私は割とジョブホッパーの傾向があるIT土方だが、これまで経験した会社を比較して、
「短納期や低コストで案件を請け負う事」の害が割とはっきり見えてきたので、書きとめておく。
短納期や低コストで案件を請け負う場合、受ける判断をする人(つまりは営業職やマネージャー)は、
「保守費用や次回の受注を見込んで」という理由で「多少の無理は聞きましょう」という思考をするわけだが、
工場や工事現場で見かける「安全第一」という標語が、後ろに「品質第二」「生産第三」という続きがある事を知ってる人は割といると思うが、
短納期や低コストで仕事を受けると、これが必然的「生産第一」になるのだ。だって、そうしないと終わらないから。
はっきり言ってしまうと、残業や休出が必要となったプロジェクトで、第二と第三に回すリソースなんてほぼゼロだ。
するとどうなるか。
品質を後回しにすればクレームと障害がいつまでも続くし、安全を後回しにすれば事故が起こる。
IT土方はリアル土方と違って人死はめったに出ないが、事故は起こる。
事故とは、たとえば本番用サーバ吹っ飛ばすとか、本番用DBにテストデータぶっこむとか、そういう話だ。
こういった事故や障害が発生すると、とかく作業者や技術者のスキル・意識の低さ、また作業手順の雑さが原因として槍玉に挙げられがちだが、
それは表面的な話であって、根本原因はそれらを防ぐために人員と時間を掛けられなかった事、つまりは短納期や低コストで仕事を受けて「生産第一」にしてしまった事なのだ。
そして品質が犠牲になりクレームと障害がいつまでも続いているような状況で、「保守費用や次回の受注」による黒字化など期待できるだろうか?
保守費用どころか、受け入れ障害対応だけで赤字垂れ流しなるのは目に見えているし、次回の受注に至っては話が来るかすら怪しい。
(というか、仮に次の案件が合ったとしても、一度ディスカウントした上に事故だの障害だのやらかしてるのだから、次の案件はもっと足元見られるだろう)
そういうザマになるのに、保守費用や次回の受注を見込んで案件を受けてしまう事を、「自殺行為」と呼ばずに何と呼べるだろうか。
短納期や低コストで仕事を受ける時点で、「安全や品質は犠牲になる」という事を、その結果どういう未来が待っているかを、営業やマネージャーはどれだけ理解しているだろうか。