「もうライトノベルは読みたくない。読むことに疲れたし、肝臓も壊した。おまけに会社も辞めることにしました」
そう語るAさん(40代)は、元人気ラノベ系ブロガーだ。かつては毎日本屋に行き、年間500冊を読み込んでいていたことも。そしてラノベオタクの間でも一目置かれていた存在だった。しかし、あることをきっかけに精神的不調に陥り、うつ病と診断され、現在は務めていたIT系の会社を休職中だという。
「会社の飲み会の席で『Aさんってライトノベルに詳しいんですよね』と女の子たちに聞かれて、僕のおすすめを教えてあげたんです。最近のトレンド、作者の人柄、コスパに優れたシリーズ作品など様々な側面を考慮して、女子にも受けのいい作品をです。またゼロ年代からのライトノベルのニューウェーブ系(セカイ系・現代異能)の歴史もわかりやすく教えてあげた。知り合いの編集者に僕の紹介だと言えばサイン入りの献本ぐらいオマケしてくれるんじゃないかとも言いました」
Aさんにそんな話を聞いてきたのは会社の20代の女性社員3人だった。だが翌日、会社のランチルームに入ろうとした時、彼女たちがAさんの話をしていたという。
「酷いことを言っていたんですよ。『ライトノベルぐらいであんなに得意になれるって終わってる』『彼女もいないし、二次元と結婚したんじゃないの』『息が中二病とTRPGの臭いがする』なんて。その場には僕の後輩の男性社員たちもいたみたいで、みんな笑っていた。その日は会社を早退して、家に帰ったらめまいがして」(Aさん)
電話取材を行っていると、この話をしているうちにAさんは嗚咽をもらしはじめた。電撃文庫も全冊制覇するなどライトノベルに尽くし、恋愛、友人、仕事(休日の出勤も読み漁るために断っていた)を犠牲にしてきただけに、周囲の心ない言葉が響いたようだ。
「ライトノベルは結局、僕になにも与えてくれなかったんです」(Aさん)
こういう事例はAさんにとどまらない、筆者がかつて取材協力をお願いしていたあるラノベ系ブロガーは、他のブロガーたちと競うことに疲れ、彼は現在ラノベを読むと吐いてしまうという程精神不安定になっている。またもう一人は、知り合いだったレーベルの編集者から『経営にまで口を出すのはやめてください。もうウザいからこないでください』と言われたことを機に、過食に陥って、もともと80キロだった体重が現在は120キロになっている。彼は現在外出恐怖症だと言っており、家で「小説家になろう」を大量に読み漁り、健康状態も心配だ。
90年代後半から2000年代前半にかけて、多くのラノベ系ブロガーたちが生まれ、ライトノベルを読むことに情熱を燃やしてきた。彼らの多くはライトノベルを読み漁ることをステータスにしてきたから、読み漁り過ぎて身体を壊すのはわかるが、まさか心まで壊してしまうとは。まあ、ライトノベルには罪はないのだが。
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