きょう未明メロスはアマゾンをポチり、野を超え山超え、クロネコヤマトが家にやってきた。
恋人もない。
十二人の妹が突然出来て欲しい。
この妹は、村の或る律儀な中の人が色々あってYoutuberとしてデビューした。
この話は横に逸れるので本題に戻る。
メロスは、オタクゆえ、パソコンのパーツやらエッチなゲームやらを買いに、アマゾンでポチポチしてきた。
送られてきた商品を見るうちに、その様子を怪しく思った。
もっさりしている。
もう既にポチったときのテンションも落ちて、やや後ろ暗いのは当たり前だが、けれどもなんだか、気のせいばかりでなく、箱全体が、やけに見すぼらしい。
端にあったセロハンをつかまえて、ひとまずあけるのか、開封前に写真でも取るか、逡巡した。
セロハンは、既に半分剥がれていた。
しばらく悩んだ末に開封動画を取り、こんどはそっと、セロハンを全て剥がした。
中に誰もいませんよだった。
「なぜ送るのだ」
「重さを測ってチェックしている、というのですが、誰もそんな、重さをちゃんと測っておりませぬ」
「たくさんの人が被害にあっているのか」
「はい、はじめに詐欺師が注文し、それから、中身を抜き取って、それから、重しを入れ、それから、返品し、それから、重さチェック、それから、普通の客に送付されます」
「いえいえ、ガバガバではございませぬ。客を、信じさせる気がない、というのです。このごろは、社員の尿意も、お疑いになり、おむつを履いて働いているものに、大学の授業料を負担すると申しております。ご命令を拒めば会議にかけられ、リストラされます」
聞いて、メロスは激怒した。「呆れたサイトだ。使ってはおれぬ」
メロスは単純な男であった。買い物を、カゴに入れたままでのそのそカスタマーサポートに電話した。たちまち彼は、SWATの警吏に捕縛された。調べられて、メロスの動画からは住所が出てきたので、炎上が大きくなってしまった。メロスは、アマゾンに電話を続けた。
「この空き箱で金を請求つもりであったか。言え!」暴君ディオメロスは静かに、けれども威厳を持って問い詰めた。カスタマーサポートは単調で、背中の銃は、氷で編まれたように冷たかった。
「ネットを暴君の手から救うのだ」とメロスはカスタマーサポートに叫んだ。
「おまえがか?」SWATは憫笑した。「仕方なのないやつだ。俺には、お前の考えが分からん」
メロスは死んだ。