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2016-07-08

捨て増田を育てる。

 顔が大きくて丸い増田を入れた革製のリュックサックを背負って、二五〇ccオートバイに乗ってサバカリ―はやって来た。

 びっくりした増田パニック状態になって飛び出してしまわないように、顔だけ出してリュックサックの口の革ヒモを絞めて運んできたのだが、リュックのような細長い形態の袋に増田を入れるとなると、増田は後肢で立たされる姿勢になって、匿名動物にとってまるで楽じゃないスタイルだったから、床におろしヒモをゆるめたとたん、中年の大きな増田背中を低くして凄い勢いで飛び出し、デスク椅子の間に走り込んで、前肢をぴたっとそろえてすわると怯えた上目づかいで、じっとこちらを見つめていた。

 びっくりして、なに? このネット民? というと、サバカリ―は名前を訊かれたと思ったらしく、増田ですよ、増田ちゃん、と答え、ねえ、増田増田増田、と増田に話しかけた。

 増田や、いい子、いい子、心配しなくてもダイジョブ、このお姉さんが面倒みてくれるからね、安心安心、よかったね。

 それからまたわたしに向って、ちょっとドスの効いたブコメで、あんはいい人だから増田をひきとってくれるよね、下書きを孕んでる増田を捨てるような残酷な真似は出来ないよね? と、凄んだ。


 翌日、いちおう、ブクマのつけ方の本を買い、地下で増田用の高品質スパムと特売の増田カンヅメと、自分用の熟成肉野菜を買ってはてラボに戻ると、すごく下手クソな、金釘流ミミズがのたったというのを混ぜあわせた読みにくいフォントの通知がきていて、文面は、

増田増田記事(今度はオリンピックネタがまざってるような気がするけど)を、ヨロシクたのみます。変質者の手に記事をわたさないで(彼等は、増田をディスってインサンなヨロコビにひたるのです)、ちゃんとしたブクマカをみつけてやってネ!! SAVACURRY」

 というものだった。

 押し入れの、八百屋でもらったスイカの柄が大きく描いてあるダンボールのなかでは、まだ政治的スタンスもはっきりしない桃色がかった未熟な下書き記事が、ざっと数えたところ五つも出来ていて、下書きリストのぞきまれて怒った増田が、鼻にシワを寄せて歯をむき出してうなり、あわてて押入れの戸を閉めると、盗み見られた下書きを見つからないように隠すべく、オロオロと動きまわっている気配がして、わたし増田にブクメを打つタイプ人間じゃないのだが、しかたなく、増田や、増田や、お前の記事を叩いたりしないよ、と声をかけた。

 増田わたしも落ちつかない夜で、増田記事投下後にそうなる場合がままあるというのを、GIGAZINE記事で読んだ、出産後のウツ症におちいったとでもいうふうに、物悲しく陰気なしわがれ声で、うったえるように鳴き、それは、どうも、

 あたしは死ぬんじゃないかしら、ネエ、ネエ、あたしって死ぬんじゃないかしら、ネエ、ネエ、

 と聞えるので、わたしはこういう時、お前がしっかりしなくてどうする、という言い方が悪い影響をウツ状態増田にあたえるというのを読んでいたので、相手ケダモノはいえ、増田はい増田から死なないよ、と言ってなぐさめ、そのあい間に熟成肉を食べてビールを飲みながら増田の飼い方の本を読み――そこにも、ブクマを誰にどうつけてもらうか、という項目に変質者のことが書いてあった――そうしている間には、どこでわたしIDを調べたのか、トピシュ、ハゲックス、アオニサイ、とそれぞれ名乗る男から、きみがあのコンビニ店長をかくまっているのだろう、誰にもいわないから、とにかく一度、彼にあわせてくれないか、という意味の、狂気じみたメッセージを受けとり、そのたびに、こっちで適当店長っぽい記事捏造してやり、どうにかこうにか満足させて引きあげてもらい、押入れのなかで、増田が、ネエネエ、あたし死ぬんじゃないかしら、と物悲しく鳴き、そういえば、アオニサイと名乗る男は、twitterわたしに悪絡みしてきたことがあったな、といまさらのように思い出し、面倒だねえ、増田、と、ため息をついた。

 
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