2020-05-13

(社説)コロナと日韓 危機をバネに協調を

 新型コロナ禍の世界的な広がりにどう立ち向かうか。アジア代表する自由主義の主要国として、日本韓国は共同歩調に乗り出すときである

 文在寅(ムンジェイン)大統領就任から3年を迎え、今月の演説コロナ対策の成果を強調した。韓国の徹底した検査と追跡、治療体制が、国際的成功例として評価されていることを意識した。

 任期5年の韓国政権は、後半は人気が下がるのが通例だ。文政権も一時は陰りが見えたが、最近調査では7割以上の支持率へと息を吹き返した。感染症対策への国民の信頼が強い追い風になったのである

 ただ、韓国も偶然に対策を編み出したわけではない。5年前に別のコロナウイルスで起きる中東呼吸器症候群(MERS)が流行し、多くの被害を出した教訓の上に構築されたのが今の体系である

 個人情報の扱い方など、国によって考えや事情は異なる。韓国でも規制の緩和後に再び集団感染が起きるなどしており、最終的な評価はまだできない。

 だとしても、韓国経験対策が、日本を含む国際社会重要実例情報をもたらしているのは間違いない。

 ところが今の両国間では目に見える協力が乏しく、嘆かわしい状況が続いている。

 協力を阻む背景の一つは相変わらず歴史問題と、それに起因する折から対立である

 両国間には、韓国から医療物資日本に送ろうとする動きがある。だが、韓国政府は一部市民による反対運動意識せざるをえない状況だ。一方の日本政府も、韓国への支援要請に慎重な姿勢を崩さない。

 深刻な事態の中で、不毛駆け引きに陥る余裕はない。両政府は防疫問題政治化を避けねばならない。体面にとらわれず情報を共有して物資を融通し合い、危機を乗り越えるべきだ。

 文氏は今回の演説で、世界感染症対策リードする目標を示した。安倍首相も先月、東南アジア諸国連合日中韓会議で、「ASEAN感染症対策センター」の設立提案し、情報共有の大切さを強調した。

 中国感染源に近い最前線の国として、日韓両国国際貢献を誓うのは評価できる。その実現のためにも両国間で知見を高め合うために担当閣僚同士の対話を始めてはどうか。

 先の韓国総選挙圧勝した文政権は、残り任期対日政策での大胆な決断をするべきだ。安倍政権も、昨年導入した対韓貿易規制強化を直ちに取り下げ、関係を立て直す必要がある。

 この危機をむしろ日韓関係リセットの契機にする。そんな知恵を絞ってもらいたい。

安倍政権も、昨年導入した対韓貿易規制強化を直ちに取り下げ、関係を立て直す必要がある。

ほんと悪い意味でブレないよなこの新聞

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