先日ドラゴンクエスト10オフラインが発売された。
これにはフレンドシステムが実装されている。オフラインなのにフレンドとは?って感じだけど、このフレンドシステム、ちゃんとオフラインでサーバレスに稼働している上に仮に20年後であったとしても問題なく動作する、ちょっとすごいシステムだった。
これはプレイヤー間でキャラクターデータと依頼書と呼ばれるアイテムをやりとりするものだ。
他人が公開しているフレンドのじゅもんをゲームに手入力すると、その人のキャラクターとそのキャラが持っている依頼書と呼ばれるアイテムが手に入る。依頼書というのにはミニクエストが書かれており、それをクリアすると報酬アイテムが手に入る。
ただし、ゲーム内でプレイヤー自身が依頼書のクエストをクリアすることはできない。その代わりに集めたフレンドのキャラクターを使役して依頼書のクエストをクリアしてもらうことになる。
そうして報酬を手に入れることができるというのが、ドラクエ10オフラインにおけるフレンドシステムだ。
何がすごいって、このフレンドのじゅもんシステムがすごい。
このシステムはおそらくドラクエ9のすれ違い通信で宝の地図を集める要素の弱点を克服しながら実装されたものだ。
ドラクエ9のすれ違い通信の何が弱点だったのかというと、人口の多さが正義となってしまった点である。プレイヤーとすれ違って自動的にデータをやりとりするものだが、そのプレイヤー人口が少ない地域やドラクエ9の発売から何年も経ってから遊ぼうとしても、すれ違う相手がいなくて宝の地図が手に入らないのが難点であった。
ドラクエ10オフラインのフレンドシステムは、すれ違いで自動的にデータをやりとりするという利便性を捨てる代わりに、どのような形でもフレンドのじゅもんさえ伝われば場所の制約も時間の制約も乗り越えられるように設計されている。
また、ドラクエ10オフラインはマルチプラットフォームで発売されているが、異なるプラットフォームでのデータのやり取りも可能だ。
そもそもフレンドのじゅもんはどのようなものなのか、もう少し詳しく説明する。
フレンドのじゅもんはひらがな46文字から構成される文字列で、これにキャラクターデータと依頼書のデータが信号化されて入力されている。ざっくり計算だが、「を」「ん」以外のひらがな44文字と濁音20文字、合わせて64文字を利用しており、6bitで表現できるのが0〜63までなので一文字あたり6bit、これが46文字あって34.5バイトのデータ量を詰めることが出来る。
これを発信側のプレイヤーが公開し、受信側のプレイヤーはゲームに手入力することで復号して発信側のプレイヤーのデータを手に入れる。
この方法なので、双方向の通信ではない。しかしその分、ゲーム自体はオフラインかつサーバレスでも問題ないようになっている。
この時代だとフレンドのじゅもんは主にネット上でやり取りされているが、このおかげで住んでいる地域のプレイヤー人口に関係なくキャラと依頼書を集めることができるし、仮に20年後にこのゲームをプレイするとしても、じゅもんがログに残っていればやはりキャラと依頼書を集められるのだ。
仮にネットのログではなくとも、例えばフレンドのじゅもんを集めた小冊子などが残っていても同じことができる。
ただしデメリットとして、プレイヤーに面倒な46文字の手入力をさせるというものがある。もしこのシステムを他のゲームが採用しようとしても、この点だけで却下されるだろう。
かつてこの面倒なシステムを採用していたという前例があるし、良くも悪くもドラクエのネタとして語り継がれているシステムなので、プレイヤー側も受け入れる下地がある。
これがこのフレンドのじゅもんの一番すごいところかもしれない。
データは機械から機械へ直接伝達するのが当たり前のこの時代に、プレイヤーによる手入力という手段を介してデータを直接伝達する場合に発生する問題を全て解決してしまった。