2014-11-15

女性への配慮イスラム原理主義との距離

海外長期滞在が決まった時のことだ。

その国にいくのは自分が初めてで、しか女子社員海外長期滞在は社内で初でずいぶんと心配された。

はいえ、滞在先はEU圏の裕福な方の国だ。治安東京とさして変わらない。自分若いから個人でヨーロッパの旅をしていたし、去年も個人でアパートをかりて一週間以上滞在する程度にはヨーロッパが好きだし、警戒心が強いので少しでも危険を感じたら即座に立ち去る嗅覚はある。スリなどの犯罪には今のところあったことがない。もちろんだから大丈夫ということはなく、気をつけるに越したことはないわけだが。

ところが会社はそう思っていなかった。直属の上司家族自分のことをよく知っているのでさして心配していなかったのだが、関係ない部署から横槍があれこれと飛んでくる。しかインターネットが普及する前の知識で心配をする。

ガイドブック片手に地図を見ながら歩いているといいカモだと思われるのは周知の事実だが、それを理由に一人で外出をするなという。滞在先はホームステイにした方がいいなどということも一時は言われた。一人暮らしは危ないからだそうだ。自分自転車乗りなので可能であれば自転車でも購入しようかと考えていたが、それもだめだという。車の運転もできるが、海外事故を起こしたら大変だからだめとも言う。女性は運転をしないほうがいいよ、なめられるし。

要するに彼らはタクシーで移動しろというのだ。常に誰か男性と行動し、しかその男性が危険かもしれないので注意しろ。かといって親しくなり過ぎないように、仕事で行くんだから。まるで自分分別のつかない三歳児かなにかのように彼らはそんなことを言う。

電話会社のものを持って行っていいしいくら使ってもいいけど、ネットは使い過ぎたりするかもしれないからだめ。今どき情報はだいたいネットに載っていて、地図電話アプリ時刻表口コミレストラン情報路線図もなにもかもスマホひとつあればことたりるし、現地のSIMをかってWi-fiルータに突っ込めば安くで使えるというのに、彼らはそれすら知らないのだった。そして過剰に自由制限しようとする。

一つも言うことなんか聞いてやるものかとムカムカしつつ、飛行機に乗った。そして機内で「少女自転車に乗って」という映画を見た。

知らない人のためにあらすじを簡単に書くと、この映画サウジアラビア映画で、主人公は十歳の少女ワジダ。サウジアラビアはもちろんイスラムの国だが戒律は厳しく、女性は家の外では目以外を露出してはいけないし、職場に行くには乗り合いタクシーを利用しないといけない。自転車に乗るのもNG。でもワジダは自転車が欲しくてあれこれするけどそもそも戒律に引っかかっているし、教師にも親にも怒られるし…という話。ネタバレはしない。

イスラム法では女性保護されるべき弱い存在なので、自由意志を持っていてはいけないのだそうだ。大変に魅力的なのでそれを隠さねばならないそうだ。

イスラム女性がみな、そのことを窮屈に思っているわけではない。庇護という名の束縛を愛情だと思っている人もいる。けれども、庇護よりも自由を求める人だっている。だって人間なんだから自分の足があって、歩いていけるのにどうして誰かに連れて行ってもらえるのを待たなきゃいけないの。

出国するまで耳にタコができるほど言われた「女性から」という言葉を思う。彼らはそれを心の底から親切のつもりで言っている。自分は正しいことを行っていると信じている。そしてたぶん同じ口で、イスラムは前時代的だ、女性の権利侵害しているなんてことも言うんだろう。日本はやっぱり自由でいいよなぁ、あっはっは。そんな風にのんきに笑えるほど、私達は彼らと遠くはなれているわけではないのに。

  • それでもだ。 女はやはりどうしても、自分自身が「獲物」である自覚が足りないように思う。 社会の規範や法律によって、見境なく狩ってはいけないルールが存在しているから、普通に...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん