この前友人に尋ねられた言葉に衝撃を受けた。
「付き合いの長さで言えば○○かな」「○○だったらそつなくやってくれそう」「○○はすぐ泣きそうだよね」
私は衝撃を受けながら、「考えたことなかったな」と一言だけ言った。
20歳半ば、四捨五入すれば30になる女にとって結婚の話は避けられない。
誰それが今度結婚するだとか、私はいつ結婚出来るんだろうだとか、いい人いる?気になる人いる?いい人紹介して?云々…。
「今後どう働いていきたい?あなたも数年後には結婚するんだろうから、いずれは産休、育休、そういったことも含めて考えといてね。」
そう言われて他人事のように、(ああ私は数年後に結婚するのか。想像がつかないな)と思った。
結婚さえ想像がつかないのに、産休や育休なんてもってのほかだ。
まだ健在の祖父母の家に行けば、
いつ結婚するの?孫の顔を見るまで死ねないわね。早く安心させてほしいわ。いい人はいる?お付き合いしてる人は?どんな人がタイプなの?
会社だったらセクハラなのにな、と思いながら「ボチボチかな」と祖母の目を見ずに答え、早めに祖父母宅を出た。
・結婚したくない。
・子供が嫌いだ。
私の中にあるこれらの感情は、どうやって処理すればいいのだろうか。
私だって親や祖父母に恩返ししてあげたいし、それが孫の顔を見せるということなら出来る限りがんばりたい。
でも、その恩返しをしたいという気持ちだけで、結婚・妊娠・子育て・その後の人生をがんばれるほど、それらの過程が生ぬるくないこともわかってる。
ここまで言ってなんだが、男が嫌いという訳ではないのだ。
顔が好きで、地方からわざわざ東京や大阪まで追いかけている男性の俳優もいる。
同じ会社の人で、顔が良くてそつがなくて仕事ができる人と話す機会があれば嬉しくってこっそりガッツポーズもする。
友人とホストに遊びに行けば、かっこいい男に出会ってしばらくその人のLINEのアイコンを眺めてしまう日を過ごすこともある。
大勢の飲み会中に、この後二人だけで飲まないかというお誘いだった。仕事も出来て、性格も良い。この人と結婚したら幸せだろうなという人だ。
普通に話すのも楽しい人だったので了承し、2時間半ほど居酒屋で飲んだ。
楽しかった。
少しだけ会話に困ったときもあったけど、向こうが優しい人だったので、気まずくはならなかったと思う。
たぶん彼は、私のことが気になってるんだろうなと察しがついた。
別れ際、家の前まで送ってくれた彼は、私の頭を撫でて「また飲もうな」と笑って言った。
家に帰って部屋で一人になってから、とても悲しくなった。
あんな風に触って欲しくなかった、と感じる自分に自己嫌悪した。
自分に向けられている好意に対して、何の感情も抱くことができない。
誰かの特別になりたくない。
思い返せば、二人きりの飲み会でもたびたび思った。
「この人は他の誰でもない私と二人きりになってるのか、この人の時間を独り占めしてしまっているのか」
そしてその事に「申し訳ないな」と。
私はこのまま人を好きになることが出来ないのかもしれない。
私はそれでいい。
一人で生きていける覚悟も、それなりの自信もある。
でも、そのことで悲しませてしまう人がいるかもしれない、という事実に耐えられる自信は、今のところまったく無い。
そんな風に思ってくれる男性がいるという仮定は思い上がりかもしれない。
けれど、その思い上がりを除いたとしても、一人娘である私を大切に育ててくれた両親や祖父母は確実に悲しませてしまうだろうなと思うと、やりきれない気持ちでいっぱいになる。
周りがどんどん結婚していく。
罪悪感に浸かりながら、そしてその一方で確実に得ている日々の充足感に浸かりながら。
早く私のことを諦めてほしい。
私のことを誰も特別に思わないでほしい。
私に期待しないでほしい。
頼むから、放っておいてほしい。