死にたくなかった頃を思い出せないくらい長いこと死にたいと思っている。
まだ俺は20代で親もピンピンしているし、同世代の平均と比べてもかなり多めに教育費を使ってもらったし、病気やいじめがあるわけでもない今、急に自殺するのは親不孝にもほどがあると思うからとりあえず生きている。
あんまりにずっと死にたいと思っているものだから、自殺はずるい気がしてきているし。そういう理性的な判断でギリギリ死なないでいるのが俺の現状だ。
決定的な理由があるわけではない。ただ生活していると辛いことや苦しいことが多すぎるから早く開放されたい。死後の世界だって妄想にすぎないだろうとたかをくくっている。もしあったとして、それが現世よりも辛かったとしても、そんな不確定なことは今目の前にこびりついている辛さと天秤にかける次元にない。
昨晩、死にたい気持ちが束になって襲いかかってきた。これは月に2,3回の頻度で起こることで、ベッドの上で飛び跳ねるとか、部屋の中ででんぐり返しするとか、枕に顔をうずめて叫ぶとかしないではいられない衝動的なパニックだ。
俺はいつか自分の気が狂うと確信している。そもそも完璧主義者でプライドが恐ろしいほどに高いのに能力は低く怠惰で、しかも性格まで悪く、3秒前に見下した属性を自分が持ち合わせていることに気づいて発狂しかける。いつか必ず、ちょっと調子が悪いときに訪れた死にたさの衝動によって完全に気が狂うだろうと確信している。
気が狂うか、その前に死ぬかというところに立っている。
きっとこの文章もすでにある程度気が狂った空気を孕んでいて、人が読んだら読みにくさやキチガイの波動によって眉をひそめることもあると思う。俺はもともと文章には自信があった。賞をもらったこともあるし、周りから褒められることも多かった。だのに最近、気が狂うまでのスパンと程度が徐々に甚だしくなってきてから、まったく文章が書けなくなってしまった。どう書けば筋道立てて伝わるのかがもやがかっていてわからない。そんなふうに少しずつ死と狂気が近づいてきているのを感じるのだ。
昨晩の衝動はヤバくて、カッターで首を少しだけ切った。使いこんだ刃でもう鈍っていたし、本気で死ぬ覚悟があったわけでもないから、薄皮がぴぴぴと切れて血がちょっと滲んだだけだったが。そこに爪を立ててがりがりやった。死にたさに支配されながら、今もし死んだら部屋も整理されていない一人暮らしの人間が部屋で喉をかっきって死んでいて遺書も無いということになるから、警察も家族も何か面倒なことになりそうだと思いあたった。
こんなに衝動が年々強くなってきているのにも関わらず遺書すら無いのは由々しき問題だなと思って、とりあえず突発的に死んだときのために書いておくことにした。衝動が少し落ち着いてから書き始めたら、ろくな遺書が書けないことに気づいた。
なんの決定的な理由もないから、どう読んでみても俺の死んだ理由がわからない。「皆には些細なことが俺にはひどく辛いみたいで、ただ軟弱者なだけなんだけど、生きてみても改善も望めず、ずっとひたすらに苦しかった」という迫真の名文まで生み出された。俺の死にたい理由はこう書く以外に思いつかないのだが、家族としてはさすがに納得いかないだろう。満足いかないな、と思いながらとりあえず名前と日付を書いて、釈然としない気持ちになりながら寝落ちした。
俺は死にたい衝動と常に付き合っているが、理性の部分は必ず生きようとしている。本気で死にたいわけではないのに、本能で死にたがっている。だからせめてまともな遺書を残すというのは新しく見いだせた革新的な目標になる。こうやってギリギリのところで何か理由をつけて怖がって踏みとどまって、そうしているうちになんだかんだで長生きできたらたいへんめでたいことだ。自殺以外で死んだら、葬式というよりも皆勤賞の授賞式という形で儀式を行ってほしいものだ。
自分が中学生の頃に書いたけど用を為さなかったやつがあるんで、パクっていいですよ。全文を掲載します 「あなたがたが理由を勘繰っても当たりはしないから、納得しようとするな、...