2018-01-29

金融シンギュラリティ

 今、仮想通貨話題である。この仮想通貨が将来現実通貨に取って代わるようになる時点を金融シンギュラリティと名付け、その可能性について語りたい。

 まず、過去においての通貨について考えてみよう。

 もともと通貨は金を中心とした貴金属で成り立っていた。金そのもの価値があるので、それと物品を交換していたのだ。しかし、ある時点から金そのものをやりとりするよりも金と交換できる券をやりとりする方が便利だという発明がされる。それが金本位制に基づく通貨の始まりだ。この時点でのは通貨仮想金と呼ぶことができるだろう。

 そしてそのうち、別に金本位制ではなくても通貨に信用があれば問題がない、ということに気がつく。この時点で、今まで仮想金であった通貨仮想ではない財産となったのだ。

 さて、その通貨の信用であるが、これは何によってなされているのだろう?それは、国が通貨を発行し、これが様々な物品やサービスなどと交換できる価値のあるものだ、と宣言し、国民もまたそれを信じることで通貨の信用は担保され、通貨財産たり得るのだ。

 では、現在国家によって保証されている通貨の信用であるが、根本としては信用があればいいのであって、それを国家保証ではなく、人々の信頼のみによって保証することはできないか?それが仮想通貨の発想の原点だ。

 だから仮想通貨は人々が信頼できる仕組みというもの内包している。それがブロックチェーンによる取引記録の透明性だ。

 通貨というのは所有者がいる。ある所有者からどの所有者に通貨が渡ったかということを記録する取引履歴が明快ならば、物理的な通貨が目に見える形で存在しなくても、ある所有者が持っている通貨いくらなのかということがわかる。現実通貨が、取引履歴不明瞭でも物理的に所有している者が明確ならばいいということとは対象的だ。仮想通貨物理的に存在しないために、所有者を表すには取引履歴がどうしても必要なのだ。この点で、取引履歴というもの仮想通貨命綱だということがわかるだろう。

 そしてその命綱である取引履歴、これは当然個々人が勝手に主張することができない仕組みになっている。正確には、個々人による取引履歴の主張はできるが、それが第三者によって承認されないと正規取引履歴として記録されない。ジャイアンのび太から仮想通貨をもらったかのび太仮想通貨は俺のものだ、と主張したところで、それを周りの人々が承認しないとその仮想通貨のび太の手元からジャイアンに移ったという事実取引履歴は記録されない。なので、ジャイアン仮想通貨を持っているというようには見なされないのだ。

 みなさんは、みんなが取引履歴監視することで保証される取引履歴、つまり所有者を表す記録を信用することができるだろうか?仮想通貨のものを信じられるだろうか?

 もしできるのならば、次のステップに進もう。とはいえ、だいぶ話は飛躍する。

 仮想通貨が人々に信頼され、実際の通貨と変わらないかそれ以上の利便性を持った使い勝手を獲得していったらどうなるだろう?具体的には、商取引仮想通貨が直接使えるのが当たり前になるなど。

 そのとき現実通貨価値仮想通貨と比べて下がっていくと考えられる。

 そして現実通貨価値ゼロになり、仮想通貨が完全に現実通貨に取って代わる時点がやがて現れるかもしれない。

 その時点を、金融シンギュラリティと呼びたい。

 では、金融シンギュラリティに到達した時点で何が起こるのか?

 まず、既存政府による金融コントロールが全く不可能になるだろう。それどころか、国というものがなくなってしまうかもしれない。

 なぜなら、現行の通貨は国による保証によってその価値担保されているが、その価値ゼロになるということは国に対する信頼もゼロになるということだからだ。加えて、仮想通貨には国境もない。そのため、国が仮想通貨による税収を始めてなんとか存続する、というシナリオも期待薄だろう。

 そんな世界になってしまったら、所得の再分配ほとんど行われなくなるだろうから近代国家が出来上がる以前のレベルにまで貧富の差が拡大するだろう。もしかしたらそれよりも酷いかもしれない。

 個人的には、金融シンギュラリティが訪れた後の世界アナーキズム支配されたディストピアになるようにしか思えない。

 しかし、仮想通貨はすでに社会に現れてしまった。それをなくすことはもうできないだろう。

 同時に、現実通貨仮想通貨に対抗して価値を維持し続ける世界というのも個人的には想像しづらい。いつになるかはわからないが、金融シンギュラリティはやがて訪れると思われる。そしてそれは、人類史を大きく書き換えることだろう。

 そんな時代に生きていることは幸運なのか不幸なのか?

 それはわからないが、仮想通貨というもの人類にとっての福音になるよう願ってやまない。

  • 金融政策とか政治的な問題から結局国が管理する仮想通貨が生まれてまた人々の手から離れることになりそうだがな もう一段階なにか仮想通貨のシステムの変化がないとシンギュラリテ...

    • 仮に国が管理する仮想通貨が生まれたとしても、中央集権的な通貨ではない通貨という発想自体はなくならないわけで、もう一捻りした感じの非中央集権的通貨が現れて、やっぱり金融...

      • 規制をどうすり抜けるかが問題かね まあ非政府通貨が完全に弾圧される状態はシンギュラリティを経るまでもなくディストピアな気もするけど

        • バランスの良い規制がかかって、政府通貨と非政府通貨が仲良く共存できる世界が理想かも。 中国は仮想通貨に規制が入ったけど、あの国は電子マネーが日本よりも発達しているらしい...

  • ブロックチェーンだのなんだの言っても、結局はブラックボックスでしかないからなぁ

  • 金そのものに価値があるので、それと物品を交換していたのだ。 はいダウトー 金なんて希少価値がなければ重いし柔いし全然役に立たない代物じゃん 人々の信頼のみによって保証...

    • 金なんて希少価値がなければ重いし柔いし全然役に立たない代物じゃん いや、実際には希少価値があるやん。金が通貨だった歴史を否定するとかおかしい。 仮想通貨の信頼の泉源は...

  • 偽札を作られないのと、強制通用力があるのとは全く違う。

    • 強制通用力、知らない単語だったんで調べたんだけど、一般受容性だけあれば実は強制通用力は必要ない、という見方は成り立たない?

      • 可能性はゼロではないけど、一般受容性を手に入れるコストが高すぎると思う。

        • 一般受容性を手に入れるコストってのは社会的インフラの整備にかかるコストってことだよな。 もし仮想通貨が一般受容性を獲得できないのなら、今ある仮想通貨は電子のゴミクズにな...

          • 財産として多くの支持を集めている最も有力な何か(現状だとビットコインか) 全く支持は集まってない。 本気で支持してるのはアナーキストくらいでしょ。

            • 本気で支持してないけどビットコインに金を出してるやつらは単に投機で儲けたいギャンブラーか。 ババ抜きゲームに精を出してご苦労なこった。

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