2022-07-20

教養」とは何か

教養を身に付けられる本を教えて欲しい。

anond:20220720124155


この問いに答えるには先に「『教養』とは何か」ということをクリアにしないといけないと思うが、これを抽象的に論じ始めると喧々諤々の議論となって、増田の「本を教えて」という望みにたどり着かない。

ブクマトラバがもうそんな状態になりつつある)

しかし、日本の「教養人」と言われる人/自称している人たちの中で「教養」の範囲は割と共通していて、だいたい以下のラインナップに自分の専門や好みを付け加えたものになるのではないかと思う。

ほぼ全員が「教養」と認めるであろう分野

(1) キリスト教

 これはもう間違いない。およそ西洋で発展した学問は深掘りすればすぐにキリスト教にぶち当たる。

ただ日本キリスト教について知識を身に付けようとしてもなかなか良い本が無いのが現状。(その辺で売ってる入門書は表面をなぞってるものばっかりなので読んでも誤解して終わりだと思う)

個人的には内村鑑三の一連の著作から入るのが分かりやすくて良いと思うが、古くて読みづらいかも。田川建三から入るのも面白いかもしれないけどどうかなぁ。

なお、「教養人」といえど聖書は誰も通読していないので、上記の本で引用されたところを拾い読みしておけばよい。

(2) マルクス主義

 ひと昔前までマルクス主義はすべての学問を包括する「グランドセオリー」と言われていて、どんな問題でも切れる便利なナイフのように活躍していた。

その残滓が今でもあって、社会科学においては今でも学生が知らず知らずのうちにマル経用語を覚えさせられていたりする。

むかしは手に入りやすくてわかりやす入門書不破哲三のものしかなかったが、数年前のマルクスブームでたくさん良い本が出ており、個人的にはデヴィッド・ハーヴェイ入門書お勧めしたい。(ただ抵抗が無ければ不破哲三著作は今でも分かりやすくてよい)

みんなの憧れ『資本論』も上記入門書の傍らに置いてちびちび読んでみると良い。そこらの難解な哲学書に比べればぜんぜん読める。

だいたいの人が「教養」と認めるであろう分野

(1) 歴史

 マルクスをやればみんな歴史がやりたくなる。マルクス主義史観学校で習った日本史/世界史に当てはめて、その切れ味を試したくなるからだ。

好きな時代や分野をやれば良いと思うが、「教養人」はみんな網野善彦と遅塚忠躬の著作が大好き(偏見)なので、ぺらぺらめくっておくと良いだろう(マルクス主義史観の多少の解毒剤にもなる)。

ウォーラーステインも読みたくなるが、長すぎて誰も通読していないので、川北稔のアンチョコを読んで、読んだふりをしておくと良い。

なお、第二次世界大戦については最近川田稔昭和陸軍全史』という誰でも読めるすばらしい本が出たので、知ったかぶりができなくなった。

(2) 文学

 文学となると何を読むか、ということになるが、サマセット・モーム先生が『世界の十大小説』というすばらしいアンチョコを出しているのでまずはこれを読むと良い。

そこで採り上げられている小説のうち、『カラマーゾフの兄弟』と『戦争と平和』は「読まなければ人ではない」という風潮があるので、せめて読んだふりはできるように。キリスト教知識がここで生きてくる。

日本小説では、夏目漱石についての柄谷行人の論考を読んで、日本近代について一席ぶてるようにしておこう。

それと『失われた時を求めて』はとりあえず買って挫折するのが大事

(3) 哲学

 わが国では哲学について昔からデカンショデカンショ半年暮らす、あとの半年寝て暮らす」という有名な言葉があり、デカルトカントショーペンハウアーが昔の「教養人」の必須科目となっていたらしい。

ただショーペンハウアーがここに入っているのは少し不思議で、今ならニーチェが入るのではないかと思う。

どうせ正確な理解なんて無理なのだから適当アンチョコを読んで知ったかぶりができるようにしておくと良い。

なお、なんか知らんが日本人はヘーゲルが大好き(な割に誰も理解していない)なので、一応挨拶だけしておこう。

教養」として挙げる人が一定数いる分野

(1) 法律学

 「教養」として名前が挙がることが多い一方で、まともに条文を運用できる人がほとんどいない分野。

上述してきた分野と違って、本を読むだけではだめで、指導教官のもとで実際の事例にぶち当たってトレーニングを積まなければならないので難しいのだろう。

下手に基本書を読んでも本職に知ったかぶりをすぐ見抜かれるので、時折ネットで話題になる法律問題について法曹解説を読んで都度勉強すると良いだろう。

(2) 中国思想インド思想(仏教含む)

