2021-06-04

なぜ新聞は「自民党幹部」と書くか

以下に述べることは政治家とか新聞記者回顧録によく書いてあることで、昭和平成政治ウォッチャーにはおそらく常識的な話。今は意外に知らない人が多いようなので書く。

端的にいうと、これは「記者会見やぶら下がりではなく、内輪の懇談で取材した」という意味である

要職にある政治家は、担当記者を集めた内輪の懇談をよくやっている。そこで喋る内容については名前を出さず、「自民党幹部」「政府首脳」などとぼかして記事にするのが暗黙のルール。また、記者とのちょっとした雑談などにも同じルール適用される。名前を出さないかわりに、政治家がざっくばらんに「本音」で話してくれるという仕組み。

記者側のメリットはもちろん独自取材源で記事を書けることだが、政治家の側には「名前を出さずに観測気球を上げられる」というメリットがある。世間一般に対しての観測気球という意味もあるが、永田町の住人(同僚の政治家秘書、各省庁の上層部など)に向けている面も大きい。

というのも、永田町の住人というのは一般人よりも新聞を熱心に読んでおり、かつ「政府首脳」などといった新聞記法にも通じているため、「これは誰それが言った」「誰それは、こういう意図発言している」と即座に文脈理解できるのである。要は、学校裏サイト新聞にアウトソースしているようなものだ。

こうした取材方法には、当然ながらいくつも問題がある。

政治家記者との癒着

懇談は、政治家による記者へのサービス意味合いを持つ。「忙しいのに時間を取ってくれた」「言いにくいことを言ってくれた」という恩義には人は弱いものである。有能な政治家はこの「持ちつ持たれつ」の関係を利用し、マスメディアに出る情報コントロールする。

大手メディア政治家囲い込み

このインナーサークル独立系メディアフリーランスは立ち入ることができない。よく言われる記者クラブの弊害というやつ。

発言責任を誰も取らない

オフレコでの発言は、誰が言ったのか明示されない。よって誰も発言責任を取らない。これは裏を返せば、記者の匙加減で発言を誇張・歪曲しても厳しく追求されないということでもある。せいぜい次の懇談で「俺、あんなこと言ってないよ」と苦笑される程度だろう。つまり記者がその気になれば、フェイクニュースに限りなく近いものを流すこともできる(この意味石平氏の指摘は正しい)。

記者会見形骸化する

懇談などの「裏」で情報を取れるのであれば、「表」の記者会見政治家を鋭く追及する必要はない。首相大臣記者会見大手メディア記者的外れ質問が多いことと、この問題根底でつながっている。

情動忖度政治が動く

偉い人の「お気持ち」を忖度して政治が動く傾向を助長する。今回の件でいえば、もしかすると尾身会長自民党幹部から直接何も言われず、周りの人から幹事長政調会長総務会長)、怒ってるらしいよ」と伝えられているかもしれない。いや直接言えよ。

こういった諸々の問題があるので、この取材スタイルは手放しに褒めてよいものではない。今の時代に合うとも思えないし、そろそろ廃れていってくれないものかと思うが、どうなんだろうね。

  • ???「今の最後の言葉はオフレコです。いいですか、みなさん、いいですか、『書いたらもうその社は終わり』 だから。」

  • といっても、そういうのがない存在でメディアのすることっていうのは、「公式が放映した番組の内容をまとめる」とか「他のサイトのインタビューを転載する」とかになるよ。  エン...

    • >大本営発表は少なくともフェイクニュースではない ・・・かつてフェイクニュースでなかった大本営発表があっただろうか?(反語)

      • 「軍部は○○○○と公表した」と書いている限りはフェイクニュースではない。

  • 棘見て書いたんだろうけど石平のツイートだいぶ前のだぞ

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