セクハラって言っても日常的にお尻を触られるとかそういうのではなくて、
と、いう風に上司は割り切っていたつもりみたい。
プロジェクトは佳境でみんな日夜頑張っていたから水を差したくなかったし、
上司がいなくなったらプロジェクトがうまく行かなくなるのは目に見えていた。
私個人としては拒絶せず、受け入れず、一般論として"セクハラはダメ"って誤魔化した。
初めてセクハラされたときは、後ろから抱きしめられた時に当たった上司の伸びかけた髭の感じが本当に気持ち悪くて、一週間くらいはその感覚を思い出して鳥肌が立ってた。
本当に会社に行きたくなくて、プロジェクトの節目で退職しようと決めた。
節目は節目にならなくて、仕事はどんどん忙しくなって、辞めどきを失った。
上司は酔っ払うと2人になりたがった。
だから飲み会には極力参加しないか、してもすぐ帰るようにしていた。
腹いせに、何かされるたびに1人、口が硬そうな社員を捕まえてセクハラを伝えた。
被害としてはそこまで大きくない。
私は平穏に仕事が続けられることの代償に、たまにお酒を飲んで、手をつながれて、帰りに不意をつかれて抱きしめられて、体の関係を持ちたがる上司をタクシーに押し込むルーチンワークをするだけ。
私はいい年のおばさんなので、これくらいの肉体的接触は家で飲んだお酒と一緒に吐けばなんとかなるし、
話す内容も仕事のことがメインだったので、それなりに私にとっても有意義だったのかもしれない。
でも、業務時間外の肉体的接触よりも、仕事中の私のことを見る表情とか、言葉の節々に感じる好意が気持ち悪かった。
結婚してるくせに堂々と好きって言ってくるのも、人間として無理。
それを除けば、仕事面では私のことを育ててくれる、平等でいい上司だった。
寧ろ普通は仕事で便宜を図る代わりに愛人になれ、では?と常々思ってたけど、上司は仕事との線引はきちんとすると言っていた。
事実、私の肩を持ってくれなくて仕事がやりづらいこともあったし(他に女がいる可能性もある)、
本当に何かされたら嫌だけど、私の事好きならもうちょっと何かないの?とか、さすがにこの仕打ちは酷いと思ったこともある。
私がセクハラを受け入れてないからこういう感じだったのかもしれないし、そこは上司にしか分からない。
ただ、上司は私に大きな裁量を与えてくれていて、それが私の仕事への評価によるものなのか、セクハラの対価なのかが分からなくなった。
セクハラの事実を知っている人が増えてくるにつれて、その人達に女を使っていると思われるのでは、と怖くなった。
だから、不安で、成果を出すしか無かった。朝からずっと働いて、無理な仕事量をこなすようになった。
セクハラできる、よく働く都合のいい部下になった。ある意味良い教育だったかもしれない。
周りから見たら理解できないメンヘラワーカホリックだったと思う。
仕事上では、きちんと上司と部下をやっていたので、上司と部下としての関係も深まって、
都合のいい部下には、上司の弱いところが見えるようになった。
所謂、情というものが湧いてしまったようで、部下として支えてあげたいと思ってしまった。
もう少し弱っていたら都合のいい部下から、都合の良い愛人にジョブチェンジするところだった。
態度が軟化してしまって上司に気を持たせたのは事実だし、自分を軽蔑した。
そういうのが全部嫌で、深夜に呼び出されてお酒を飲んだ時に、会社を辞めるって言った。
有難いことに来て欲しいと言ってくださる会社はある。
そんな話をしたら、会社は辞めるな気をつけるって言ったのに、朝が来て駅まで歩いたら、上司が抱きついてきて、部屋に来たがって、私の我慢の限界が来た。
素面の時に再度怒って上司は反省した様子。だから、退職するなと言われている。
私にも悪いところがあったし、もともとこんなことをするはずが無かった上司がこんな事をするのは心労のせいだし、一旦リセットして再度、心機一転やり直して欲しいっていう気持ちもある。
部下が立場上断れなくて、それを勘違いしてしまって、会社を辞めなきゃいけないのは可哀想だ、とも思う。
私は純粋なセクハラ被害者ではなくて、一部上司を受け入れても居たから、上司を責めることはできない。
私がこのまま大人しく我慢するか、上手に上司をコントロールできていたら、プロジェクトは問題なく進むかもしれなかったと思うと申し訳ない気持ちもある。
一番はじめにセクハラを受けた時に誤魔化さずに、傘で叩けばよかったのか。
でも、そしたらプロジェクトはここまでやってこれたんだろうか。