 ここまで挙げた学問はいずれも西洋で発展したものなので、「日本にはなんもねぇのか」という気分になってくる。

こうした「教養人」が抱えるコンプレックスについて内田樹が『日本辺境論』という本で書いているので、ちょろっと見ておくと良いだろう(Amazonで1円で売っている)。

ここらで本居宣長とか丸山真男とかを読み出す人も多いのだが、どうせ不毛作業になるので、視野を広げて中国思想インド思想辺りに目を向けるのが良い。

個人的には森三樹三郎の著作が分かりやすくて良い。

(3) 自然科学

 「教養人」というのは大概文系であり、自然科学についてはからっきしな奴が多い。

自然科学話題になると、トーマスクーン科学革命構造』をそれらしく引用して逃げ切りを図る人が多いのだが、本職に馬鹿を見抜かれるので素直に勉強しましょう。

ヨビノリをはじめとした学習コンテンツYouTubeに転がっているので、せめて高校数学物理ぐらいはやっておかないといけない。

人によっては「教養」として挙げる分野

(1) 詩

 上述してきたような分野をやっていると、唐突に詩が登場したりして困惑する場面が多々出てくる。

論理的(笑)な「教養人」の中にはこれを不得手として敬遠する人が多いのだが、どこかで対決しなければならない。

幸いなことに最近詩人渡邊十絲子という人が『今を生きるための現代詩』という詩についての分かりやすい概論を出したので、一読した上で適当な詩のアンソロジーでも買ってくれ。

(2) 映画

 なんか知らんが「教養人」は映画好きな人が多いので、ある程度は観ておかないといけない。

イギリスエンパイアという雑誌が「史上最高の映画500本」という特集をやっているので、上から適当に観ておけば良い。


 とりあえずこの辺を押さえておけば周囲からは「教養がある」という認定を受けるのではないかと思う。

ただ教養があったとしても「教養人」からマウントを取られる可能性が低くなるだけであり、「他人との会話が盛り上が」るなんてことはまず無いから気を付けて呉れ給へ。

記事への反応 -
  • 教養がなさすぎて他人との会話が盛り上がらないから教養をつけたい。 「この世界が消えたあとの科学文明の作り方」は読んだ。

    • ■教養を身に付けられる本を教えて欲しい。 anond:20220720124155 この問いに答えるには先に「『教養』とは何か」ということをクリアにしないといけないと思うが、これを抽象的に論じ...

      • マルクス主義が教養?またまた御冗談を

      • ただ教養があったとしても「教養人」からマウントを取られる可能性が低くなるだけであり、「他人との会話が盛り上が」るなんてことはまず無い 大人になってから多少の教養を身に...

      • ○喧々轟々(けんけんごうごう) ○侃々諤々(かんかんがくがく) ×喧々諤々 https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/148.html この増田に教養がない

        • 誤字の指摘は学がなくてもできる上に大衆からの受けもいいからな。 そりゃ国会で漢字ドリル大会も開かれるってもんだ

    • 古本屋で100円になってる岩波文庫片っ端から読め

    • 小学生向けのことわざ辞典 わざわざお金を出さずとも http://kotowaza-allguide.com/a/index.html これを五十音順に順番に読んでいくとコスパがいい 話してることをことわざで言い換えると何故か...

    • 増田の中でもかなりの上位に属する教養あふれる俺でも他人との会話盛り上がらないから大丈夫だよ

    • ホリエモンチャンネルおすすめ

    • そんなので勉強するくらいなら近所の美味しいラーメン屋探したほうがマシ

    • ブリタニカ

    • 教養ってほどの内容じゃないが、夏だから文庫100冊から興味を持てそうな本(新潮文庫が良いだろう)。または歴史の本をお勧めする。

    • 教養溢れてるはずの作家などのツイッター見てみろよ 教養を身につけられる本なぞ存在しないことがわかる

    • 一日1ページ読むだけで身につく○○の教養みたいな本が売ってるけど、身につくかどうかは置いといて広く浅くいろんなことが書いてあって暇潰しに読むのに良いかも 大学四年間で学ぶ...

    • 現代用語の基礎知識買って気になった項目を深掘りしてく

    • 本でないけど、ウィキペディアはいいぞ まず興味のあるジャンルから読み始めて、知らない概念が出てきたらそこを掘り下げていくループを続けてると、自分が何に詳しくないかとかが...

