ブルーピリオドという漫画がある。連載当初から芸大受験漫画というので少し話題になり、じわじわと人気が高まり、今では企業CMに起用されたり、アニメも放送中だ。
間違いなくめちゃくちゃ面白い漫画だ。連載当初から追っていたが、これは絶対売れると確信していたし今現在実際にめちゃくちゃ売れている。Twitterのトレンドに上がったり、本屋では大体平積みでコーナーが作られていたりするレベルだ。
今でも、絶対に面白いとは思ってはいる。だが読めなくなってしまった。自分の心の安寧を守るためにだ。
ブルーピリオドが読めない奴ら、というのは、藝大に落ちた奴らのことだ。
いや、別に落ちてなくても読めないやつは沢山いると思う。受かったやつでも読めないやつは読めないんじゃないかと思う。藝大に憧れたことが一回でもあれば、この呪いが生まれる可能性は十分にある。
藝大という場所が本当に選ばれた少数の人間しか入れない場所で、それに入れなかったという事実は、自分が特別な才能を持たないことを証明するように感じさせる。
別に藝大行ったら成功するわけでもないし、藝大出てなくてもすごい作家になるやつはなるのだが、そうやって割りきれない謎の魔力が藝大からは働いているのだ。
とにかく藝大コンプというものは根深く、人によって程度に差はあれど、藝大に落ちてきた無数の人々の誰もが抱えているものだと思う。
自分なんか藝大を受けたのは一回きりだし、浪人もせず他の大学に行ったレベルなので、何浪もして藝大を目指していた人と比べたら全然軽いものだろう。それでも、本屋でブルーピリオドが平積みされているのが目に入ると気持ちがざらつき、ブルーピリオドの新刊が出れば、謎の意地で買うものの本棚に速攻入れてページを開かない。まわりのガチで藝大を目指していた人なんかは、ブルーピリオドの話題が出た時点でなんとも歯切れが悪いし顔が曇る。東京まわりの予備校に通っていて、アニメ化か何かのタイミングで、東京で街にブルーピリオドの広告が大きく出されていた時はしんどかったと話していた気がする。
どうしてそんなことになるのかといえば、ブルーピリオドがいい漫画であるということに尽きる。読む人の感情に深く突き刺さり揺さぶるほどの漫画なのである。刺さりすぎるし、コンプレックスを刺激されすぎる。
その上、藝大を志す奴らなんて大体漏れなく感受性が強すぎて情緒がおかしい奴らばかりなので、そんな漫画をぶつけられたら間違いなく瀕死だ。
そして藝大コンプがつらいのだ。八虎が現役合格して藝大ライフを送っている様子を、なかなか直視することが出来ない。さらには作者の山口つばささんが現役で藝大に入っているということまでコンプレックスを刺激される。藝大に現役で入るやつはこんな作品を描けるし世間の人気もあってここまで成功するんだ……みたいな嫌な方向のコンプレックスが発動することさえある。
最後になるが、この文章は全くブルーピリオドを批判するみたいな意図はなく、ブルーピリオドは間違いなく面白いすごい漫画だということを言っておきたい。ブルーピリオドは、情緒がグチャグチャになるほどの人の心を揺さぶる漫画なのだ。藝大に何の遺恨もない人なら絶対に面白く読めるとお勧めしたい。
自分はたしか、八虎が藝大入って最初の講評でボロボロになった辺までは読んだが、それ以降がまだ読めていない。もっと歳を重ねて、成功者になれた時か、もしくは藝大への折り合いをちゃんとつけられた時、改めて読もうと思う。
作者も藝大なんかぁ やとらの話はフィクションでしょとなっても、現役合格の体験談が少なからず入ってて、本人の成功作品として読んじゃうと辛いかもね
俺は藝大を志したことはない(従姉妹に藝大を勧めて一発で受かったようで好意的)が ブルーピリオドは展開がワンパターンなのとあんなヤンキーみたいな優等生が美術部入って藝大志...