かつてはテーマパークと住居エリアを融合し、新時代の週末の過ごし場所として一世を風靡したこの場所は、今となっては廃墟同様の商業ビルと、無人と化したマンションが建て並ぶゴーストタウンに変化していた。
まぁ別に何かをするわけでもなく、知らない人がプレイしている格闘ゲームを、横でタバコを吸いながら眺めてる。
ふと店内の端に目を向けると、知り合いの男女3人が丸テーブルを囲って飲物を飲んでいた。
その知り合いに会うのが久々で、何て声をかけていいかわからなかったけど、向こうは僕に気がついたらしく、声をかけてくれた。
僕は別にこれといって用事がなかったので、彼らと一緒に暇な時間を過ごすことにした。
見回せば見回すほど、大量の廃棄物と化した町並みが目に映る。
どこの扉も鍵が壊されていて中には容易に侵入できる。
僕らが目指す場所は、死亡事故が起きた「ビバ・スカイダイビング」というアトラクションの前だった。
廃墟寸前なはずなのに、電源は生きている。
東京電力が倒産してから、誰も電気を管理するものがいなく、ただ100%オートメーション化された発電所から電気が送られてくるだけだ。
これはここに限った話ではなく、全国的にそうなってしまった。いわゆる、電気の使い放題である。
使い放題といえば聞こえはいいかもしれないが、実際は管理するものがいないので、当然事故が起きても誰も責任は取れないし、そして施設で電気事故が起きても誰も直せないので使用不能になってしまうという諸刃の剣だった。
そんなことはどうでもよく、動力室で動力のスイッチを入れ、僕らはそのビバ・スカイダイビングというアトラクションを起動する。
運行管理者なんていないので、自分たちで何でもやりたい放題だ。
4人の内、2人がそれに乗り込み、発車していった。
もう10分ほどたっても戻ってこない。何があったのかは全くわからない。
警察をよぼうにも当然誰もいないという事実と、廃墟内に不法侵入してしまっている事実があるので通報すらできない状態。
僕と残された彼女はとりあえずこのまま動力を入れっぱなしにするのは危険だという意見で一致して、動力室でスイッチを切り、今しばらく待つことにした。
もう1時間ほどたっても何も反応が無いので、とりあえず書き置きを書いて僕らはその場所を離れることにした。
外に出ると、目の前には居住区と商業区とのちょうど境目があった。
その境目を隔てて左が商業区、右が居住区なのだが、居住区は長年海風にあたって劣化したマンションたちが立ち並ぶ。公園緑化が施されていた部分はもうすべて砂漠となっていた。
建物を出てから僕は彼女と全く会話していないことに気がついた。
彼女と初めてあったのはもう6年ぐらい前のことだ。
当時山梨に住んでいた僕はよく都内で彼女とあっては遊んでいた。
彼女はこう返事をしてきた。
『彼らが心配だから家に帰らないでこのへんで一晩明かすつもり』
そんな返事をされた僕は、さすがに女の子一人でこんな場所に置く訳にはいかないと思ったので、
「じゃあ僕も残ろう」
と返事をした。彼女は安心したのか、かすかに笑顔になったように見えた。
僕らは居住区の中でも比較的風雨を凌げそうな場所を探し出し、そこで夜を明かすことにした。
相変わらず何も変化はなし。
「なぁ、飯、どうするかぁ?」
僕はそのまま彼女を寝かせてあげることにし、僕は窓際の壁に寄りかかって眠ることにした。
数時間後、僕は月明かりのまぶしさで目が覚めた。
彼女はどうしてるかな?と寝ているであろう方向に視線を向けると、そこには彼女はいなかった。
どうしたもんか…と思い、その部屋を出てあたりを探していると、商業区のあたりに人影がみえた。
こんな時間だからこそ危ない人がいるかも知れないので、僕はそっとその人影を追って見ることにした。
その人影は商業区の中のコンビニであったのであろう場所に入っていった。
そして10分ほど経つとその人影はビニール袋いっぱいに何かを詰めて出てきた。
その影を追って歩くこと数分、たどり着いた場所は僕らがさっきまでいた居住区の部屋だった。
まさか…と思いゆっくりと部屋に近づくと、そこにいたのは彼女だった。
「ふぅ…」
彼女はきょとんとして僕の顔を見上げた。
『ごめんね。。。おなかがすいたんだけどなんかないかなーって思ってコンビニがあった場所に行って適当に物色してきたw食べる?』
「ははは…食べようかw」
僕は彼女からカロリーメイトを受け取り、彼女と背中合わせで座ってそれを食べた。
色々会話した。初めてあった日のこと、あの日から日本はだいぶ変わってしまったこと、まだお台場が栄えていたことに一緒に来たかったこと。
数時間は会話した。さっきあった時なんか全く会話しなかったのに。
話つかれた僕は夜明けまでまだ時間があることもあり、再び寝ることにした。
『あ、、、うん、ごめんね。おやすみなさい。』
そうして再び眠りに落ち、、、、たはずだが、僕は彼女に起こされた。
『ねぇ、隣で寝てくれる?』
「え?どうして?」
『隣で寝てれば、あたしがどっか行きそうでもわかるでしょ?』
「あ、、、うん、いいけど、そっちはいいの?」
『あたしはいいの、ひとりだと怖い、、、、助けてよ、、、』
月明かりに照らされながら、僕ら二人は眠りの中で夜明けを待った。
という夢を見た。