2023-07-07

ビッグモーター不正請求事件保険の「幹事会社」について記しておく

ビッグモーター不正請求事件にわかに注目されている損保ジャパン

なぜかというと、ニュース記事に「ビッグモーター幹事会社である損害保険ジャパンは~」というくだりがあったからだ。

で、幹事会社が何なのかよくわからない人も多いと思うのでここに記す。

自動車購入時に保険加入する場合自動車会社ディーラーや、ビッグモーターのような中古車販売会社など)経由で加入するケースと、それを経由せずに個別保険契約するケースの2通りがある。

今回の幹事会社の件が当てはまるのは前者のケース。

自動車会社経由で保険加入する場合、その自動車会社保険契約者となる「団体保険」の形となり、通常、複数保険会社が共同で保険契約を引き受ける。これを「共同引受」という。ビッグモーター場合損保ジャパン三井住友海上東京海上日動の3社。なお、自動車エンドユーザーは「被保険者」となる。

共同引受メリットは何よりも「リスク分散である契約を1社に集中させないことで、仮にビッグモーターで購入した車に事故が相次いで保険請求が集中しても3社で保険金支払を分散させることができるし、一方で保険会社のほうが1つ潰れたとしても他の2社に契約移転させることができる。

その共同引受会社は「幹事会社」と「非幹事」の2種類に分けられる。わかりやすく言い換えると「代表会社」と「それ以外」だ。https://lify.jp/words/%E5%B9%B9%E4%BA%8B%E4%BC%9A%E7%A4%BE/

幹事会社は非幹事会社から業務委託を受けて非幹事会社分の契約管理事務保険収受や損害調査など)を行うことになる。単に忙しくなるだけに見えそうだが、決して安くない業務委託料をもらえることになるので、売り上げとしては大きくプラスになる。

例えば、100億円の保険収入があり、それを5:5で幹事会社と非幹事で分担するとしよう。保険会社事業費率(契約管理事務にかかる費用)はだいたい25~30%なので、30%を委託費として計上すると仮定すると、

 幹事会社の売上:保険収入50億円 + 非幹事分の事務委託費15億円(50億円×30%)= 65億円

 非幹事の売上 :保険収入50億円 ー 幹事会社への事務委託費15億円 = 35億

という構造になる。保険収入自体は同じ規模なのに、実際の売上は2倍近くも差がつく。つまり幹事会社は「オイシイ」のだ。

から、共同引受になりそうな大口保険契約の話が出てくると、保険会社は躍起になって幹事会社になれるよう一生懸命顧客企業に対して提案ロビー活動をしてくる。増田も以前ちょっとだけその提案にかかわったことがある。人脈と寝技学歴特に出身大学)がものをいう世界だが、本筋ではないのでこの話は割愛

ここから増田の推測だが、損保ジャパンビッグモーターに対して「幹事会社」の地位を守るために抜け駆けをしたのではないかとみている。損保ジャパン引受分でしか取り扱いを再開していないので一見同社が損をするように見えるが、実は逆だ。

また、水増し請求が横行していたことについても幹事会社であることで説明がつく。その分事務委託手数料が増え、損保ジャパンの売り上げが増えるからだ。

この「幹事会社」という仕組みは、特定会社がずっと続けられると(旨味が少ない)非幹事会社撤退や、幹事会社主導による不正癒着発生のリスクがあるため、数年スパンでローテーションすることも多い。件のビッグモーター報道を見る限りローテーションはしてないようだ。

仮にこの推測が当たってたら、損保ジャパンはしばらく業務停止になるんじゃないかなあ。少なくとも金融庁から呼び出し食らうのは確実だ。事態の推移を見守りたい。

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