庵野よ、聞け。
お前は「卒業式」をやってるつもりだったんだろうが、みんなはとっくに『新世紀エヴァンゲリオン』なんて作品は卒業してたんだ。
お前が作ったあのどうしようもない投げっぱなしの『Air/まごころを、君に』とかいうエヴァ完結編があったろ?
お前が宮村にフられたからってアスカをズタボロにしたり、自分の作品を否定したオタクへ意趣返ししようとしたあの作品だよ。
お前があの映画でみんなに伝えた「現実に還れ」というメッセージはきちんと俺たちに伝わったよ。
アニメや漫画の登場人物たちに「自己投影」することは無くなった。
「感情移入」はするかもしれんが、キャラクターを自分だと思い込んだりはしない。
キャラクターはキャラクターのまま楽しむし、キャラクターを応援する。
アニメや漫画、ゲームのストーリーを自分の人生だと思うことだってない。
エンタメはエンタメだって、作り物だってそれを分かった上で楽しんでる。
「まるで自分が描かれているようだ!」と錯覚したお前の素晴らしいエヴァからそうやってみんな卒業していったんだ。
なんて書いてたか覚えてるか?
『誰もが楽しめるエンターテイメント映像』を目指すって書いてたんだ。
もう卒業したエヴァだったけれども、お前の私小説じゃないエンタメ作品としてのエヴァが見られるかもと思ってワクワクしたよ。
ついでに終わって8年かそのくらい経って久しぶりに語りたくなったのもあったよ。
序は良かったよ。
あの時の映像を今風にするとこうなるのかーって素直に感心した。
破も良かったよ。
中盤まで第十二使徒以降暗くなった本編をエンタメに寄せるとこうなるのかと感心して、最後のシンジが決意を決めるところはEOE以降なんどもシンジがそうなる二次創作を書いてきた俺には報われたような気持ちになったよ。
「同窓会」は大盛り上がりだ。
なんでか知らんがそこから入ってきた奴らに得意げに昔のお前の投げっぱなしを語ったりしたよ。あの投げっぱなしも良い思い出になってたんだ。
昔から見てたやつらは、エヴァの後にハマったのは何か?で大盛り上がりしたよ。
もちろん俺も好きだったよ。
良い同窓会になるって本気で思ってたんだ。
ゴジラだ、ウルトラマンだと好きな道で遊べそうなのに「早くエヴァを作れ」と言うオタクが嫌だったんだろ?嫌いだったんだろ?
ムカついたんだろ?
ガイナとエヴァの権利関係で揉めて、「エヴァンゲリオンがあるからダメなんだ」と思ったんだろ?
今まで一人のキャラクターだったシンジにまたお前が乗り移ったのをQで見たよ。
なにをしてもうまくいかないと厭世的になってる。
Qからきちんと伝わってきたよ。
お前、鬱だったんだな。
そしてシンだ。
嫁ちゃんという現実に救われたお前にとって、虚構のエヴァでオタクを縛ってしまったのを申し訳なく思った。
作中のシンジの言葉を借りるならば「落とし前」をつけるべく「卒業式」をやろうとした。
しかも二度と戻ってくる気力が湧かないように全部を瓦礫に戻して。
現実を生きてきたんだよ。
そうじゃなかったのはお前だけだ。
エヴァの監督と紹介されることが多かったからなのか、エヴァ以上を作れなかったからなのか「エヴァの呪縛」に苦しんでたのはお前だけだ。
お前だけだよ、未だにキャラクターをキャラクターと思えずに自分や誰かのアバターだと思ってるのは。
昔好きだった女の宮村=アスカを、作中のオタクだったケンスケに渡したのは俺たちへのご褒美のつもりだったのか?
庵野=シンジが昔好きだった宮村=アスカに「好きだった」って言うところなんか気持ち悪くて泣きそうだったぞ。
みんな幸せにしてたラストの駅のシーン、アスカだけ一人だったのは離婚してる宮村への当て擦りか?
そんなにフラれたのがムカついたのか?
まぁもうどうしようもない。
パンフの冒頭あいさつ、カントク君が最後の最後に奥さんへの感謝を述べてるのキツかった