聞け。
私の好きな男はアイドルじゃない。
私の推しは、今日もどこかで誰かを笑わせている。そういう仕事をしている。
それをアイドル扱いして舞台に登場した途端奇声をあげたり、出待ちで時間を潰させたり、常識はずれの行為をする。
他のジャンルでは常識だとか普通とされている行為も、別のコミュニティにおいては非常識ということも十分にある。そういうことを考えられないクズ。
普通に考えて、一般的に考えて、お笑いを観劇する上で私たちに許される感情表現は拍手と笑い声と指名された時の一言二言。悲鳴も奇声も論外。
お前のクソみたいな声でフリが聞こえない、きっと練りに練ったであろうセリフが聞こえない、渾身のオチが聞こえない。
言うまでもないかもしれないけど舞台は生物だ。最近は収録して動画サイトで配信されたりもあるけれど、基本は一度きり、一瞬を目で耳で肌で刻みつけなきゃならないもの。
初めて推しを見る興奮が抑えられないのかもしれないし、何度も見ているうちの一回だからどんな無礼も許されると思っているのかもしれない。
でもあなたにとってどんな一回でも、例えばお小遣いやアルバイトで貯めたお金で遠方から来た忠実なファンもいるかもしれないし、ずっとあなたが好きになる以前から嬉しい場面も苦しい場面も見届けて来たファンもいるかもしれない。
あなたの一回だって誰にも壊されちゃいけないのと同じように、その他の誰の一回も、潰されちゃいけないのだ。
そうして潰された誰かはファンを辞めていく。
わずかな一人かもしれない。でも、着実に、推しを支える人員が減る。
ファンはATMとはよく言ったものだと思う。そういう存在たれと思う。あまり多くを語らず、出すのは良い感情とお金。
極端な話、推しについて何か口出しするのは、道徳倫理に反したことを推しが行なった時や犯罪行為を犯した時、とか、とにかく言わなきゃいけない究極の状況まで別に何も私は言いたくないタイプ。
衣装?私服?彼女じゃねぇし。やり方?売り方?本人の方が何十倍も考えてるし。私生活?私が好きな、というか関わって良い面じゃないし。
出待ちですらキモい。本人が喜んでる分にはまだ見てられるけど、本人がやめて欲しいと言ってやめれないのは流石に頭おかしいよ。
まぁ大体のイベントとかライブ会場は出待ちご遠慮くださいスポットだと思いますけど。そこでもう一個引いてる。
あそこで会話しただけで彼女ヅラするようになるのはなんなんでしょうかね。「〇〇くん、今日元気なかった;;」お前の対応しとるからじゃボケ
全部理解できない。
そういえば観客側が許される感情表現として笑うことと拍手と指名された時の一言二言って言ったけど。
例えば推しが何か賞レースに向けて調整しているのだとしたら、その過剰な笑いは感覚を鈍らせる。自信を過剰にする。神経を麻痺させる。
私の推しがそうして死んでいく。
見事な言語感覚は枯れ、表情に気迫がなくなり、発声がまろやかになり、ネタに精彩を欠く。
私が愛した彼らの姿が徐々に消えてゆく。