世の中の男を虜にし続けている西野七瀬や1000年に1度の逸材の橋本環奈に似ていると自称するアカウントが量産され、泡のように消えてはまた増える。
このようなイタチごっこは、所詮嘘つきの心を満たすだけなのだが、連鎖は止まらない。
「嘘松」や「虚言垢」と称される前から、ネットには数多の虚言癖が存在するが、ここでは、私のかつての友人であった、虚言癖のAちゃんの話をしようと思う。
スタイルが良くて、ピアノが弾けて、足も速くて、真面目で優しいAちゃん。なんでもできる子だなと思っていた。
中学生で隣のクラスながらも同じ学級委員会に入り、関わる機会は少なくなかった。
ある日の放課後、Aちゃんに泣きながら「いじめられていて死にたい」相談された。
詳しく聞くと、私のクラスメイトに殴られたり、暴言を浴びせられたそうだ。
当時、責任感の人一倍強かった私は、Aの異変に気づけなかったことやクラスメイトによるいじめを見抜けなかったことを非常に悔いた。
「私も守れなくてごめんねAちゃん」
そう泣きながら告げると、彼女は日記を渡してきた。どうやら日記をつけることが日課のようで、いじめのことが事細かに書いてあった。
他にも、同じ部活のBくんに告白されて付き合っていること。大好きな祖母が亡くなったこと。祖母が亡くなった上にいじめられて死にたいこと。Bくんには相談できないこと。たくさんのことがAちゃんの細くて綺麗な、いかにも習字を習っている人の字で綴られていた。
先生は動かないだろうと思った私は、自分で証拠を集めることにした。いじめを認め、謝らせることが先決である。まずいじめの主犯格の子から問い詰めてみた。
当然「何も知らない」と言っていた。しかし、その子は暴力を振るったとする日に最初から最後まで部活に出ている証言。Aちゃんが殴られた現場を見た人はいないどころか、殴られたらしい教室には人が何人か残っていたという証言。
嫌な予感がした。辻褄が合わない。でもAちゃんはそんな嘘をつく子ではない…
証拠探しに励む中、Aちゃんが普通の子ではないと気付いてしまった事件が起きた。
不要物検査中、Aちゃんのロッカーから私が見せられたのと同じ内容の日記が複数冊出てきたのだ。別の日記ではなく、同じ内容の、祖母の死から恋、いじめまで綴られた同じ日付と内容の日記が何冊も、だ。
凡そ常人のすることではない。理解ができず恐怖した。不要物検査をしていた風紀委員は、化け物に怯えるような声と顔で話してくれた。
事の顛末。Aちゃんの虚言癖が発覚し、私はAちゃんと縁を切った。騙されていたのが嫌だったのよりも、普通の子ではなかったAちゃんが怖くて仕方なかった。
彼女は息をするように嘘を吐いていたことになるが、泣きながら相談したAちゃんも演技には見えなかった。
つまり彼女の中では日記は全て真実なのだ。祖母が本当に亡くなっていたかは定かではなかったが、BくんはAちゃんに告白された側で、虚言のことを伝えると「付き合って1ヶ月しないで別れてよかった」 Bくんは震えながらそう言った。Aちゃんの中ではまだ続いていることになっていたことは追い討ちをかけるようで言えなかった。
Aちゃんに「嘘だったんだね」と告げた時、「みんなに私を見て欲しかったの」
そう言っていた。
「私を見て欲しいから」という理由で嘘をつくのはAちゃんも嘘松さんも大量の西野七瀬似美白透明感爆発ブルベ美少女たちも同じであろう。
虚言垢をキャッキャと楽しんでいる人は、周りに虚言癖を持たない素敵な友人達を持った人なんだなと思う。
私はもう虚言癖に振り回されるのはごめんだが、ついついバズる虚言垢達を見ずにはいられない。怖いもの見たさなのである。
ただ一つ加えるとすれば、彼女達への「嘘乙!」「はい論破」は、煽ってる側からすれば顔を真っ赤にしている姿を思い浮かべるが、実際は火に油で、彼女達は悲劇のヒロインを脚本通りに進められてご満悦なのである。
「虚言癖」が笑いとして消費される日が来ようとは、Aちゃんに恐怖したあの時の私は一切思わなかっただろう。
不要物検査ってのが時代を感じる。 しかし同じ内容ってのが虚言癖とつながらなくて意味が分かんないね。