2024-09-18

M理論とIIA型超弦理論双対性

以下は、M理論超弦理論幾何学抽象化した数学的枠組みでのモデル化について述べる。

∞-圏論と高次ホモトピー理論

まず、物理対象である弦や膜を高次の抽象構造としてモデル化するために、∞-圏論を用いる。ここでは、物理プロセスを高次の射や2-射などで表現する。

∞-圏 𝒞 は、以下を持つ:

  • 対象Ob(𝒞)
  • 1-射(またはモルフィズム):対象間の射 f: A → B
  • 2-射:1-射間の射 α: f ⇒ g
  • n-射:高次の射 β: α ⇒ γ など

これらの射は、合成や恒等射、そして高次の相互作用を満たす。

デリーブド代数幾何学と高次スタック

次に、デリーブド代数幾何学を用いて、空間場の理論モデル化する。ここでは、デリーブドスタック使用する。

デリーブドスタック 𝒳 は、デリーブド環付き空間の圏 𝐝𝐀𝐟𝐟 上の関手として定義される:

𝒳 : 𝐝𝐀𝐟𝐟ᵒᵖ → 𝐒

ここで、𝐒 は∞-グルーポイドの∞-圏(例えば、単体集合のホモトピー圏)である

物理的なフィールドパーティクルのモジュライ空間は、これらのデリーブドスタックとして表現され、コホモロジーデリーブドファンクターを通じてその特性を捉える。

非可換幾何学とスペクトラルトリプル

非可換幾何学では、空間を非可換代数 𝒜 としてモデル化する。ここで、スペクトラルトリプル (𝒜, ℋ, D) は以下から構成される:

作用素 D のスペクトルは、物理的なエネルギーレベルや粒子状態対応する。幾何学的な距離や曲率は、𝒜 と D を用いて以下のように定義される:

高次トポス

∞-トポス論は、∞-圏論ホモトピー論を統合する枠組みである。∞-トポス ℰ では、物理的な対象フィールドは内部のオブジェクトとして扱われる。

フィールド φ のグローバルセクション(物理的な状態空間)は、次のように表される:

Γ(φ) = Homℰ(1, φ)

ここで、1 は終対象である物理的な相互作用は、これらのオブジェクト間の射としてモデル化される。

L∞-代数と高次ゲージ理論

ゲージ対称性やその高次構造表現するために、L∞-代数を用いる。L∞-代数 (L, {lₖ}) は次元付きベクトル空間 L = ⊕ₙ Lₙ と多重線形写像の族 lₖ からなる:

lₖ : L⊗ᵏ → L, deg(lₖ) = 2 - k

これらは以下の高次ヤコ恒等式を満たす:

∑ᵢ₊ⱼ₌ₙ₊₁ ∑ₛᵢgₘₐ∈Sh(i,n-i) (-1)ᵉ⁽ˢⁱᵍᵐᵃ⁾ lⱼ ( lᵢ(xₛᵢgₘₐ₍₁₎, …, xₛᵢgₘₐ₍ᵢ₎), xₛᵢgₘₐ₍ᵢ₊₁₎, …, xₛᵢgₘₐ₍ₙ₎) = 0

ここで、Sh(i,n-i) は (i, n - i)-シャッフル、ε(sigma) は符号関数である

これにより、高次のゲージ対称性や非可換性を持つ物理理論モデル化できる。

安定ホモトピー理論スペクトラム

安定ホモトピー理論では、スペクトラム基本的対象として扱う。スペクトラム E は、位相空間やスペースの系列 {Eₙ} と構造写像 Σ Eₙ → Eₙ₊₁ からなる。

スペクトラムホモトピー群は以下で定義される:

πₙˢ = colimₖ→∞ πₙ₊ₖ(Sᵏ)

ここで、Sᵏ は k-次元球面である。これらの群は、物理理論における安定な位相特性を捉える。

ホモロジカル場の理論

物理的な相関関数は、コホモロジー類を用いて以下のように表現される:

⟨𝒪₁ … 𝒪ₙ⟩ = ∫ₘ ω𝒪₁ ∧ … ∧ ω𝒪ₙ

ここで、ℳ はモジュライ空間、ω𝒪ᵢ は観測量 𝒪ᵢ に対応する微分形式またはコホモロジーである

M理論における定理の導出

先に述べた抽象数学的枠組みを用いて、M理論重要定理であるM理論とIIA型超弦理論双対性を導出する。この双対性は、M理論11次元での理論であり、円 S¹ に沿ってコンパクト化するとIIA型超弦理論等価になることを示している。

1. デリーブド代数幾何学によるコンパクト化の記述

空間の設定:

コホモロジー計算

Künnethの定理を用いて、コホモロジー計算する。

H•(ℳ₁₁, ℤ) ≅ H•(ℳ₁₀, ℤ) ⊗ H•(S¹, ℤ)

これにより、11次元コホモロジー10次元コホモロジーと円のコホモロジーテンソル積として表される。

2. C-場の量子化条件とM理論の場の構造

C-場の量子化条件:

M理論の3形式ゲージ場 C の場の強度 G = dC は、整数係数のコホモロジー類に属する。

[G] ∈ H⁴(ℳ₁₁, ℤ)

デリーブドスタック上のフィールド

デリーブド代数幾何学では、フィールド C はデリーブドスタック上のコホモロジー類として扱われる。

3. 非可換幾何学によるコンパクト化の非可換性の考慮

非可換トーラスの導入:

円 S¹ のコンパクト化を非可換トーラス 𝕋θ としてモデル化する。非可換トーラス上の座標 U, V は以下の交換関係を満たす。

UV = e²ᵖⁱθ VU

ここで、θ は非可換性を表す実数パラメータである

非可換K-理論適用

非可換トーラス上のK-理論群 K•(𝕋θ) は、Dブレーンのチャージを分類する。

4. K-理論によるブレーンのチャージの分類

M理論のブレーンのチャージ

  • M2ブレーン:K⁰(ℳ₁₁)
  • M5ブレーン:K¹(ℳ₁₁)

IIA型超弦理論のDブレーンのチャージ

  • D0ブレーンからD8ブレーン:K-理論群 K•(ℳ₁₀) で分類

チャージ対応関係

コンパクト化により、以下の対応が成立する。

K•(ℳ₁₁) ≅ K•(ℳ₁₀)

5. 安定ホモトピー理論によるスペクトラム同値

スペクトラム定義

スペクトラム同値性:

安定ホモトピー理論において、以下の同値性が成立する。

𝕊ₘ ≃ Σ𝕊ᵢᵢₐ

ここで、Σ はスペクトラムの懸垂(suspension)函手である

6. 定理の導出と結論

以上の議論から、以下の重要定理が導かれる。

定理M理論とIIA型超弦理論双対性

デリーブド代数幾何学、非可換幾何学、および安定ホモトピー理論の枠組みを用いると、11次元M理論を円 S¹ 上でコンパクト化した極限は、IIA型超弦理論数学的に等価である

7. 証明の要点

(a) コホモロジー対応

(b) 非可換性の考慮

(c) スペクトラム同値

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