2021-03-26

「THE世界大学ランキング日本版2021」について

大学の多様な在り方をこういった「大学ランキング」といった画一的指標によって評価するのは大いに問題があります

同様に、こういった指標大学運営に影響を与えることを避けるためにこの文章を書きました。

利害関係のある企業による評価を多くの専門家を抱える教育機関一方的に受け入れる今回の事態を不気味に感じます

民間企業による指標ではなく、きちんとした調査を行い大学研究所が協力をし、国もきちんと予算を出し、

大学の多様な魅力を踏まえた模範となるような「大学ランキング」に代わる大学紹介を行うべきです。

※「THE世界大学ランキング日本版2021」についての3つの問い

1.この調査実施ベネッセが行っているが中立性が担保されているか調査を行ったか

2.この調査自体に各大学ランキング付けする程の信頼性があるか調査を行ったか

3.貴大学には教育学部存在しているが、当調査に関して学内専門家から意見を聞いたか

「THE世界大学ランキング日本版2021」を実施したのはベネッセです。

http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2020/03/JURshihyo.html

しかし、ビュー数の多いYahoo! Japanニュースではそれには一切触れられていません。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cd2428370025a1ef13e92665b18d20dacf01ae17

この記事引用元高校生新聞は「株式会社スクールパートナーズ 」が運営しています

この企業入試運営支援入試広報委託サービス事業に含まれています

https://www.sclpa.jp/outline.html

要するに、大学入試に関わる企業ベネッセ)が大学ランキングを作り、

それを同じく大学入試に関わる企業が(スクールパートナーズベネッセ名前を出さず報道しているわけです。

一方で、2019年ベネッセ文科省大学共通テストにおける癒着疑惑報道や、

2020年ベネッセID問題報道を覚えている方も多いはずです。

https://biz-journal.jp/2019/12/post_133401.html

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75062?page=6


さらに、ベネッセベネッセ海外留学センターで生徒対象の校内セミナー教員研修事業として行っています

これは明らかに問題があります

ランキング世界版は国際性が7.5%と低いのに対して、日本版20%と比率が高く、日本版は国際性を重視している調査からです。

https://www.benesse-kaigai.com/teachers



日本の“偉い人”は世界大学ランキング日本大学ランク入りすることのみ重要視している傾向があるように思います

一方で、世界ランキング実態や、利害関係にある企業ランキング実施する問題は驚くほど指摘されていません。

例えば、本家の「THE世界大学ランキング」のタイムズハイアー・エデュケーション2020年8月海外留学募集学生住宅市場に参入しています

https://thepienews.com/news/the-moves-into-international-student-services/


さて、ベネッセ大学ランキング実施するのは勝手ですが、それが定着することは避けなければなりません。

大学の多様な在り方をこういったランキングといった画一的指標によって評価するのは大いに問題があります


問題のある指標を見てみましょう。

「THE世界大学ランキング日本版2020」ではスコア100の内20%を占める国際性を以下のように定めていました。

これを見ると、いくつか問題が浮かびます

例えば、大学の規模が大きければ当然、外国人学生比率は少なくなるでしょうし、

留学生向けに理解やす日本語で授業を行うことを重視している大学評価が低くなるでしょう。

多様な大学の在り方が、この画一的指標によって多様性否定する本末転倒になる恐れがあります

<国際性 20%>

 ⑬外国人学生比率(5%)

  在籍外国人学生数÷在籍学生

 ⑭外国人教員比率(5%)

  在籍外国人教員数÷教員

 ⑮日本学生留学比率(5%)

  日本学生留学生数÷在籍学生

 ⑯外国語で行われている講座の比率(5%)

  外国語で行われている講座数÷全講座数

さらに、スコアの8%を占める日経HRという企業の「企業人事担当者から見た大学イメージ調査」です。

『「TH世界大学ランキング日本版」の指標教育成果」に使われている』ことを売りにして、

以下のサイトで全調査結果を大学向けに22万円で販売しています

https://career-edu.nikkeihr.co.jp/category05/data.html

教育成果 16%>

 ⑪企業人事の評判調査(8%)

 日経HRの「企業人事担当者から見た大学イメージ調査」のデータ使用(2カ年分データ使用

 ⑫研究者の評判調査(8%)

 THEが世界大学ランキングのために各国の研究者対象実施した評判調査の結果から日本研究者日本大学について評価したデータ抽出

 「素晴らしい教育をしていると思う大学」を最大15大学挙げてもらい、大学ごとの得票数を合算(2カ年分データ使用


東京工業大学では以下のように、Web上にページを作り、学生に協力をするよう「お願い」していました。

大学により、学生協力を「お願い」する方法も違っていたようです。

ちなみに大阪大学では学生向けにメールが一斉送信されたのみで、問い合わせ先はベネッセのみでした。

この調査に関する大阪大学への問い合わせ先は一切記されていませんでした。

「THE 世界大学ランキング日本版)の学生調査にご協力ください」

https://www.titech.ac.jp/enrolled/news/2020/047746.html

このようなランキングが定着するとこの調査大学民間企業に有料でお願いする、

それに付随する調査を法外な値段で買うようになる、という事態につながる恐れがあります

これは個人的意見なのですが、入試に限らず、就活大学民間企業の在り方に大いに疑問があります

大学は今一度、民間企業距離を見直す時期に来ているのではないでしょうか?

こういった卒論だと通らないようなレベルのものに参加してしまった数多くの大学にも責任はあります

文科省との関係が深いベネッセだったので断れなかったのかもしれません。

しかし、大学改革の失敗を加味しても問わざるを得ません。教育機関としての矜持はどこにいったのですか?と。

もちろん、「世界大学ランキング」を無批判に持ち上げる“偉い人”やメディアにも問題があります

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