人気が出る漫画には必ず理由があると思っているので、『怪獣8号』という作品が売れること自体が意味不明と言っているわけじゃない。
実際、この漫画に関する評価の理由として、推測できるところもいくつかある。ただ、はてなブックマークでも特に人気っぽいのが「?」という感じだ。はてブの層とは作品の趣味が近いと勝手に思っていた(世間一般として高評価であるのが、はてブの一定層にも普通に響いている、という可能性もあるが、個人的な印象では、はてなブックマークでとりわけ高く評価されているように見える)。
悪口ばっかり書くことになって申し訳ないが、別に俺個人の主観なので勢いで言ってしまうと、俺はまず、自分に与えられた力に対する主人公の姿勢が気に入らねえな、と思った(ただ、第1話と最近の話を読んだだけなので、その間で描かれたメッセージや機微をごっそり取りこぼしているのかもしれない。その点で、この文章はそもそも、批評としてのテイをなさない)。
何かのきっかけで、世間的に忌避されている強大な力を手に入れる主人公、というテーマは色んな作品で描かれていて(『デビルマン』『進撃の巨人』『東京喰種』)、俺は、こうした作品は、これまで自分が属してきた価値観の相対化、もしくは破壊へと、展開していかざるを得ないと思っている。
別に、必ずそうする決まりがあるわけないのだが、巨大な力が、しかも敵側からもたらされるという体験の前に、個人の人格や理念がそれまでのかたちを保っていられるわけがないと思っているので、どんな作品も必然的に既存の善し悪しの崩壊ありき、これを通過せざるを得ず、そこから何を描くが各々の見せ所だと考えている。
『怪獣8号』における力は、どうも、単にニュートラルに強大な決定力という感じで、怪獣を処理する側が怪獣になってしまったというジレンマも当然ゼロではないんだろうけど、どうもそんなに要点が置かれて描かれていないように見える。俺はそういう話だったら興味ないのだが、はてブでは人気っぽいので、くどいがちょっと驚いている。
少年漫画としては珍しいな、と思ったけど、「少年」漫画といいつつ読者層はなんだか高齢化しているっぽいので(鬼滅でいくらか下がったんでしょうか)、その辺も時勢的にあざといというか、「おっさんが活躍してる話だったらそんな餌に食いつかないで青年誌読むぜ」と誰にも得のない反発を覚えてしまい、はてなブックマークのみんなもそうだろ? と思って後ろを振り向いたら誰もいないという、なんだよ、みんな普通にああいうの好きなのかよ、という。まあこれは俺の独り相撲でしかないんだけども。
作品で何を描こうが自由だし、売れそうな要素やメッセージを盛り込んで話を作るなんてのは当然のことだ。繰り返しになるが、人気が出る漫画には必ず理由があると思っていて、俺の推測が当たっているにせよ外れているにせよ(全話読んでもいないけれども)、売れる作品はちゃんと読者の何かしらの需要を打ち抜いたのだから、何の問題もない。
ただ単純に、はてブには俺と同じへそ曲がりが多いと思っていたから、「与えられた力のせいで人生が決定的に狂うわけでもなく何となくどうにかなっていて、俺らおっさんむけに狙い澄まされたみたいな内容を荒川弘の絵で描かれておもしれえか?」と思って無視していたらけっこうみんな読んでいるので、なんとなく居心地が悪い。
何が言いたいかというと、「お前は大きな思い違いをしているし、そもそも全話読んでいないのでは話にならないから、今から買って読め」というならそう言ってほしい。面白い漫画が好きなので、食わず嫌いで(ひと口はかじったけど)損しているなら、いまからちゃんと読もうと思う。
自分も怪獣8号好きじゃないけど(ちんたらしてるし顔漫画気味でつまらん)まずジャンプとジャンプ+は違う媒体だし、ジャンプ+が少年にだけ向けられたものなんてナイーブな考えは...
直近の展開ではわりと力に振り回されてるし、 おっさん主人公は別におっさん読者のものじゃない。 それはそれとして、怪獣8号は尖ったところのないウェルメイドな作品だと思うし、 ...