2024-02-12

俺にとって村上春樹はなんだか面白い話をしてくれるおじさんだったんだよ。

難しそうなブラームスだとかヤナーチェックみたいなクラシックとか、ボブ・ディランとかジャズとかを教えてくれたり、ゴダールみたいな聞いたことのないフランス映画について話してくれたり、戦時中からつながる日本政治の暗部についてノモンハン事件からめて「ねじまき鳥クロニクル」で示唆してくれたり、知り合った女性と突然やたらとエロい経験したことを話してくれたりする、親戚の集まりにいる何してるかわかんないおじさんだったんだよ。

きれいな女性バーで仲良くなってすぐに寝ちゃったり、ホイホイとセックスに誘われたり、野外でフェラされたり、そんなことが本当にあるはずがないってわかってたけど、高校生がそれくらい空想したっていいじゃないか。「ノルウェイの森」みたいに幼馴染がいて日常的にセックスしまくるという空想悶々とする年ごろだよ。

海辺のカフカ」でおねショタに目覚めたりして性癖も歪んじゃったよ。俺、「国境の南、太陽の西」みたいに先に裸にされる性癖であるんだよ。

大学生になったら女の子セックスできるんじゃないかって期待させてくれたし、セックスなんて大したことじゃなくてよくあることなだって振りをするのに憧れたんだよ。でも俺は酒も飲めないし煙草のにおいで気持ち悪くなるんだよ。

大学時代しょっちゅう歯噛みさせられる経験をしてきたんだよ。今でもときどき思い出して悔しくなるよ。

世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」みたく図書館司書さんと仲良くなって当日セックスみたいなことはないよ、レイモンド・チャンドラーの読み過ぎだよ。

村上春樹が全レスするみたいなサイトで、モテない男の子ちょっと辛辣だった村上春樹を見て寂しかったよ。あんたの言っていることはわかるけどそれは恵まれてる側から意見上から目線だよなって思ったよ。いつもの他人気持ちを慮るもののわかったような言い方はどこに行ったんだよって悲しくなったよ。

でもやっぱり俺の感性には影響を与えまくってるんだよ。

感性以外にも倫理観を形作ってるよ。村上春樹小説で示された倫理基準村上春樹自身が従っていないことだってあるし、早稲田に記念館が出来ちゃってすっかり体制側のおじさんになっちゃったけど、やっぱり面白かったんだよ村上春樹。俺の各文章リズムに影響を与えているし、俺の読んだ本も見た映画もおじさんが教えてくれたものがいっぱいあるんだよ。

それに話し方が村上春樹っぽいって言われちまったこだってあるんだよ。

最近小説よりも随筆翻訳のほうが好きになっちゃったんだよ、なんでなんだよ。

なんだよ、わけがわかんないよ。

新刊を読みたいんだか読みたくないんだかわかんないよ。

俺にとって村上春樹は真面目な顔してセックスについて読める場所だったんだよ。真面目さしか取り柄が無かった俺なりの叛逆だったんだよ。だから体制側になってみんなから持ち上げられているのを見ると、逆張りしたくなるんだよ。

いい子ちゃんじゃない文学が読みたいんだよ。

  • 村上春樹さんも今年はようやくノーベル文学賞がもらえそうですね。 パレスチナがあれだけひどいことになっているんだから、あのときのスピーチが再評価されることでしょうから。 そ...

  • なぜ私は村上春樹の小説が苦手でエッセイだけは好きなのかがこの増田を読んで分かった気がする。

  • ちゃんと読んだことがないけど、気になっていて、でも今更読み始めるのもな・・・・ というの状態を10年以上続けている。 どうせならノーベル文学賞取る前に読んどくべきだよな

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