いつもTwiterのことばかり話している友人がいる。「私のTLで最近話題なんだけど」が話題を提起するときの枕詞で、「私のフォロワーさんが言ってたんだけどね」が伝聞の多くを占める。枕詞に「Twitter」という言葉が入っていなくとも、例えば「こういう話があるんだけど」と言って切り出す話題の多くは、現在進行形でTwitterで流行っていたり炎上していたりする話題である。基本的に言葉少ななタイプだが、たまに饒舌に話すのはこれらの話題だ。そのときの彼女は目が爛々と(あるいはギラギラと?)輝いて見える。
彼女は、彼女の所属しているクラスタではそこそこ名が知れているらしい。いやまあ「著名人なのか」と尋ねると「そこまで大したものではない」というので、たぶん「大したものではない」のだろう。いずれにせよ、彼女は彼女のTLにおいてある程度の立ち位置を確保しており、そこでのコミュニケーションを彼女はとても大事にしている。オフラインでは前述のとおり言葉少ななタイプで、あまり自分の趣味の話を口にしない。社交的なタイプではなさそうだ。けれどネット上の彼女はとても社交的に見える。
増田が彼女のTwitterのフォロワーになったとき、彼女はとても喜んでいた。「増田が私のアカウントに興味を持ってくれたことが嬉しい」と言っていた。増田は彼女と職場の同期であり、増田の独り善がりな勘違いでなければたぶん、友人であった。けれど増田が彼女のTwitterのフォロワーとなったことで、増田はようやく彼女の「仲間になれた」ようだった(増田はもっと前から彼女と友人であったつもりだったので、少し凹んだ)。
それから彼女は増田の前で、よくTLの話をするようになった。自分の尊敬するフォロワーや、自分の周りで話題になっていること、自分のツイートがきっかけでどういう議論が起こったか、どういったツイートに沢山FavやRTがついたか。それらを楽しそうに話す。彼女は自分の所属するクラスタが本当に好きで、増田にも「こっち側」へ来てほしいようだった。
Twitterはそもそもそんなに好きじゃない……と言ってしまえばそれまでだが、決して民度が高いとは思えない(民度が高いSNS、なんてものがあるかどうかも疑問だが)。Twitterは議論に向かない。Togetterまとめはどうしてもまとめ主の主観が大きく影響するし、恣意的なまとめも少なくない。自分の観測範囲内の話題が、まるで全世界で話題になっているかのように錯覚してしまうところも苦手だった。Twitter上のコミュニケーションも苦手だ。自分のフォローした人間が自分の気に入らないものをRTしているとすぐにアンフォローしてしまう。他人のいやなところや、自分のいやなところばかり見えてくる。便利だと思うし、暇つぶしにはいいツールだとは思うが。以上の言い回しからもわかるとおり、増田は内心、Twitterというものを劣悪と見下していた。
増田は彼女のクラスタには興味がなかった。彼女の趣味自体には興味があるが、その趣味を同じくする人間で構成される共同体のTwitter支部にはまるで興味がなかった。更に言えば、彼女のフォロワーやそのまたフォロワーにも興味がなかった。たぶん嫌いだろう。TwitterのTLのことなんてどうでもよかった。炎上話題なんて、増田もTwitterをやっているのだしわざわざ言われなくても知っている。だいいち、彼女のツイート自体も日常短文ツイートが多すぎて、増田は次第に読まなくなった。
面と向かって会っているときくらい、Twitterのことばかりじゃなくて、貴女自身のことを貴女自身の言葉で話して欲しいと、そう増田は思った。あるいは単純に「間接的な自慢話してんじゃねーよクソボケマウント行為かよアァン」と言いそうになった。まだ言っていない。
彼女の身体はTweetでできている。血潮はRTで心はFavだ。その彼女のTwitter愛やクラスタ愛やTwitter上の彼女自身や、彼女の自己表現、に興味を持てず疎ましく感じるということは、つまり増田は彼女自身に興味がないのではないか?なら友人になろうとすることがそもそもムリなのではないか?「価値観の相違」というヤツなのではないか?と。
まあ昔からいるよ。 https://anond.hatelabo.jp/20080912201207 https://anond.hatelabo.jp/20140912175857