その日は給料日で余裕があった。
店の中で椅子に腰掛け気だるそうに雑誌を読んでいる店主に声をかけて、サボテンを買った。
レジでサボテンを袋に入れてもらっている間、なんとなしに気恥ずかしさが湧いた。照れ隠しに「プレゼントなんすよ」と言ってみた。
「へえ、誰に?」と店主。
「サボテンはね、人を選ぶよ」。目を合わせず店主がつぶやいた。
きっと喜ぶよ、とか、センスいいね、とか、客商売ならもっと気の利いた一言もあるだろうに、と思ったが、妙に納得した。
「プレゼントです」答える俺。
「なんで?」と彼女。
テンションの上がらない彼女に内心焦りながら「なんとなく、似合うと思って」と言葉をつなげた。
その瞬間彼女の表情がくしゃっと崩れた。
「うける」
笑顔が見れて、ほっとした。
コンビニのプリンを食後に食べながら、彼女とサボテンについて話をした。
店主に教えてもらったはずのサボテンの種類はすっかり忘れた。彼女は「サボテン」では味気ないからと「トゲピー」と名付けた。
そういって彼女は少し前かがみになって笑顔をみせた。彼女は笑うと左右非対称で、右目のほうが少し細くなる。そんな顔が可愛いと思った。
サボテンを買って1年後に入籍。賃貸の更新にあわせてもう少し広い家に引っ越した。もちろんサボテンも一緒だ。
トゲピーに話しかけながら「きょうもいい天気ですね」「チョゲッッ(裏声)」なんて一人芝居をしている妻は微笑ましかった。春の日にはじめて植え替えをした。広い植木鉢にうつったトゲピーはすくすくと成長をした。
それから何度か鉢植えをおこない、トゲピーは俺の腿から腰くらいの大きさになり、妻は2児の母、俺はしがないおっさんへと変貌した。
子どもたちは習い事の合宿に行った夜、久しぶりに夫婦でゆっくりする時間ができた。
晩酌をしながら話をした。子どもたちの話が一区切りついたあと、ふとトゲピーを横目で見た妻がつぶやいた。
「実はいきなりサボテン買ってきて、なんて勝手なんだろうって思ったんだよ」
その言葉に心底驚いた。表情を察してか、妻が続けた。
「絶対お世話するの私だろうなって思って」
ぐうの根も出なかった。実際、サボテンを買ってからしばらく放置していたのは俺だった。水やりも妻がかいがいしくやっていた。
好きでやってるのだと思った、と弁明した。
妻が目を細めて、話をした。
「命だからね。最初は義務感だった。でも、トゲピーって名前つけてから、あなたが時々『お、トゲピー元気だな』とか話しかけてるの見て可愛いなって思ってたの。それと、私が妊娠しているとき、土いじりは危ないからって植え替えを率先してやってくれて、この人とだったら子育てもできそうだなって安心したんだよね」
妻とそんな話をしたことがなかったので、俺はなんと言えばいいかわからず逡巡していた。多分相当変な顔をしていたんだと思う。少し酔っているのか、頬を赤く染めながら妻が続けた。
妻は少し前かがみになってはにかんだ。左右非対称で、右目が細くなる笑顔。
10年以上前に聞いた店主の声を思い出す。人がサボテンを選ぶんじゃなくて、もしかしたら俺がサボテンに選ばれたのかもしれない。そう思うと、トゲピーはなかなか見る目がある。俺はトゲピーを見た。軒先で売られていたころより何十倍も大きく成長した彼を誇らしく思い、ビールを飲み干した。
サボテンのステマ
これは創作。サボテンはそんなに水やりしなくていい、ていうかしちゃダメ、枯れるから
ほんの小さな出来事に 愛は傷ついて
増田は創作ショートショートの投稿場所じゃないんだぞ
え?違うの? 「日記だ。当然のことながら」って書き出しにあればいいんじゃないの?
見落としたのかと思って見返したらねーじゃねーかクソが
むかし買ったサボテン。久しぶり実家に帰った時にみたらめちゃくちゃ大きくなっててビビった
10年以上前にサボテンを買う→結婚→今は子供たちが合宿で不在 二人目の子供が10才で習い事の合宿行ってると考えると(それくらいじゃないと親不在で合宿行けないだろう)、サボテ...
給料日に100円のサボテン買うなよ
これ
ワイはサボテンを大事に世話して1年くらいして造花やと気づいたやで
独り者の俺にはトゲのある話だ
「その日は給料日で余裕があった」で100円のサボテンは草
昭和30年の話だぞ
妻は2児の母、俺はしがないおっさんへと変貌した。 なんだ、種は別売りのやつか。
サボテンが花をつけている素材はニコニコなんだよな いつになったら再開するんだろう…😟
もっと怪文書感だしてホラ
どこに行くのこんな雨の中
懐かしい
おめでとう!トゲピーはトゲチックに進化した!
「水やりも妻がかいがいしくやっていた。」という文を「頻繁に水をやっていた」だと解釈するブコメの国語力よ
結婚して子持ちのおっさんをしがないとは言わないんだよ 弱男を遠回しにばかにすんな 高年収なのに弱男をなのってバカにする増田の野郎とお前も同じだよ 低俗なやつ 消えろ
気取りすぎた文体がキモすぎる 自分語りとしても小説としてもクソ駄作 ぜんぶやりなおせ
私の知識では、前屈みになるというのは、チンポが勃起していることの文学的表現のはずです。妻が少し前屈みになるというのは、チンポは男性に特有の器官である以上、不可解です。 ...
イイハナシダナー
「彼女にサボテンをプレゼントした」という増田が人気だ。 https://anond.hatelabo.jp/20240612134439 この記事自体はどうでもいいんだけど、コメ欄がまあひどい。コメ欄読んでると頭がくら...
買ってきた当人は世話をするのをサボッてんのか
最後の一文は蛇足だけど、ドリカムの歌詞のように綺麗だと思いました。幸あれ