2018-08-03

とある駅の、あなたを守れなくて。

私はとある駅に勤務する駅員です。

今年の猛暑はすさまじく、気分や体調が悪くなるお客さまはとても多いのです。

今朝もそんな日でした。

から湿気がたちこめるホーム、風通しも悪く、日中暑くなるのが朝の気配で想像できます

いつも通り、ホーム上に立つ私。

大体は、交代しながら1時間程度ずつホーム上に立っています

勤務開始直後、ふと目をやるとホーム上のベンチで顔を覆う女性お客様の姿。汗もかいていて、どうやら乗ってきた列車を途中で降り、休んでいるよう。

「様子をみておこう。」

何かあってはいけないと、少し様子を見ることにしました。

10分、15分と時が経っても同じ体勢。

ここで一声かけに行く事に。「もし、これ以上辛くなるようでしたら声かけてくださいね。」

というのも、大体の駅にはホーム上に事務室があり、冷房も効いている。体調不良などの場合は少しの間だけだが、こういった事務室で休ませてあげることができる。

女性は少し笑顔で、頷く。

「もう少し休めば良くなるかな?」

と思い、少し離れた場所で立哨する。

また、時が流れる

40分ほど経っただろうか?同じ体勢だった女性が立ち上がり、こちらに来る。

「少し休ませていただけますか?」

勇気を出して、声をかけてくれた。

この暑さでは、少し列車を降りたくらいで体調が改善しないのは容易に理解できる。

「今すぐ対応しますね。」

業務用の電話を使い、連絡を取る。

事務室椅子にも空きはある。

応援助役が来るということを確認し、電話を切った。

この時点では、心配気持ちの反面、役に立ててよかったかな?という自己満足自分の中を占めていた。

女性を再びベンチに座らせ、応援助役が到着する。助役お客様の様子を伝えると、なぜか怪訝な顔をした。

吐き気があるとねー、事務室入れられないんだよねえ」

ん?そんなこと初めて聞いた。今まではなんの問題もなく休ませていた。

しかし、なんとなく想像もできた。

事務室は、基本的には我々駅員の待機室である。仮に、休ませたお客様ウイルス性病気感染していた場合、その場にいる駅員が感染するリスクがある。365日、ほぼ丸一日動いている鉄道を守るためには、当然、駅員は健康第一だし、万が一の感染により決められた出勤ダイヤを崩すわけにはいかない。

しかし、お客様はどう考えても熱中症の症状を訴えているし、嘔吐もない。

大事にしたくないと、救急車もなるべく避けたいと言っている。

生意気ながら抵抗したが、結局助役はその女性をそのまま暑いベンチに座らせる事にした。結局、我々は「放置」という選択をしたのである

鉄道マンとして、列車運行第一なのはわかる。あたりまえだ。しかし、それに乗ってくださるのはお客様だし、お客様安全に乗り、無事に家に帰ることも私たちの使命ではないだろうか?満員電車や過剰な混雑はもはや日常茶飯であるが、ここに来てこの猛暑は明らかにお客様の体調の悪化を誘発している。

それに、他にも方法はあったはずだ。

少し歩いて改札を出れば、冷房の効いたきっぷ窓口がある。そこに一つ椅子を出してあげればよかったのではないか

少し、強めにでも救急車に乗ることを説得し、病院で診てもらうことを進言すれば良かったのではないか

勤務が終わった今、ずっと朝のお客様のことを考えている。期待をさせるようなご案内をしたのに、結局助けられなかった自分の弱さを激しく痛感した。

一期一会ホーム上は、旅のはじまりのようないい面もあれば、謝りたくて、謝りたくても、もう二度と伝えられないこともある場所です。

そんな後悔を、わずかな希望に賭けてここに記します。

あなたを助けられなかった失敗を私は一生忘れません。どうか、あなたの具合が良くなりますように。そして、今後もし、同じような場面があっても、必ず守れるような駅に改善します。どうか、お身体に気をつけて。

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