2016-02-16

熱量警察です

おれは忘れもしない。

小学校社会科で初めて農業貿易について学んだころ、おれは調べ学習のため図書館に来ていた。

そこで手に取ったのは、たしか日本食糧事情についての本だったと思う。

その中の統計表にあった「熱量」という言葉意味が、その時のおれにはわからなかった。

だが時を同じくして国語辞典の引き方も教わったばかりのおれだ。

早速家から持ってきていた辞典で「熱量」を調べると、そこにはこう書かれていた。

カロリー」と。

えっ、カロリーってあのカロリー

あるある大辞典で忌み嫌われているあのカロリー

おれは混乱した。

作物の生産量ならキログラムとかトンとか、重量で記述するものじゃないの?

もちろん今ならわかる。

食料自給率カロリーベースで見るだとか、そういう意図の下で作られた統計だったのだろう。

だが当時は混乱した。

しかしこの事実は幼いおれの脳裏に深く刻みつけられた。

熱量とはカロリーである」と。

ところで現状を振り返ってみてほしい。

何か盛り上がっている様子や、勢いがあるさまを「すごい熱量」と表現しているのを見かけたことはないだろうか。

おれはこの表現がどうしても納得いかないのだ。

おいおい、熱量ってのはカロリーのことだぜ?

そこは「熱意」とか「熱気」とか「すごい勢い」とか、他に適切な表現があるじゃないかと。

それなのにそこを「熱量」と表現する文章最近多い気がする。

おれが思うには2012年満島ひかり中島みゆき「ファイト」を歌うカロリーメイトCMきっかけだと思っている。

とどけ、熱量

このキャッチコピーのせいではないか。

このコピー自体の出来はともかくとして、言わんとしていることはわかる。

カロリーメイトは、カロリーも含めた様々な栄養素を豊富に含んだ食品である

それを届ける大塚製薬は、人々にエネルギー(カロリーという意味でも、もっと精神的な活力という意味でも)を届けたいという思いをこのコピーに込めたのだろう。

からこのキャッチコピー自体文句はない。

しかし、それはこのコピーに限った話だ。

それ以外の文脈で「熱量」を使うと、それはもうカロリーという意味である

みんな、ちゃんと意味を把握せずに使っているんじゃないか?

印象的な「熱量」シーンがある。

きみは三富政行というプロレスラーを知っているか

博報堂社員で、ブログ退職エントリー話題になった人だ。

彼が以前、自分の参加したプロレス興行について、その盛り上がりをもっと広めていきたいという趣旨ツイートをしていた。

その中でも「熱量」という表現が使われていたのだ。

個人的意見になるが、この三富というレスラー勘違いをしている。

熱量意味もそうだが、プロレスラーとしての在り方だ。

アントニオ猪木以降、プロレス界のスターというのはみんな見かけによらずクレバーだと言われている。

プロレスにおいては、アスリート的な能力だけでなく観客を盛り上げる能力必要とされる。

前者は練習あるのみだが、後者はかなり頭を使わないと発揮できない部分だ。

これがプロレスラークレバーと言われる所以である

そしてこの三富だが、彼はプロレスラーがみんなクレバーであるからといって「おれって考えてますよ」アピールだけをする男なのだ

頭で考え、体で発信する、これがプロレスラー仕事である。これらはどちらが欠けてもいけない。

しかし三富は頭で考えたことを、ツイッターなどで発信するだけなのである

彼はパーソナルトレーナーの資格を持っていながら、体はお世辞にもグッドシェイプとはいえない。

単に増量期なのかもしれないが、それは見る者には関係ないのだ。

そして博報堂兼業でやっていたために試合の機会は少なく、名勝負製造からは程遠い選手である

そんな彼が「俺はプロレス界を盛り上げる」などと言っていても説得力がないだろう。

ましてや「熱気」でいいところを「熱量」という誤った言葉表現してしまうという配慮の無さである

意識の高さは結構だが、その発言は勝者が行ってこそ意味のあるものである

するならするで、言葉意味には十分気を付けてほしい。

話を戻そう。

熱量」の意味は「カロリー」など熱エネルギーのことだ。

断じて「熱意」「熱気」「勢い」のような意味ではない。

もちろんおれだって言葉意味時代によって移り変わることは知っている。

他人が何と言おうが、辞書に何と書いてあろうが、言葉意味は使う人のものだ。

他者とのコミュニケーション場合でも、両者が了解しているならばどういう意味で使おうと自由である

それに、拡大解釈すればおれが誤用だと思っている「熱量」もあながち間違ってないように思えてくる。

しかしおれは認めるわけにはいかないのだ。

だって、なんか気持ち悪いじゃん。

熱量」はあくまで熱の量だ。

その場の盛り上がりとか雰囲気のすごみを伝えるなら、熱”気”とか熱”意”とか、客観的に測れないものを使う方がそれらしいじゃないか。

その場の空気を感じている人たちだって、その感動は量より質という類のものであるはずだ。

からみんな、熱量という言葉の使い方には気を付けてくれ。

熱量警察と言いつつ、おれも別に見つけるや否や指摘するような真似はしない。

上に書いた通り、言葉意味自由からだ。

しか自分がどういう意味相手に伝えたいのか、それにはどういう言葉が最適なのかをよく考えてほしい。

それが君たちの周りにいる人たち、支えてくれる人たちに真摯に向き合うということなんじゃないかな。

おれはこれを書き終わったら名もなき熱量警察に戻る。

でも忘れないでくれ、熱量意味は熱エネルギーだということを。

そして、何か感動を覚えたとき、とっさに思い付いた言葉がそれを形容するのにふさわしいかどうか、よく考えてほしい。

これがおれの「熱意」だ。

一生懸命書いたから「熱量」もすごいけどな。

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    なんだよ熱量警察っていうから熱力学屋さんかと思ったら全然違うじゃんかよ。 化学やってるひとが混乱するからやめてくれ

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    カロリーに変な印象を持ちすぎなのではないだろうか ただの熱量の単位だ 熱量は熱運動の運動エネルギーの量です あなたがいうのと同じような文脈で「すごいエネルギー」とか普通...

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