「な、何で鎮圧部が」
そんな鎮圧部が、校則に違反した行為をしているわけでもないカジマたちに、接触する理由はないはずだ。
「君たち“反対団”のメンバーに、校則の7条を破ったものがいると聞いて、馳せ参じた」
鎮圧部が赴いた理由は、カジマたちのデモとは直接関係がない、校則違反についてだった。
だが、それは緊張感をより一層高める報せだったんだ。
「カジマ……そこの君だな?」
「な、なんでオイラだって!? あれを知っているのは……ああっ!」
デモそのものを止めることができないなら、校則が適用される別の案件で取り締まればいい。
そうすれば、懲罰中の生徒はマトモに動くことができなくなる。
結局、デモもできなくなるってわけだ。
「アンタら、こんなんで本当にいいんすか! 校則が大きく変わっちゃうんすよ?」
「我ら鎮圧部は、校則に隷属することはあっても、選り好みはしない。さあ、ついてこい」
「や、やめてくれっす~」
カジマの叫びは虚しく響く。
「な、なあ、どうする? 残りの奴らで続けるべきか?」
「いや……多分、このままじゃあ、みんなカジマのようになるだけだろうな」
今回、連れて行かれたのはカジマだけ。
デモを続けることに大して支障はない。
だが、みんな校則の一つや二つ三つや四つ、守れていないことはあった。
多くは見過ごされているか、誰にも認知されていないだけである。
その気になれば、ほとんどの生徒をカジマのように出来てしまうかもしれない。
そう思わせるには、十分な出来事だったんだ。
反対派を、こんな方法で黙らせに来るとは。
反対団のメンバーである、学級代表、委員会にも、その手は伸びた。
「今日は学級代表は、“近々ある行事”で忙しいので欠席です。それに関係している委員会も、ね」
副会長が、坦々と報告をする。
だが、その時、わずかに口元が緩むのをウサクは見逃さなかった。
集会に参加している学級代表も、委員会も、本来の仕事が発生したら、そちらを優先せざるを得ない。
「くっ、だが我一人でも、大校則修正の議論で戦うことは出来る……」
「では、今日の議題は、まず『花壇に植える花について』です」
「な、何ぃ?」
生徒会は、更にウサクの弁舌をも封じた。
他の議題ばかりを挙げて、大校則修正に対する話をさせないようにしたのだ。
これではいつまでも後回しにされて、俺たちは何もできないままだ。
「……それで……こんなところに連れてきて何のつもり?」 ウサクの言っていた“ヤツ”とは、生徒会長のことだった。 「かなり警戒していただろうに、よく連れてこれたっすね。ど...
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