会社ではそこそこのベテランとして頼られてて、現場と営業をつなぐ代えがたい人材みたいな扱いを受けていたはずだった。
でもある日、治らない病気持ちになった。
普通に通勤してたらガチれるのは1日4時間ぐらいで、あとの時間は体のケアに費やされていると言っていい。
テレワークさせて貰えるようにはなったけど、会社の業態がテレワークと噛み合ってないせいで昔みたいには出来ない。
一番痛いのはなんとなく皆の話が耳に入っていたのが全く聞こえなくなったこと。
噂好きのサボり魔が社内チャットで色々うわさ話をしてくるけど、あくまでそういうタイプの人間が面白おかしく話してるレベルでしかないので信用すると痛い目を見る。
でも今はもう無理だ。
当然のように待遇は大きく変わった。
俺用の特別な給与体系を作るわけにもいかず、俺は独立させられてフリーランスとして雇われている。
ただでさえ色々と振りになっているのに、給料も大幅に下げられた。
でも文句は言えない。
闘病にかかる費用を考えると貯金がギリギリ減らないラインを維持するので精一杯だ。
何が一番辛いって、俺抜きでも職場は回っているということだ。
俺が抜けたことで仕事のやり方は結構変わったらしく、「今まで通り仕事を続けていくにあたって代えがたい人材」だったのは間違いないらしい。
だけどそれは職場のやり方を変えるという一手間を惜しむことが出来るぐらいの意味しかなかったわけだ。
虚しい。
給料はそこらのリーマンなんかよりずっと貰っていて、公務員になった知り合いと飲みに行ったりした時は「アホだなー俺なんてこんな貰ってるぜwww」とマウントも取れていた。
でも今は逆にマウントを取られる側。
それも男女ひっくるめた日本人の中央年収っていうパートタイムや派遣がウジャウジャ入ってくるような物からマウントを取られている。
これから就職活動をするなら病気の人間としてなんだろうけど、障害者雇用をさせて貰えるってわけじゃない。
つうか、もし出来たとしても障害者レベルの給料しか貰えないなんてこっちから願い下げだ。
ちょっと同じ会社で長く務めてただけで大して能力があるわけでもない人間なんだってことが今ならよく分かる。
会社が上手く行ってただけで俺が凄かったわけじゃないんだ。
虚しいわ。
社会的に成功するのってこんなにも簡単に崩れるようなものなんだな。
貯金はある。
でも今後増えることはないだろうな。
投資で上手く増やそうなんて夢みたいな話を考える余裕なんてない。
何が一番辛いって、俺の職業人としての能力が、全然替えがきくってことが証明されたことだ。
とにかくこれが辛い。
俺は、何も掴んじゃいなかったんだなあ。
働けないなら生活保護もらえるやで。 家族がいるともらえんけど。