2016-12-07

いかにして忘年会の準備を2日で終わらせたか

日時と人数、場所は決まっていて予約も問題なかった。

決まっていなかったのは催し物だ。

今年はどうするのだろうと思っていたら、まさか誰も何も用意していなかったことが直前の会議で露呈した。

そこで突然社長から名指しで私に担当者指名があった。

一番断れないだろうと私を選んだのだろう。当然異を唱えるものは一人もいなかった。なんてことだこのくそったれが。

社長からの条件は次の通り。

・賞品つきゲームを考えて欲しい

ポジティブな内容で終始できるゲームで、参加を強制するわけでもないがそれでいて希望者が偏りすぎないようにして欲しい。

・賞品の予算は5万円。3千円から1万円の範囲で10パターン用意して欲しい。

・はっきりとはいわないけど、当然僕が主役になれるゲームで頼むよ。

十分に時間があるならまだしも、2日後の夜までに用意するにはハードルが高すぎない?

我が社は社員数が30人程度の中小企業だ。

社員全員が顔見知りであるし、当然派閥もある。

ここ数年でやっと女性社員も定着し始めたが、お茶汲み文化的な考えが根強く残り男女の機会均等にはまだ程遠い状態だ。

席順も決めずに始めれば派閥の通りに着席して、散り散りになった女子はお酌を強制されてしまうのが目に見えている。

自分にしてみればそんな世界を勝ち抜いてきたからこそ今があるのだが、後輩たちにそれを求めるのも酷というものだ。

いずれにしても私が担当する以上、結果に不満を漏らさえるのは嫌だ。

公平でいて、それでいて彼女たちが存分に楽しめる状況をつくってやろうではないか

まずは席順を考えたのだが、思い切って女子会席を作ってしまうことにした。

会場はレストランを貸し切りにしたもので、6人席が5つ用意されていた。

その内ひとつ女子だけで占領して、男性は残りの席に抽選で座ってもらうことにした。

男性抽選公平性を出すために、予め席にトランプを重複しないように配置しておいて、入口でもう一組用意した同じカードシャッフルして引いてもらった。

引いたカードと同じ席に座ればよいので、上座下座関係なく誰から見ても公平だ。

(ちなみにこうしてカードを引いていく場合引く順番による違いはない。わからない人は確率勉強をして欲しい。)

更に言うと、そのカードを席次表にも記載しておくことで、同時にファーストドリンクオーダーも聞いてしまうことにした。

店員さんはカードの横に書かれたドリンクカードの席に届けるだけなのでとてもスムーズファーストドリンクを配ることができた。

これはお店の人から大好評だった。

つぎにゲーム内容を考えた結果、くじ引きトーク採用することにした。

棒の先に色を付けたものを数本用意しておいて、引き抜いた色のテーマにそったトークを行うというものだ。

テーブルから1名ずつ志願してもらい、一人が終わったら次のテーブルへと移っていく方法を取った。

賞品が欲しい人はトークに参加しなくてはならないし、かと言ってテーブルを順に回っていくことで連続参加を出来ないようにしてリスクとリターンのバランスを取った。

トークテーマにもネガティブな話が出てこないように気を遣った。

まずは当たりを用意して、今年ラッキーだったことを話しさえすれば無条件で抽選券を得られるようにした。

それ以外は他人を褒める話や、営業での成功体験、自らのふるさと自慢、ハズレに一発ネタなども盛り込んだ。

トーク評価は盛り上がりや最終的には社長がOKと言えばクリアとなり、自らの名前を書いた紙を投票箱に入れる事ができる。

時間いっぱいまでトークを回していき、終わったら投票から一枚ずつ紙を引き抜き、賞品がなくなるまで当選者を選ぶというものだ。

これならば連続トークを行ったとしても段々とハードルが高くなるし、トークに自信がなくても最終的には社長おべっかを使えば抽選にまでは参加できるようになる。

最後抽選というのもできるだけ不公平さをなくすためのポイントだ。

予めルールを書いた紙を各テーブルに配っておくことで、歓談タイム中に大体のルールを把握してもらうことができたのでゲーム自体スムーズに進行することができた。

こうしてゲームの準備はほぼ手元にあるもので全て終わらせることができたのだが、賞品を2日で手元に間に合わせることは流石に難しかった。

なので、ある程度価格と品物を下調べしておいて当日は目録を渡すことにした。

これならば賞品の到着にやきもきする必要はない。

さらに、ある程度予算を予告しておいて、その範囲ほしいものを当日に自ら申告してもらうようにした。

それを社長相談して、問題がなければ賞品として採用することで、さらゲームへの参加欲を刺激したのだ。

あとは賞品と当選者が決まれば、後日時間に余裕を持って本人へと届ければいいだけだ。

結果として、女子会席を作ったのは大成功だった。

司会も私がやることになったのだが、司会の目の前に女子会席を用意したのも手伝って彼女たちが大いに盛り上げてくれたのだ。

当日は前説トークを用意して臨んだのだが、それに対しても大げさなリアクションを次々に繰り出してくれた。

そうして最初空気が作られたので、その後のトーク大会も実に盛り上がった。

前説は、どれくらいまでのボケリアクションが許容されるのかの判断材料になる大切な儀式なのだということを学んだ。

一番大きなポイントは、審判役をノリの良い役員が引き受けてくれたことだった。

ホイッスルを持たせて、ゲスツッコミや程度の悪いガヤに対して警告を行うのが役目だ。

といってもシビアに判定するのではなく、あくまでおふざけの延長のようにそれでいて的確に役割を全うしてくれたおかげで、トークが滞ろうとも悪酔いする人間が騒ぎそうになろうとも空気が悪くなることは一切なかった

男性の席は仲の良い者悪いものランダムで座ることになったが、もともとこうした催しが嫌いなものは黙っていたし、それぞれが譲り合う程度の礼儀は当然持ち合わせていたようだ。

悪意を完全に取り除くことは出来ないが、無毒化することはできたようだ。

それなりに手腕の求められる役割だが、司会では両立できない役割なので今後も必ず配置したいと思った。(と言ってももう一度担当したいとも思わないが。)

最終的には、どんなトークテーマになろうとも社長を褒めちぎる会になった。

抽選権利獲得者が後を絶たず当選率の低さに空気が冷めそうになったが、超上機嫌な社長ポケットマネーで全員に当選できるだけの賞品を用意してくれることになりトークは更に加熱。誰もが笑顔にあふれる忘年会になった。

ただ一人、司会をしていたことで抽選を受けることができなかった私を除いて。

これから自分以外の人間に賞品を発注してから届ける仕事が残っている。なんてことだこのくそったれが。

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