2020-03-05

クソガキ追悼記

中学生の頃の僕は、雪が降ったんだから、何かするのは当たり前だと思っていた。それは僕の中の常識で、誰かの背中を見て学んだ訳でも、道徳時間に教えてもらったわけでもなく、産まれた時から既に僕の脳内インプットされていたんだと思う。絵に描いたようなクソガキで、とにかく楽しい事がしたかった。当時の僕は、楽しい事と面白い事はイコールで繋がると信じていた。クリスマスの夜に、ちょうど雪が降ったので、当時仲の良かった同級生三人組とLINEをして、夜中の11時ぐらいに駅前ロータリーに待ち合わせた。僕は、家の中にある服の中で、一番あったかそうなものを選んだ。防寒対策はばっちりだったが、友達の一人は、真冬にも関わらず、パーカー一枚を羽織ってきた。僕は何も言わなかった。何故なら、彼は、全くそれを不思議に思っていなかったから。ボケてないのに、ツッコむという野暮な事はしたくなかった。僕達は、中学生の頭で思いつく限りの事をした。雪合戦もした。下半身けが異様にデカ雪だるまも作った。無人道路の上を、ソリに乗って滑った。当時「メリークリスマス」の「メリー」の部分の意味がよく分からなかった僕は、とにかく楽しい気分になって欲しかったというのもあって、道中すれ違う人達に、「ハッピークリスマスハッピークリスマス!」と訳の分からない文言を叫んでは、ゲラゲラ笑っていた。頭がおかしかった。今思うと、何が楽しかったのかは分からないが、あの時は確かにしかった。楽しかったという漠然した感情けが記憶の中に残っている。そんな中で、「ハッピークリスマス!」とノリ良く返してくれるサラリーマンもいれば、ナチュラル無視を決め込むOLもいた。でもそんなのどうでも良かった。誰かの迷惑の一部になろうと、自分存在一心不乱にアピールする事が、きっと重要で、こんな事が許されるのは今だけだと焦っていた。僕の人生ドキュメンタリーじゃなく、絶対コメディにしようと思った。途中、スーツをビシッと着こなした30代ぐらいのサラリーマンに、「そのソリ、どこからとってきたの?」と聞かれた。僕は素直に「そこの団地!」と答えた。するとサラリーマンは、深夜の住宅こだまするぐらいの声で、ゲラゲラと笑っていた。あの時のサラリーマンの笑い声も、今でも覚えている。断片的な記憶ではあるけど、あの瞬間の僕は「貴方は癌です。もって1ヶ月の命です。」と言われてもゲラゲラと笑っていたと思う。純粋である事は、人生を楽しむ上で一番楽なツールだと思うが、純粋なだけじゃ、質の良い人生をおくることも出来ないんだと今になって気付いた。22歳になった僕は、フリーターで、毎日ブラブラしている。もしあの時に戻れたら、「そんな事してないで勉強しろ!」って言うんだろうか。僕だけは、僕の今までを否定しない方がいいのか。まだ取り返せる。楽しい事は暫く止めて、資格でも取ろうか。ユーキャンユーキャンマイナビバイト南無阿弥陀仏

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