2016-09-25

聲の形」は感動ポルノのその後を描いた物語

自分聴覚障害者感動ポルノを描いてくれと言われたらこういう作品を描くと思う

主人公男の子クラスのガキ大将

ヒロインは耳の不自由女の子

ある日、主人公の通う学校ヒロインが転校し、そこから物語は始まる

主人公は耳の不自由ヒロインに対し好奇心からイジメを行う

ある者はそれに加担し、ある者は見て見ぬふりをする

しかしそのイジメエスカレートし過ぎた結果、大人の介入を招き、主人公は一人全ての罪を背負わされる

ヒロインへのイジメはその後も続くが、主人公クラスで完全に孤立する

仲の良かった友達に殴られ、上靴を隠され、イジメる側から一転、イジメられる側になった主人公

ある日、朝早く登校してみると、いそいそと自分自身の机への落書きを消しているヒロインを目撃する

やられるばかりでやり返すことのない、そんなヒロインを見て内心馬鹿にする主人公

自分はそんな事はないとばかりに、クラスメイトが上靴を隠す現場をおさえ殴り掛かる

しかし、あえなく返り討ちにあってしま

ズタボロになって横たわる主人公、ふとそこへあらわれるヒロイン

そっと主人公の元へ歩み寄り、笑顔で手を差し伸べる

「親切ぶるな!言いたいことがあるなら言えよっ!」

差し伸べられた手、それを拒否した主人公は叫ぶ

一ヶ月後ヒロインは転校する

明くる日の朝、机をみて主人公は気付く

あの日の朝、いやこれまでずっと、ヒロイン必死落書きを消していたのは彼女の机ではなかった、自分の机だったのだ……と

自分の愚かさに気付いた主人公

しかヒロインはもういない

行き場のない気持ちを抱えたまま、一月、一年と時はたち、主人公は次第に自分の殻へとこもっていく

友人もなく、楽しいことも、したいことも、自分にはただの一つも生きている意味がない

死のう……

いつしか主人公自殺を考えるようになっていた

死ぬ前に何がしたい?

そうだ、あの女の子に会いたい……

会って……俺は――

そして、ヒロイン行方が分かった日

主人公は全ての身支度を整えヒロインに会いに行く

そこへ近づくにつれ、鼓動が高鳴る、トクントクンと

そんな自分に動揺しながらも、一歩、また一歩主人公は歩を進める

そして――

髪は少し伸びてる

身長も、いや、でも俺の方が高い

服は?制服

良かった、学校に行ってるんだ

何か言わないと、何か……

そうだ……一体、俺は……何を――

ずっと望んでいたこと、しかし心の揺らぎを止められない主人公

成長したヒロイン、昔とは何もかもが違う

でも……

ただ一つ、かわらないもの……

そこにはあの頃と同じよう、ただ静かに、そしてやさしく微笑みを湛える笑顔があった……


「ともだちに……なれるか?」

主人公の口から出た言葉と憶えたての手話

はっと驚き頬を赤らめるヒロイン

その右手主人公の手のひらをぐっと握っていた



この物語にはヒロインの心の変化は必要ない

心の内側を描く必要もない

ヒロインはただ一人孤独に頑張り、ただひたすらに耐え、ただひたすらに優しく、最後主人公を受け入れるだけの人形で良い

なぜなら感動ポルノから

聴覚障害物語ギミックだ、主人公イジメ動機となる

そして障害というハンデを背負うヒロインが頑張る姿は読者の涙を誘う

障害者人格無視して、天使のように扱い、都合の良い部分だけを切り抜き

健常者が成長するための道具としてのみ使う

これが感動ポルノだと思う

ところで

聲の形感動ポルノ

ヒロインイジメたことで孤立した主人公が成長した後、ヒロインと再会し救われる、そして恋に落ちる

こんなもの感動ポルノしかない」

こういう声がある

しかしそれは違うと思う

聲の形はここで物語が終わるのではない

ここから物語が始まるのだ

殆どの人はわかっていると思うが上述した物語聲の形の導入部だ

確かにここで物語が終わればそれは感動ポルノだと思う

しか聲の形という物語はこの出会い、再会の部分から始まるのだ

そしてその後、感動ポルノでは決して描かれることはないであろうヒロイン内面、その葛藤

決して天使はいえないようなどす黒い部分、それらが主人公含めその他の登場人物と共に描き出される

主人公は確かにいじめっ子ではあるがいじめられっ子でもある

ヒロインは静かでやさしいだけの天使ではない、他人迷惑をかけ、沢山の間違いを犯す

主人公ヒロインに救われるが、同時にまたヒロイン主人公に救われる

聲の形で描かれる主人公ヒロインは分かりやす勧善懲悪のような関係ではない

脇を固める登場人物達についても同じだ

ただ、聲の形で描き出されるキャラクターはみな、はっきりいって変人ばかりだ

美しい物語ありがちな聖人はまったく出てこない

から聲の形が嫌いだ、物語が気に入らない、そういう声があるのは仕方がないだろう

しか感動ポルノではないと思う

聲の形本来ならば幕が閉じる、美しい物語の終わりから始まる

聲の形」は感動ポルノのその後を描いた物語だと思う

  • 却下 つーか勧善懲悪はべつにポルノとイコールではない 鑑賞者が射精して気持ちよくなるものがポルノだよ 声の形は最終的に射精に持っていっているところが駄目だと思われる

  • 何も判ってない。 あれが「感動ポルノ」なのは、いじめられた側が「いじめ行為」を糧に成長するような描写があるからで、 虐められた奴や主人公に美しい物語が用意されているからで...

  • ヒロインは聴覚障害が治ったもしくは克服したの?デアデビル的なくらいに 治ってないのだとしたら主人公は 聴覚障碍者で お人好しで 優しくて かわいくて 恩を着せたことがある ...

    • ヒロインは、かわいいのはたしかだけど、別にお人好しなわけでも優しいわけでもないぞ あいつの内心はかなりどす黒いはず

  • 聲の形で描き出されるキャラクターはみな、はっきりいってイイヒトばかりだ 娯楽漫画・アニメにありがちな、ずれているように見えて根っこは正しく、悪意を持った者がいない。 完全...

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