2021-03-06

アムウェイに救われた話

社会人2年目。やっと仕事にも慣れてきて、取引先にも顔と名前を覚えてもらえて、個人宛に仕事も回してもらえるようになった。

さあこれからどうやって頑張ろうか、なんて計画を立ててたところにようこそクソコロナ

当時企画してたそこそこ大規模なイベントが中止になった。最近取引先が遂に堪えきなくなり、バタバタと死んでいる。

何をやっても上手く行かなくなり、会社に行ってもネットで該当する助成金補助金を探しては、申請書類をひたすらに書く日々。

プライベートでも飲み会が総潰れ。旅行も出来ず、帰省も叶わずフォロワーとのオフ会もなくなった。

リモート飲みも最初は良かったものの、2回、3回となってくるとウルトラまらん。

全員ペットの自慢しかしねえ(ペットは犬も猫も鳥もトカゲも総じてマジで永遠に可愛かったが、奇声を上げて可愛がる酔っ払いがキショくなってきてつらい)

そんなクソタイミング畜生クレームのお知らせ。こちらに明らか非はないが、謝罪で丸く納まってくれるなら……ということで

報告を受けた退勤時間過ぎに大急ぎで先方へ謝罪に行った。

最寄駅から電車に乗ると快速急行目的地には止まりません。地獄か?

先方に謝罪が遅れる謝罪電話を入れ(この世はクソ)この時点でだいぶ限界だったのでテトリスして気持ちを誤魔化した。

電車で戻っていると大変時間が掛かるので、駅前タクシーを捕まえて先方まで直行することにした。

会社から先方までより流石に短い距離ではあるが、まあまあの運賃がかかった。

ちなみにレシートを何処かに落としてきたので経費で落ちませんでした。ウケる

そんなこんなでメンタル終人(おわりんちゅ)、無事先方に到着!

知らんジジイに見に覚えのない罪でしこたま怒られ、挙句には「マスクが気に入らない!」とまで言われる。何?

この度は大変申し訳ございませんでしたー、と最後に追加で謝罪を述べ、開放してもらった。

どっと疲れがくる。ここは都会。自粛ムードなんてとっくに廃れてしまったのかと思うほどの人混み。

頭のてっぺんから爪先まで、高級ブランドで揃えたカップルとすれ違う。

一方の私は、3年着古した安物のコートパンツまで全部GU恋人なんかもう何年もいない。

私は知らんジジイ罵倒される一方で、彼ら彼女らはシャネルだか何だか紙袋片手にお揃いのマスクデートする。

年齢は私とそう違わない筈なのに、何がこんなにも違うのだろうか。

だって頑張ってるのに、そう思ったら腹立たしくて虚しくて悔しくて涙が出てきた。

クソー!ふざけんなよ!といつもならこのまま安居酒屋に駆け込み、トイレ座席を往復しながら飲み散らかす。

が、コロナ禍。緊急事態宣言飲食店はチェーンでさえ、午後8時に営業終了する。虚しい。

下唇が千切れるぐらい歯を食いしばって涙を堪え、ズカズカ歩く。

負けてたまるかよォ〜!と思った矢先、パンプスの底がベロベロに剥がれました。

しかも両足。あまりにも酷い仕打ちに私の心は終わりになり、ちょっと入った路地植木に倒れ込むようにして座りました。

もう嫌〜!こっから電車で帰るってマジ?てか駅までまだ10分歩くってマジ!?都会、何!?

全部が無理になって、もうこのままトチ狂ってクソデカ車線の真ん中に踊り出るか!?とえぐえぐめそめそ。

そんなところに現れた、救済。女性の優しい声。

「どうしたんですか!?大丈夫ですか〜?」

目の前にわざわざ座り込んで私に視線を合わせ、心底心配そうにこちらを伺う男女2人組。

カップル……ではなさそうな、今時の無難ファッション

「体調悪い?水とか買ってこようか?」と男性タメ口だが確かに優しさのある、決して不快ではない声かけ

女性は隣に座って背中を摩ってくれている。

いや道端で泣いてる見ず知らずの人間にいきなり触るか?とも思ったけど、今はとにかくその優しさが染みた。

話聞くよ、と言われたがあまり話したくはなかったので、ちょっと今日一日大変で……とぼかして話す。

それだけでもその男女2人組はうんうんと大袈裟な相槌を打ち、慰めの言葉をかけてくれる。

都会にもこんなに良い人がいるなんて……と感動し、お礼をメチャクチャ述べた。

それからちょっとした雑談に移る。男女は社会人サークルの仲間らしい。年も私と変わらないぐらいだ。

社会人になってから友達とも疎遠になるし、コロナ禍で人との出会いが少ないのが寂しくて〜、と女性が言う。

近辺のカフェを数人で巡っており、お勧めカフェを聞かれたので、無難なところを答えた。

そこ、良かったら今度一緒にどうですか?と女性差し出したのは彼女LINEQRコード

カフェ巡りを趣味ひとつとしていた私は、喜んで連絡先を交換した。

それで彼らとは別れ、少し元気を取り戻しベロベロのパンプスで駅まで歩いた。

本当に良い人達だったなあ〜、良いカフェ探しとかないと。何人ぐらいで行くんだろう。友達増えるかな〜。

電車の中でウキウキしながら、誰かに伝えたくて幼馴染に連絡した。

『それアムウェイじゃね?』

『うちのねーちゃんそんな感じで勧誘されてズブズブなうです!ウザすぎ(笑)

それから、連絡先を交換した女性とは連絡を取っていない。

だが一度メッセージが送られてきた。

『あの後ちゃんと帰れた?大丈夫だった?』

オススメしてもらったカフェ、早速行ってきたよ!(写真)』

『美味しかったー!また今度、一緒に行こうね!』

なんて律儀でマメなんだ。しか写真撮るのうまくね?

これはアムウェイじゃなくて本当にカフェ巡りサークルなのでは?と思ったが

幼馴染から送られてきた内容を思い出し、返信をグッと堪えた。

お礼をきちんと言えなかったのが非常に残念ではある。

それぐらいなら返信しても良かったのかもしれない、と今でも少し思うが

ブロックしたしトークも消した。

でもあの男女には本当に感謝している。

あそこで声をかけてもらっていなければ、あのまま帰れなかったかもしれない。

もっと酷いことになってたかもしれない。

コロナ禍、ボロ布みたいな私を助けてくれたのは、間違いなくあの2人だ。

今の私にできるのは、あの男女と幼馴染のお姉さんが深みに嵌って破滅しないことを願うばかりである

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