もう散々いろいろなところでいわれているはずなのに、いまだに状況が変わらないので、いぶかしく思っていることがある。
TOEICは日本人のために日本人が作った英語の試験であって、日本を一歩出ると、認知度はほぼゼロだ。
何度でも言うが、日本を出ると、ごく一部の教育機関等を除いて、TOEICのスコアは何の役にも立たない。
TOEICは日本人サラリーマンが日本企業へ就職するために受ける試験であって、世界で通用する英語の実力とは何の関係もない。
通常のTOEICスコアと日本人がいっているものは、ReadingとListeningの試験のスコアのことであって、TOEIC SW(Speaking, Writing)のスコアのことではない。
つまり、日本人が競っているところの、グローバルな英語能力のスコアというのは、じつは、日本の中学・高校で行われていた、「リーディング」、「リスニング」なるものの延長であって、話す力、書く力を重視している他の英語能力試験とは関係がない。
イギリスの教育機関に入学しようとするとIELTS、それ以外、アメリカ等の大学ではTOEFLのスコアが求められる。いずれの試験も、Reading, Listening, Speaking, Writingのセクションがあり、点数比重は同じである。
ReadingとListeningしかないTOEICのスコアを比べて日本人のサラリーマンが一喜一憂している間に、他国の人々は総合力を試される、より難しい英語能力試験でしのぎを削っている。
これらの試験がどれぐらい難しいかは、TOEFL, IELTSとTOEICのスコア換算表を検索してみるとわかるだろう。また、日本人の平均スコアがどれだけ低いかは、実施団体が公開しているので、検索すればすぐにわかる話だ。
TOEICはいわばガラパゴス化した英語能力検定試験であるが、日本の企業の「グローバル化」戦略に合わせて人事評価をしようとすると、この「日本人のための英語の試験」がまるで唯一の基準であるかのように幅をきかせてくる。
なぜTOEFL iBTをスコアとして採用しないのかというと、TOEICを(日本では)みんな使っているから、TOEICがたまたま昔からあるからという答えになろう。
本当にビジネスで役に立つ英語の能力を測りたければ、そもそもGMATのスコアを持ってきてもらえれば済む話だろうが。
日本の企業が世界に向かって開けていこうと気炎を上げるとき、やはり日本国内で横並びになって、なにやら日本的なオブラートに包まれた試験を通してしか英語を摂取できない様には不思議なおかしみとかなしみがある。
こうした「日本的事情」は、英語のみならず、他の言語の検定試験にも共通している。
仏検(実用フランス語技能検定試験)は、公益財団法人フランス語教育振興協会(APEF)なる日本の団体が実施しているフランス語能力の検定試験だ。
この試験は昨年受験料を値上げしたが、そのときの言い訳が、受験者数の減少であった。
ちなみに、フランスの大学に留学するときに求められるのは仏検ではない。DELF, DALFという、フランス国民教育省が実施する試験である。そもそも仏検などという試験の存在は、日本に住んでいるフランス人すら、教師以外は知らないだろう。
仏検は、早晩、消滅はしないにせよ、大幅に縮小されて、ほとんど存在価値がなくなるだろう。
他の「日本人向けの外国語能力検定試験」は、その言語を使っている本国が実施する試験にその地位を奪われていくだろう。本国が実施する試験のほうが、汎用性と信頼性が高い語学能力の指標として通用するのは当たり前の話だ。
ほんとうのグローバル化とは、「日本人向けの外国語能力検定試験」という、わけのわからないガラパゴス化製品が消滅することだろう。