私は起きたら寝起き姿のまま、「おはよー」と言って彼の背中に張り付く。
そんな日々を繰り返すうちに、向こうも「コイツは起きたらまず背中に張り付いてくる」と認識したようで、毎朝私が起きてくると背中がお迎え体制になるようになった。
最近、恋人の背中と私のお腹の角度のシンクロ率が上がってきた気がする。フィットすると、彼は手を後ろに回して私の体を掴んでくれる。これは多分バグだと思う。「うば捨て山に向かう息子のモノマネ」と言われたらそれはそれで納得しそうな体勢でもあるが。
顔を洗ったら、私は日課のラジオ体操をやる。ときどきだが、恋人も一瞬だけ参加する。彼は驚くほど腕が伸びない。もうちょっと真剣にしてもいいんじゃないかと思う。
恋人は7時半に家を出る。それまでにもう1回くらいハグをする。いってらっしゃいのチューは滅多にしない。
たまに、恋人が家を出る時間になっても私はまだ寝ている日がある。そーゆーときは「いってくるね」と私の部屋に入ってきてチューしてくれる。私はド寝起きなので必死で息を止める。
恋人は残業ほぼなしの部署にいるので、大体18時には帰ってくる。私はその時間はジョギングに出ていることが多く、彼が帰宅したとき、部屋の明かりはついていない。
ふたりとも揃ったら、昼間に作っておいたご飯を温めて食べる。先日はシチューだった。ジャガイモが案外余ったので、明日は肉じゃがの予定だ。
ご飯を食べたら、割とすぐにお風呂を沸かす。恋人はトイレ掃除はよくしてくれるが、風呂掃除は好きじゃないようで概ね私がやる。毎日、私に一番風呂を譲ってくれる。嬉しい。私の風呂上がりに合わせて部屋のどこかに隠れてたり、扉の目の前で待機されてたりと、脅かされる日も多い。
彼が湯に浸かってる間に、私は髪を乾かす。二人で暮らすようになってから、脱毛やパックをするタイミングがずっとよくわからないままだ。
そういえば、恋人はシャワー派でお風呂のお湯に浸かることなんてなかったはずなのに、いつの間にか毎日お湯に浸かっている。なにかしらの動画を倍速で観ているが、倍速すぎて何を観てるかは私にはわからない。
二人ともパジャマになったら、どこかのタイミングでハグをしている。「今日は腰が痛い」などと言うと、彼がそのまま私の体を持ち上げてブラブラと下半身を左右に揺らされたりもする。それは果たして有効なのだろうか。
テレビはクイズ番組を見ることが多い。ふたりとも得意なジャンルがまるで違うので面白い。美味しい食べ物の1位を当てちゃいけない系が個人的には好きだ。一人暮らしだとバラエティなんて殆ど見ないが、誰かがいるとまんざらでもない。
食事をしつつ、テレビを見つつ、風呂に入りつつ。その日にあったことや、週末は何するかを話してダラダラ過ごす。寝るまでに恋人が食器や鍋を洗ってくれるのはもうすっかり日課になった。いつも誠にありがとう。
朝が早い分、恋人の方が寝るのも少し早い。歯磨きをして、「寝るね」と言われたら、例えリビングでウンウンと仕事をしていても、一旦手を止めてハグをするのがお決まりだ。ときどきチューもする。
平日は別々に寝るので「おやすみー」でふたりの時間はおしまい。
大体、30分か1時間後に私も自分の布団に入る。廊下を挟んだ向かいの部屋にいる恋人の寝息が、私のベッドの中まで聞こえてくる時がある。いびきじゃなくて、単なる寝息。肺活量がすごすぎる。
逆に、私は友達と旅行に行ったときなど「静かすぎて死んでるか生きてるかわからなかった」と言われたことが何度かある。実に両極端な恋人同士だ。
さあでは、そろそろ私も寝ようかな。
明日も多分、こんな感じで1日が終わる。