普段はスカスカの電車に乗るからめったに痴漢に遭うことはないんだが、たまに、朝方の満員電車に乗ると5回に1回くらいの割合で痴漢に遭う。(夜の満員電車はなぜかあまり痴漢に遭わない)
そういうときは足を踏んだりして応戦している。その都度ピンヒールを履いていないことが悔やまれるのだが、まあその場で痴漢をやめてくれるのなら大事にするつもりもない。私だって急いでいるのだから。
先日もそういうことがあった。しかしそのときは踏める位置に痴漢の足がなかった。
そういうときは、半径2,3メートルの人々に聞こえるくらいの声で やめてください というようにしている。周囲からの、は?何言ってんだこいつ?という視線は痛いが、大抵の痴漢はこれでやめてくれる。
なので今回も同じように やめてください と言った。一瞬、私を触る手が止まった。そしてまたサワサワと動き出した。やめる気はないようだった。
腹が立ったので、手を掴んだ。少し爪を立てた。痴漢の顔を見た。30代前半くらいのサラリーマンらしき男だった。驚いた顔をしていた。
手を掴んだまま、今度は奴の目を見て やめてください と言った。
男の第一声は 痴漢冤罪だ! だった。続けて、誰がお前みたいなブスを…というお決まりの台詞が続いたがそれはどうでもいい。
私は少し混乱してしまった。
いや、お前、痴漢してんじゃん。冤罪じゃないじゃん。チョーウケるんですけど。深層心理に隠れていたギャルが何故かここで目覚めて、脳内で毒を吐いていた。
カッとなりそうだったのだが、突如現れたギャルのおかげか少し冷静になることができた。
私は、 べつに痴漢されたなんて言ってないんですけど、そう言うってことは痴漢してたっていう自覚があるってことでいいですか! と言った。重箱の隅をつつくというか、揚げ足をとるというか、ダサい発言だったと自覚しているが、周囲の人々の 冤罪かよこのブス という表情が なるほど痴漢か という表情に変わったような気がした。結果オーライである。
男は一瞬しまったという顔をしたが、すぐに何か色々と言い返してきた。内容は覚えていない。何度もブスと罵られていたことは覚えている。自分がブスであることくらい自覚しているのだから何度も言わなくていいのに。少し傷ついた。
冤罪だの、ブスだの、色々と言われて再び腹が立ったので お互い警察に行きましょう と言った。男ははっとした後、嫌そうな顔をした。
私は被害者であるはずだ。なぜ悪者にならなければいけないのか。
次の駅で降りてお互いの言い分を警察を交えて決着をつけるか、今ここで謝るか、どちらかを選ぶよう伝えた。
なんだか、闘いに勝ったような気がした。腹は立っていたが清々しい思いだった。
また5秒くらいして、そばにいた40〜50代くらいのサラリーマンらしきおじさんに声をかけられた。このまま卑劣な痴漢を野放しにしていいのか、ということだった。たしかに、良くない。だが私は急いでいたためあまり時間をとられたくなかった。
しかしそんな話をしていると再び痴漢がキレだした。謝れば不問にすると言っただろうとのことだった。
そんな事を言われるとますます腹が立つではないか。やっぱり突き出してやろうかと考え始めたところ、おじさんが 実は痴漢しているところを見ていた。何も言えなくてごめん と言ってきた。おじさんは証人だったのだ。
どう考えても私に有利な状況である。痴漢はこの世の終わりのような顔をしていた。
痴漢と、おじさんと、私も証人になると言ってくれた数名の方々(目撃したわけではないらしいが、痴漢を取り押さえてくれていた)と一緒に次の駅で降りた。大所帯であった。
駅員さんに伝え、小部屋に連れて行かれた。あったことを話した。
痴漢曰く、気の迷いだったそうだ。一時の気の迷いで他人の心に傷を負わせちゃだめだろう とお巡りさんに怒られていた。その通りである。
しかし私も、一時の気の迷いから生じた過ちを裁くために1人の人間の人生を狂わせてしまうのも荷が重かった。まあ、本人の自業自得であるのだが。
よって示談ということにし、後日、謝罪と幾らかの示談金を受け取った。
一段落ついた後に友達にこの話をしたところ、うち一人の男友達からかけられた言葉に意表を突かれ困惑した。
その場の全員が、芸人顔負けのチョットマッテを決めていた。
この話を聞いてすぐにこんな言葉が出てくる人もいるのか。これは、相容れないわ。と感じた。
今までの付き合いで普通の思考の人間だと思っていたからこそなおさら驚いた。思考云々というより彼の場合はただの非常識な人間である。
男の立場で考えるとそういうことになるのだろうかと思ったが、その場にいた他の男友達も こいつは頭がおかしい と言っていたので、彼は極端な例なのだと思う。思っていても、普通は言わないだろう。
そして先週末にようやく、証人となってくれた方々が全員揃って食事に行くことができた。示談金はここで使った。
みんな、あの後の予定に遅刻してしまったようだったが、とりたてて支障はなかったらしく、安心した。
特におじさんは事情を話したところ(私からも連絡を入れた)上司に褒められて会社で表彰されたらしい。最初は見て見ぬ振りをしていたくせに、と思ったのだがあえて言わないでおいた。
見て見ぬフリしたおじさん達や痴漢を庇う男友達が目に浮かぶようだ。 痴漢程度でって考えが透けてみえる。 男は同性に甘い。特に同性の性欲に甘い。、
http://anond.hatelabo.jp/20150610073905 の数時間前に http://anond.hatelabo.jp/20150610041300 これがあった。 これ読んで書いたと思われる。 気持ちはわかる。