「スプラトゥーン2」の発売に伴い、任天堂スイッチの品薄状態が話題になっています。「転売屋需要」「中華需要」という言葉も頻繁に聞かれるようになりました。
そんな中、2017年度第1四半期の任天堂の決算資料が公開されています。この決算資料から幾つかのことを読み取ってみました。
1.発売月の274万台の出荷に対して、4月~6月の三ヶ月では197万台しか出荷されていないこと
発売月と比較して約33%の出荷減です。月に直すと66万台/月がここ三ヶ月の出荷数となります。
2016年第4四半期では、総出荷数274万台のうち、日本が60万台(21.9%)、アメリカ圏が120万台(43.8%)と、アメリカ圏の出荷比率が2倍だったのですが、4月~6月の三ヶ月では日本が52万台(26.5%)、アメリカ圏75万台(38.1%と、アメリカ圏の出荷台数は日本の1.4倍にまで低下しています。全体としては日本+アメリカ圏で64.5%。2016年第4四半期でも上記2つの地域で65.7%の出荷だったので、アメリカ圏向けの出荷を日本向けにシフトしている。つまり、限られた在庫を再分配し、日本の品薄状態に対処しているのが伺えます。
言い方を変えれば、E3で欧米の大作ソフトにスイッチ版が軒並み発表されなかったこと、NPDの直近二ヶ月ではPS4に実売数で負けていることなども鑑みると、アメリカ圏を諦め、元々市場として強い日本に力を集中しているような印象を受けます。
そうなると日本で強い「スプラトゥーン2」の後も、引き続き日本に商品を集中させる。つまり、NPDのアメリカ市場では、引き続きPS4の後塵を拝する可能性が高い。アメリカ市場にもアピールできる「マリオ・オデッセイ」までは、ガラパゴスハードとしての色彩を強めていきそうです。
任天堂が出荷した全てのソフトがユーザーの手元に届いているわけでないので、あくまで出荷ベースからの推測でしかないのですが、2016年第4四半期では、日本だと1台のスイッチにつき1.5本、アメリカ圏では2.4本と、アメリカ圏の方が如実に高いソフト装着率を示していました。
この傾向は2017年度第1四半期でも同様で
日本:ソフト第1四半期156万本/ハード累計112万台=1.4本
アメリカ:ソフト第1四半期363万本/ハード累計363万台=1.9本
と、差は0.5本に縮まったとはいえ、アメリカ圏のソフト装着率が、依然高い水準にあるのは変わりません。
仕事柄、アジアに行くことが多いのですが、各国のゲーム屋で、普通にスイッチが販売されているのを見かけました。日本のハードと英語のソフトをパックにして、価格は5万円前後というのがスタンダードだったように記憶しています。どの店でも潤沢に在庫がありました。
こういった例から推測するに、アジアのお店や中華マーケットに対して「複数購入が容易で、免税もあり、地理的に船便での並行輸入コストも安い」日本向けスイッチハードと、「英語ベースで日本語よりも理解のし易いアメリカ向けソフト」がペアになって、一定数流通しているのではないでしょうか。
そうすると、あくまで仮説ですが、非常に面白い数字が見えてきます。
日本向けスイッチ出荷累計出荷数のうち、仮に20万台、割合にして18%が、こういった中華系転売ヤーによって並行輸出していると仮定しましょう。日本で販売されているうちの20万台が、アジアに流れているという想定です。そうすると、実際の各地への出荷台数は
となります。
2017年度第1四半期のそれぞれのソフト出荷数156万本、363万本を上記の修正した出荷台数で割ると
アメリカ+アジア:ソフト363万本/ハード215万台=装着率1.69本
とほぼ並びます。
つまり、「日本に出荷されたスイッチのうち、累計20万台・18%程度はアジアなどに流れている。それに相当するソフトがアメリカからアジアに流れ、アメリカ圏の異常な装着率に説明が付く」というものです。
いかがでしょうか。
どちらにせよ、任天堂さんには、中華の転売ヤーではなく、きちんと遊びたい人に商品が流通するような体制を整えて頂くよう、お願いしたいものです。