    • その本が好きなら、講談社ブルーバックスを読んでおけ。

    • たしか増田が書籍化してただろ

    • 教養身に着けようとおもって教養の本よんでも長続きしないぞ。   おとなしくエンタメ小説を読んでおけ、ただし量を読め。   ガンダムのアニメを見たら、ちゃんと富野著の小説版の...

    • NHK教育の100分で名著シリーズとかは?

      • あれはマジでおすすめ。わかりやすいし。 テキストはKindleで手に入るし過去の放送は NHK on demand で見れる。

    • 野矢茂樹 論理トレーニング 伊勢田哲治 哲学思考トレーニング ハンス・ロスリング FACTFULNESS(ファクトフルネス)

    • 教養ってのはインプットとアウトプットの積み重ねなんだから 特定の本に書いてあることのつまみ食いで何とかしようとするなよ。

      • 確かに、自然に手が伸びなかったものを無理に学んでも話おもんないままな気がする なんなら無知なまま「教養なくてサーセンwそれってどういう話なんですか?教えて下さい~」って笑...

      • 特定の本に書いてあることのつまみ食いで何とかしようとするなよ。 アウトプットしないとも言ってないし、これから積み重ねないとも言ってない。 文章読解力という教養なしで何か...

    • 高校の教科書

    • 教養が必要な会話が繰り広げられる環境に居る増田が羨ましい ひとくちに教養と言っても多岐にわたるわけで 公務員試験対策じゃないんだから、広く浅くじゃ意味がない気がする(そ...

    • 教養は考える力とセットや。ワイはカントやラカン、韓非子から老子(和訳でいいから原典がいいぞ)、ファインマン(自伝も物理学も)やハイゼンベルグからラノベまで数万冊以上読...

      • ラノベ抜いたら何冊なのか気になったやで

        • それでも万は超えてるぞw

          • ラノベ以外で1万冊以上はすごいけどラノベだけで1万超えてるのはもっとすごいやで ラノベ天狗の生き残りか

            • いやラノベで万はないわ。今見たらKindleに4千冊あるから上限その程度やとおもう。(kindleで買うのはラノベだけ)てかせっかくいい話してるのにラノベ以外の内容にも反応してくれた

    • はい。 https://anond.hatelabo.jp/20091217012352

    • まあ1冊で済まないから教養なんだが

    • なんか一冊だったら『人間 この信じやすきもの』をおススメするよ 人間がなぜ間違った考えを信じてしまうのかを解説する本だよ 何でこれをおススメするかと言うと単純に読み物とし...

    • 自分が好きなものの元ネタを探していくといいよ 辿っていった先で他の人が好きなものの元ネタと共通するものがあればそれが教養ってことになるから

    • ライオン・キングの元ネタなんだぞ!!日本のアニメ漫画は世界一なんだぞ!!と威張るんじゃなくて ジャングル大帝の全集版・漫画少年版・光文社版や歴代アニメシリーズのアプロー...

      • 広い範囲を押さえられないから、「この分野語らせたら誰にも負けない」ってとこを目指そうとするのは教養がたりないからやで。

        • 物事を判断評価するためのフレームワークが身についている、というのが教養ある人の有りようだとは思う 「日本のアニメ漫画」を例に言うなら、「ジャングル大帝の全集版・漫画少年...

    • 話を合わせたいターゲット層がどのレベルなのかにもよると思うが、この時代のベストセラーよりある種のパラダイムシフトを引き起こしたような古典的名著とか科学史にフォーカス当...

    • 高校の教科書を理解しとけばかなりの教養持ちだと思うぞ

    • とりあえず ・砂糖の世界史(川北稔) ・生命、進化、エネルギー(ニック・レーン) ・三体シリーズ(劉慈欣)

    • 「興味あるのですが不勉強で全然知りません。教えてください」が最強の盛り上がり術だと思うのだが

      • 「興味あるのですが不勉強で全然知りません。教えてください」が最強の盛り上がり術だと思うのだが 実際は全く興味ないのに盛り上げのためだけにこれ言ってくる奴が結構いてめち...

        • 何の興味も持たれない人間からすると羨ましいわ 交換してあげたい

    • △△△<教えてあげないよ!ジャン♪

    • 盛り上がりに教養なんて要らないよ エロ以外の楽しみをみつけて自分なりにほりさげればいいだけ 仲間内の通話で一人だけめちゃ盛り上がる人がいるけどその人は失敗談とか感情こめて...

    • 現代思想入門とかの哲学系だけど、盛り上がらないのでダメ。流行りでも見とけ。

    • 孝養や無くてマイルドヤンキー的な身の丈世間の情報やろな。

    • あえての『人間革命』『新・人間革命』

    • 広辞苑

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