2018-09-04

縄文展に行った。あるいは、いま一度スプレーを噴射すべきか。

この前、東博平成館の縄文展に行った。会期末で混み合っていると評判だったから、夜間開館日を選んだんだが、もうこの制度は浸透してしまったらしく、残念ながらひどい混雑。展示品を見るのに一苦労で、広い会場を一巡りしたらクタクタになってしまった。

とはいえ、私は健常者の成人男性だ。空きをみて前に滑り込む機敏さや、後列から人の頭越しに見る背の高さがあるので、比較的苦労は少ないはず。老人や子供の苦労がしのばれる。

しかし、それ以上に大変なのは車椅子の人だろう。座ってるから視点が低いし、人混みの中に分け入っていくのはぶつかって危険なので遠慮してしまう。今回2人見かけた。おそらく殆ど展示を見れていないはずだ。

1974年モナ・リザ来日した。展示されたのは東博特別5室。このとき事件が起きた。赤い塗料の入ったスプレーモナ・リザ目掛け噴射されたのだ。

このモナ・リザ展は相当な混雑が予想されたため(結果、8週ほどの会期で150万超え)、展覧会前に、車椅子赤ん坊連れの人の観覧自粛文化庁要請した。対応出来ないから来ないでくれという趣旨発言がなされたのだ。それに対する抗議としてのスプレー噴射だった。まあ、そりゃ怒るわな。

その事件きっかけとなったのか否かは知らないが、40年以上たった現在、各地の博物館美術館バリアフリー化が進み、また託児所臨時ながらも設けられるなどして、状況は劇的に改善していると言っていいだろう。

しかし、今回このような状況に遭遇して、まだまだ道半ばだなと思った次第。車椅子の人でもエレベーター完備なので会場に入れるし、会場内は段差がないから回るのに不便はない。障害者に優しいユニバーサルデザイン。でも結局、展示品なんて満足に見れないじゃないか

人権問題である。と同時に、さらに言えば、障害者に厳しい世界というのは、健常者にとっても厳しい世界という話でもある。混雑した展覧会は私も辛い。

なら行かなければいいのではないかと言われるかもしれない。まあ、実際私は、行かなかったり、会期初めの空いている時に行くようにしていて、それほど苦労はない。そもそも一番好きなのはマイナージャンルなので、本命展覧会はあまり混まないし。そんなわけである程度は人ごとながら、しかしこの状況を放置していていいのだろうかと、今回思った。

対策。人を減らすのなら値段を上げる、時間指定制にする、展示内容をしょぼくすると手はいろいろある。ただ、博物館側には集客しろというプレッシャーがかかっているという話を聞かないでもない。とすれば、この方向の解決は難しいだろう(時間指定展覧会に行ったことないのだが、どの程度入れるものなのだろう? 上野の森フェルメール展はぎっしり詰めそうな悪い予感がしないでもないが、はてさて)。

まずできることは、その場にいる人が、障害者子供や老人などの弱者には譲るという優しい心を持つあたりだろうか。しかし、そういう精神が浸透することこそ、あらゆる対策より困難なのかもしれない。

以下、余談。

東博にある法隆寺宝物館という建物、訪館者にすこぶる評判がいい。確かにフォトジェニックな点は魅力である設計谷口吉生

だが、私はこの建物があまり好きではないのだ。いくつかある理由の一つが、障害者対策である

もちろん、対策はされている。入り口の段差にはスロープがあるし、館内にはエレベーターが備えつけられている。しかし、そのスロープは端っこに目立たぬように設置し、エレベーター一見して分からないように隠している。

谷口本人が実際どのように思っていたのかは知らない。ただ私には嫌々対策したようにしか見えないのだ。それが建物からヒシヒシと伝わってきてしまう。評価してる人はそれを感じないのだろうか?

  • 人権問題である。と同時に、さらに言えば、障害者に厳しい世界というのは、健常者にとっても厳しい世界という話でもある。混雑した展覧会は私も辛い。 健常者に何も齎さない癖に...

    • 返事遅れて見てくれるかわからんが一応 あまりそういうこと言うなよ。いつ自分が障害者になるかわからんないのだから。明日にも交通事故にあって車椅子生活になるかもしれない。そ...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん