2020-06-29

31銀の何がすごいのか頑張って説明してみる話

藤井聡太先生活躍がまたニュースになって、将棋を指さない人にも知れ渡ったものの「何がすごいのかよくわからない」という人が沢山いるので「ソフトが6億手読んで最善と判断した31銀打」の何がすごいのか、将棋を知らない人にも簡潔に伝えられる文章が書けるか、勉強も兼ねて書いてみるよ。

(全体的な棋譜や話はニュースを参考にしてね)

将棋基本的に攻めるゲーム

将棋ルールを詳しく知らない人でも「相手の王を取ったら勝ち」くらいのルールは知っていると思う。

まり、他の多くのゲームと同様に、守り続けている限りは負けないかもしれないけど、基本的には勝てない。

攻める時は、大抵の場合、王以外の駒を失いながら攻めることになるし、失った駒は持ち駒として相手の戦力になってしまうので、攻めを耐え続けて、やがて攻めを切らすことでカウンターで勝つ方法もあるけど(プロ場合は大体攻めが切れたところで攻めてた側が負けを認める=投了する)、これは非常に難しい。

将棋イニシアチブを取るゲーム

将棋は必ず一手ずつ交互に指す。

盤上の駒を動かすのも一手だし、持ち駒を打つのも一手なので、理想は、その時点で一番良い手(最善手)を指すことだし、最善手を指し続けた人が勝つ。

まり、攻めを仕掛ける側は仕掛けるための好きな手を指していることになるけど、仕掛けられた側はその仕掛けができるだけ上手くいかないように限定された中から手を選ばないといけない(無視して攻める方法もあるけど)。

仕掛けが上手くいっている限り、攻守交代がない野球みたいなもので、どんなに失点を防いでも、守っている側は得点を得るチャンスすら回ってこない。

自分も下手の横好きなタイプなので偉そうなことは全く言えないけど、将棋は「相手に好きな手を指させないようにするゲームであるとも言えると思う。

持ち駒は好きなところに打てる

将棋チェス以上に複雑なゲームである理由の大半が「持ち駒」のシステム。取った相手の駒を自分の駒として手持ちにしてどこでも好きなところに打つことができる。

前項の「将棋は攻めるゲーム」「将棋イニシアチブを取るゲーム」を踏まえると、持ち駒は、自分の王を守るために使うよりも、相手の王を取る(攻める)ために使ったほうがいい。

勿論、対局終盤、放置したら自分の王が取られる場面では仕方ないけど「放置したら王が取られる場面」というのは、つまり「まだ負けてはいないけど敗勢」ということ。本来なら攻めに使いたい持ち駒すら失ってしまうので、できることならやりたくないし、そもそもこの状況になる前に手を打たないといけない。

持ち駒を使わずに盤上の駒で守りを作れるなら、できるならそうしたい。

ましてや、例の場面はまだ見た目的には中盤、中盤時点で相手イニシアチブを渡すと、そのまま敗勢の終盤に突入しかねないので、できることなら避けたい。

将棋は読みとセンス判断力のゲーム

31銀の場面では「盤上の駒で守る方法」「持ち駒を使って守る方法」「相手の攻めを無視して自分の攻めを続行する方法」という選択肢があった。

まとめると3択ではあるけど、実際はその場面だけでも複数選択肢があって、さらに、できるだけ多くのパターンでその先を読んだうえで最善手を見つけないといけない(これが全部読もうとすると「6億手」以上)。

藤井聡太先生もさすがに23分で6億手全てを読んだわけではないと思うけど、勝負勘みたいなもので、31銀を検索する優先順位が高く、また、それを最善手と判断できる常人離れした読みがあったことは間違いない。

将棋相手の読みを外すゲーム

対人戦の場合は、持ち時間があるので、相手の読みを外して、時間を使わせたり、動揺させたりする手も重要になってくる。

31銀の手を相手渡辺明先生は読んでいなかったらしく、その話を自身ブログで振り返っている。

「中盤で、攻めに使いたい持ち駒を自分の王の守りに使う(使わされる)手は、できることならやりたくないはず」

という思い込みは、将棋をそれなりに指せる人なら勿論あるけど、プロでもある。

なぜかというと、持ち時間があるので、全ての手を時間内で読むことは難しく、また、前述のとおり、それぞれの脳内で読む優先順位があるから

31銀を読んでいたプロもいたので、一概に優先順位が低いわけではない手のようだけど、セオリーとしてはやっぱり優先順位は低い手ではあると思う。

まとめ

大体書けたかなと思うけど、改めてまとめると

「持ち駒は攻めに使うのが理想で、守りに使わされるのは、既に状況がよくないのは勿論、攻めるチャンスすら失う可能性が高い」

将棋基本的に攻めるゲームイニシアチブを取るゲームなので、終盤以外であれば、守るための読みよりも攻めるための読みのほうが普通優先順位が高い」

31銀は一見すると守るための手にしか見えず、中盤の段階で最善手と判断して指すには23分は短すぎる」

という感じ。

もっと上手く説明できる人もいるかもしれないけど、こんな感じかな。

  • 思いつかない手ではないけど大半のプロはささっと読んで「これはないな」って捨てる手だよね ただ最近はそういったプロがひと目無いと判断した手でも将棋ソフトが更に読み進めると...

    • やねうらお氏が言っとったけど、むしろちょっと前の将棋ソフトのほうが今回の簡単に見つけられるらしい。 枝刈りが進歩しすぎて将棋ソフトも「これはないな」って早々に捨てちゃっ...

  • 昼間に書いて、夜に見てみたらはてブで少し盛り上がってくれたので少しだけコメントを返すよ! 将棋はどういうもんなのかだけで、31銀がどうすごくてどんな感じで効いたのかみたい...

  • 「中盤の段階で最善手と判断して指すには23分は短すぎる」 これがすべてで、他の話(でルール説明以外の部分)は将棋知らない人向けだとしてもあんまりしっくりこないかな。 書かれ...

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