はてなキーワード: ライオンキング2とは
今さらですがディズニーの『ベイマックス』を見てきましたよ。ええ。
CMや予告編を観たときは「まぁ、ディズニーの子ども向け映画だわな。退屈はしないけど飛び抜けた部分はない75点の答案だわ」と思っていたんですよ。作品で言うと『ライオンキング2』みたいな。
それが妙に評判良いんで見に行ったらズッコケました。限りなく100点に近い答案なんです。
しかも、表現として尖った部分が何もない。驚異的な映像が詰め込まれているわけでも、作家の狂気があるわけでもないし、アッと驚くストーリーテリングもない。なのに、頭からお尻までワクワクする映像が続くんです。
そう感じました。だって、スタッフの中には天才って一人もいないと思うんですよ。秀才の集団。それが勉強に勉強を重ねて、頭に汗をかいて、切磋琢磨して物凄いものを作ってしまった。彼らは「チーム主義」でモノ作りをしている。だって、スタッフロールに脚本家が20人もいるんですよ。
それに比べて、日本は「作家主義」で作っているんですね。宮﨑駿や庵野秀明、細田守をカリスマと崇め立てて、彼らの手足になるようなスタッフを配置して、彼らのイマジネーションを忠実に再現していく。
それがクリエイティブの正解だって、みんな思っていました。作家主義じゃなきゃ尖った映画なんてできない。民主主義的にモノ作りしたって、誰にも刺さらない凡庸な作品が出来上がってしまう。
ちょっと前までのディズニー映画ってそうでした。刺激の何もない砂糖菓子のような、甘っちょろい子ども向けの映画。無難で、可も不可もなくて、つまらなくはないんだけど、心に何も残らない映画。うるさい日曜日のガキを数時間黙らせて、疲れた親御さんがぐっすり眠るような、そんな映画。夕食までの時間を埋めるだけのデートムービー。
チーム主義なんてくだらない。作家主義じゃないとすごい作品はできない。『崖の上のポニョ』や『かぐや姫の物語』、『ほしのこえ』のような刺激的で面白い映画は、ディズニーは未来永劫に渡って作ることはできない。誰にも邪魔させず天才作家の想像力を最大限に発揮させることが、良い作品を生む出す唯一のプロセスなんだ。
それがすっかり覆されてしまっていた。彼らはチーム主義で「どうやったら面白いか」をみんなで必死に考え、ダメな部分を補強していく。日本は作家主義なので、監督の長所を反映した尖った表現をやるけども、短所も露骨に作品に出してしまう。ディズニーはチーム全員で短所を埋める方法を見つけてしまった。作品の長所も潰すことなく。
もう完全に終わったな、と痛感しました。ジブリ映画の脚本がイマイチなことの、もう言い訳しようがない。ストーリーテリングを切り捨てたからこの躍動感があるんだ、なんて言えない。少なくとも今あるアニメーション会社のすべては、ここまでの仕事はできないでしょう。一人の天才に寄りかかった表現を続けている限り、日本は終わりです。作品の短所をチーム主義で補える体制を作らないといけません。でも、すっかり組織ができあがった今の状態では無理でしょう。
「それはおかしい」と思う人は教えてください。日本のアニメーションがなぜ世界市場に打って出れないのかを。私は作家主義が監督の短所を作品に反映させてしまうからだと思います。あなたはどう思いますか。