私は鉄の鎧を着ている。
私は、鎧の小さな窓を通して物を見ていた。
小学生の時、その窓から見える世界しか見えないのでよくけがをした。
道路に飛び出し、車にはねられた。
鎧が体を引っ張るのだ。
頭に入らず、覚えられない。
中学校に入ってから、鎧をつけていて変な動きをしていることをからかわれた。
テスト前に勉強をしなければならないのを、鎧は別の場所へ向かわせる。
鎧に引っ張られないよう、図書館に行き勉強した。鎧を身に着けながらの勉強は辛かった。
授業中はずっとぼーっとして、空想に浸っていた。
夢の中だけは幸せだった。
鎧の窓を通して見る、同級生の姿は輝いて見えた。
だけど、私だけは鎧の窓からその姿を見ていた。
ペースが速く、鎧越しでは話している内容が聞き取れない。
鎧を着たままで字は汚いままだ。
大学受験、集中できない。
このころ、鎧はさらに重くなっていた。
鎧を着てイライラした私には友達もなかなかできず、彼女もできない。
だが、丸暗記でなんとかしのいだ。
頭が回らず計画を立てて進めることができない。
研究成果は出ない。
でもおなさけで卒業はできた。
少し体が軽くなった。
社会人になった。
鎧越しでは何を話しているか聞き取れない。
重要な指示が抜ける。
「話を聞いているのか?」
「大学で何をしてた?」
「やる気があるのか?」
「書類が間違いばかりだ。」
と怒鳴られる。
違う精神科に行くことになった。
汗が止まらない。
吐き気がする。
だが、それも一か月ほどで治まった。
鎧がだいぶ軽くなった。
周囲が私を奇人、自分勝手なやつとして見られていることにストラテラを飲み気づき辛くなった。
現在、30才。
私はこれからもこの鎧をつけて生きていく。