2011-08-18

満員電車で一番怖いのは痴漢じゃない

満員電車が嫌いだ。好きな人はいないと思うけど。それこそ痴漢行為をたしなむ方くらいだと思うけど。

わたしの人生に満員電車が登場したのは12歳のときで、私立の中学に通うための行き帰りだった。

それから6年間、片道1時間ちょっとかけて通い続けたわけだけどもうそれはそれはつらかった。

毎朝それだけでぐったりだ。疲れてしまうし、気が立つ。

体力的にもつらかったし、女子校に通っていたことに加えて、この6年間の途方もない電車での息苦しい時間の積み重ねがわたしの男性への超根本的な嫌悪感を刻みつけたような気がする。

 

いつも嫌な想いをしててでも言えなくてつらかったんですぅ、とかそういう感じでもない。

わりと気が強かったし(女子高生特有の世界に対する恐れのなは今思い出してもすごいと思う)「ちょっとやめてもらえますか?」って言い放って駅員さんに引き渡したこともあったけど、

わたし(あるいはもしかしたら「わたしたち」)がこわいのは痴漢をしてくる男の人じゃない。

もっとなにか、大きなものへの恐怖だった。男の人に囲まれると今もすごくこわくてこわくてたまらなくなる。接触がこわい。そんなこと言ってると電車乗れないんだけど…。

もちろんそんな下衆な犯罪行為におよぶひとはほんの一部だってことはわかってるし善良な市民のみなさんがほとんどだってことはわかってる。それでも怖い。恐怖の対象は一握りの犯罪者だけではない。

 

そういう人が近づいてくるとすぐにわかる。空気が淀む。ああ、と思う。

例えばその人は電車のゆれのように思わせて体を密着させてきたりする。

例えばその人は体をすきまにねじこむように見せかけて胸元をのぞきこんできたりする。

例えばその人はおしりやもものあたりにあたってしまった手をあえて動かさずにそのままにしてたりする。

例えばその人はわたしの腰のあたりに何か体温の高いもの押し付けて(あるいは、押し付けざるをえなくなったように見せかけて)きたりする。

例えばその人はわたしの首筋や髪の近くで少しだけ荒い息遣いをしたりする。

もしくは、すべてわたしの電車やだ、って気持ちが産む錯覚かもしれない。

 

別にわたしはお世辞にもかわいくはなくて露出が多いわけでもなくてもうとにかく平凡だ。

電車のなかでは熱心にケータイを触ってるか一心不乱に本を読んでるかどちらかなので、下を向いて没頭してて外部のことに鈍感なように見えるんだろうと思う。

で、身長は160センチくらいで、平均身長くらいの男性目線クロスするほど近い身長ではないし、かといって小さすぎて表情が見えないわけでもない。

そういう平凡な理由で狙われ…というか巻き込まれるのだと思う。そしてそんな特徴の女の人は掃いて捨てるほどいるだろう。わたしではない誰か。

 

腰にあたる温度の高い何かはわたしに対しての欲情ではなくて電車中吊り広告柏木由紀ちゃんのグラビアを見た結果かもしれないし、

もしくはわたしの自意識過剰なだけで家族おみやげに買ったたい焼き天津甘栗や石焼きいもかもしれない(と、一応考えを巡らせる)。そんなのよくわからない。というか知りたくもない。

ほんとに絶望的な気持ちになる。とにかく不愉快だ。意図も実態もわからないけど、そして、だからこそ。

わたしはどろどろしたものに包まれながら平然と本に没頭する「ふりをする」。

なぜならばそこであたふたするのが癪だからだ。お前みたいなやつにわたしの精神や行動を左右されなくなんてないのだ。

とか思うと同時に本当にどうしようもなくみじめな気持ちになる。早く離れたい。気持ちが悪い。

そういうときに頭をよぎるのは相手への怒りではなくて、今自分がここにいることへの苛立ちなのです

消えたい、と思う。こいつを降ろしてやりたい、ではなくて、早くここから逃げたい。

急行電車は次の駅までが長くて、なんとかして降りる。追ってくることはまずない。気付かれてると思ってるし。

顔は絶対に上げない。目を合わせたくない。彼らはわたしを見下ろしている。それがまた気持ちが悪い。

電車を降りて、同じ電車の隣のドアか車両にまた乗り込む、その絶望感は何度やってもやばい

わたしはなにから逃げていてなにに耐えていて何に向かっているのか。

 

