テレ東の人気アナウンサーだった大橋未歩が退職するとかいうことで、ちょっと話題になった。そういえばこの人、一度倒れてなかったっけ、と思って調べてみると、旦那の介護もあって数ヶ月で復帰したものの、その後離婚、ほどなくして若い男性と再婚という経歴になっていた。
この経歴を見て一部の人は大橋について「献身的な旦那を捨てた悪女」みたいな評価をしている。自分も最初そう思ったが、自分の周りに似たケースがあることを思い出した。自分の両親だ。もしそれと同じだったとすると、評価は逆転する。
自分の父は、いわゆるモラルハラスメントで、とにかく人にケチをつけるのが好きだった。人が弱音を吐くとすぐに叱りつけ、質問をすれば「自分で考えろ」と撥ねつけ、失敗すれば「よく考えればわかるだろう」と嫌味をいう。とにかく取り付く島がない人間だった。
そんな父と結婚するような母親なので、気は弱く、自立心のない女性だった。
そんな母が50の頃にガンになり、放射線治療始め様々な抗ガン対策を受けることになった。ご存知のように抗ガン治療は身体の負担が重く、一人で外出できない状態になることもしばしばだ。母は若い頃から腰が悪く、40代で杖をついているような人だったから、なおのことフォローが必要だった。自分の家は三兄弟だけど、どれもすでに自立していたので、母の送迎などは父が担った。
モラハラ家庭に生まれた人ならわかるかもしれないけど、モラハラの男性は、一度義務感を覚えると、機械のように動き続ける。なので、会社と都合を合わせながらなんだかんだで父がずっと送り迎えをしていた。
そして五年間治療を続け、母は亡くなった。それでは、母が父に感謝していたかというと、そんなことはなかった。母の携帯のメールに「離婚したい」と彼女の姉(僕の伯母)に送っているのを僕は見つけていた。結局家に近寄らなかったので詳細がわからないけど、結局父はいつまでも嫌味を言い続け、母を小言で責め続けていたのだろう。
その後、父の母(僕の祖母)も父が面倒をみることがあったが、これも何かあるとすぐ怒鳴るということでひどく評判が悪かった。祖母が亡くなった時、親戚は葬儀が終わると挨拶もろくにせずにさっさと帰ってしまった。父と話したくないという態度がありありと伺えた。
大橋の元旦那はプロ野球のコーチだ。プロ野球というのは、一年の半分近くが試合で、それ以外の日も練習や準備に追われる。そんな生活をやり抜くには、自分に厳しいルールを課し、きついスケジュールを組んで、身体をスケジュールに同化させる必要がある。そんなプロ野球関係者は、おそらく普通の人から見れば鬼のような性格をしているはずだ。
石井一久のような例外はあるけど、たいていのプロ野球関係者は、奥さんに厳しい。奥さんがきつく叱られるエピソードなんて、たくさん聞いている。意味があるとはいえ、一般家庭から見たらモラハラも同然だろう。
大橋の元旦那は、大橋が脳梗塞で倒れて以後、賢明に看病していたらしい。でも、それが優しさに基づくものではなくて、僕の父のように、義務感から生まれたものだったとしたら? そうであれば、彼女は病気以前から、昼夜を問わず責め立てられていたかもしれない。
大橋と僕の母が違うのは、大橋は十分に魅力的でかつ自分で稼げる立場だったこと、病から復帰することに成功したことだ。もし僕の予想通りであれば、僕の母と同じように、大橋がどこかの段階で離婚を考えるのも無理はない。そして彼女は脱出に成功した。
これはあくまで自分の予想に過ぎない。もしかしたら、この予想は外れていて、大橋は本当は男を捨てるのに躊躇がない悪女なのかもしれない。でも、自分の予想もそこまで間違っていないのではないかと思っている。