はてなキーワード: カレントアウェアネスとは
「もう図書館は語りたくない。行くことに疲れたし、肝臓も壊した。おまけに会社も辞めることにしました」
そう語るAさん(40代)は、元人気図書館系ブロガーだ。かつては毎日図書館に行き、カレントアウェアネスほか図書館系雑誌を欠かさずWebと冊子体で読み,年間500館は訪問していたいたことも。そして図書館好きの間でも一目置かれていた存在だった。しかし、あることをきっかけに精神的不調に陥り、うつ病と診断され、現在は務めていた大手市立図書館を休職中だという。
「職場の飲み会の席で『Aさんって図書館に詳しいんですよね』と女の子たちに聞かれて、僕のおすすめを教えてあげたんです。最近のトレンド、館長の人柄、コスパに優れた図書館システムなど様々な側面を考慮して、女子にも受けのいい図書館をです。またゼロ年代からの図書館のニューウェーブ系(指定管理系・ディスカバリーサービス)の歴史もわかりやすく教えてあげた。知り合いの図書館員に僕の紹介だと言えばサイン入りの利用者カードぐらいオマケしてくれるんじゃないかとも言いました」
Aさんにそんな話を聞いてきたのは会社の20代の女性社員3人だった。だが翌日、図書館のおはなし室に入ろうとした時、彼女たちがAさんの話をしていたという。
「酷いことを言っていたんですよ。『図書館ぐらいであんなに得意になれるって終わってる』『彼女もいないし、図書館と結婚したんじゃないの』『息がフィルムコートと紙魚の臭いがする』なんて。その場には僕の後輩の男性図書館員たちもいたみたいで、みんな笑っていた。その日は図書館を早く退庁して、家に帰ったらめまいがして」(Aさん)
電話取材を行っていると、この話をしているうちにAさんは嗚咽をもらしはじめた。国内のOPACも全ベンダ制覇するなど図書館に尽くし、恋愛、友人、仕事(休日の出勤も図書館に行くために断っていた)を犠牲にしてきただけに、周囲の心ない言葉が響いたようだ。
「図書館は結局、僕になにも与えてくれなかったんです」(Aさん)
こういう事例はAさんにとどまらない、筆者がかつて取材協力をお願いしていたある図書館系ブロガーは、他のブロガーたちと競うことに疲れ、彼は現在図書館業界を語り出すと吐いてしまうという程精神不安定になっている。またもう一人は、知り合いだった図書館関連協会の事務局から『事務局運営にまで口を出すのはやめてください。もうウザいからこないでください』と言われたことを機に、過食に陥って、もともと80キロだった体重が現在は120キロになっている。彼は現在外出恐怖症だと言っており、家で「図書館員になろう」を大量に読み漁り、健康状態も心配だ。
2000年代前半から2010年代にかけて、多くの図書館系ブロガーたちが生まれ、図書館を語ることに情熱を燃やしてきた。彼らの多くは図書館の自由を語り尽くすことをステータスにしてきたから、語り過ぎて身体を壊すのはわかるが、まさか心まで壊してしまうとは。まあ、ツタヤには罪はないのだが。