痴漢行為として突き出すためには、そうだな、具体的に言うと、手の甲ではなくて手のひらのほうが明らかに意志を持って体の部位に触っていたり、

欲情の矛先が明らかにこちらを向いていてかつ増強していたり、何かしら確信を持てないと断定できない。

そういうのやめてもらえますか、の「そういうの」がお互いにわからないと告発にならない。

さっきの例はまた別だけど「妙に体を近づけてくる」とかはそんな確信は持てない。

混んでるのですみません。おわり。まあ、そうなるよね。言ったことないし言うほどじゃないよ。

冤罪だってわんさかある昨今ですから、こちらだって無責任にわめきたてるわけにもいきません。

でもね、わかるんだ、そういう人は、女というよりもメスだと思って物理的な接触をしようとしてくる人は、わかるんだよ。具体的な行動でなくたって、わかるんだよ。

もうどうしようもない不愉快さに包まれるんだよ。まなざしで、息遣いで、手への神経の集中具合で。

 

女性という生きものの持つプラス恍惚感はよくわかる。

わたしも電車に乗っている近くで、透き通って白い肌の人だったり上品な香りを漂わせてたりきれいな髪の毛をしていたりシャンプーのいい匂いを漂わせていたり

うなじのラインが見える髪型だったりする人がいるととまじまじと見たり、ああ女の子かわいいなあ、すてき、とうっとりしたりするもん。それは男女関わらずまったくふつうのことだと思う。

でもそれとはまったく異質だ。わたしが怖い人たちは。

まったく異質だけどたぶんそう遠いものでもないんじゃないかってなんとなく思う。わかんないけど。わたしは女だし。

 

電車が怖いです。男の人は(基本的に)怖いです。無言で負けるしかないんだな、って思うからかな。

恐怖症というまででもないけど。恋人が作れないほどひどくはないけど。でも電車で、男の人に囲まれる状況には極力なりたくない。女の人の近くに立ちたい。

今日すごく、嫌なことを思い出してしまったので勢いに任せて一気に書いてしまいました。

もうすぐ引っ越せる。そしたらずいぶん、毎日を生き延びるのが楽になるような気がする。がんばれわたし。

  • 女性専用車両が必要な理由がとてもよく分かった。こういう女性が結構な割合でいるのだとしたら、そりゃ需要も高かろう。 頑張れ都会人。そして無事田舎に逃れることが出来たなら...

    • かなり横だけど こないだ会社の飲み会帰りに気持ち悪くなって、駅の公衆トイレを探しながら 他の路線で帰ろうとしたところ 路線が同じ男性上司が 「何やってんだ?もう終電になっち...

      • >女性専用車両があったらとあのときほど思ったことはない。 女性専用車が有ったとしても、大抵は通勤時間帯だけの運行だから夜間には乗れない路線が殆どだし、そもそも痴漢対策...

    • 車通勤でも「いかにも女っぽい車」だと後を付けられたり煽られたりするよ。 軽やコンパクトカーも馬鹿にされて煽られたりする。 主婦カーが多い地域なら大丈夫だがそうでないなら色...

  • 一番怖いのは弱いお前の心

  • http://anond.hatelabo.jp/20110818225658 元増田、男だろ。と思ったがどうか。 とにかく、良くぞ書いた。男の無意識を、良くぞ書いた。 誰も口にしなかったことを始めて書いたんじゃないか。 ...

  • ごめん、ただの自意識過剰な女にしか思えんわ こういう女のためにも女性専用車両を増やすべきだし、女は女性専用車両に乗るようにしたほうがいいと思う

  • 元増田も無言で反撃すればいいんじゃないかな? 例えば睨みつけるとか、 体が当たっていれば鞄などの持ち物を間に挟む。 携帯に没頭する振りはやめて、周りを見渡してみるとか。 ...

    • https://twitter.com/domotwitta/status/486704825199886336 とにかくそういう敵意をいきなり向けてくる人と遭遇するかどうかなんて予測が不可能だし、わりと腹にいちもつ持ってていつ誰に向けるかわ...

  • 今日もまた痴漢容疑者が線路内逃亡して運行停止。 いいかげん鉄道会社も損害出てるんじゃないの? 車両にカメラ設置するとか、男性専用車両を試験的にでも運営してみるとか、まだや...

    • だから車内カメラが答えだって何度も言ってるじゃん ちゃんと声を揃えて要望出せって

      • 身動き取れないような満員電車で車内カメラがどの程度有効なのかは疑問が残るというか、有効にするために1両あたり何台くらい設置しないといけないんだろう

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん