未練やら安堵やら希望やらがいりまじったなんともいえない気持ちを抱えながら、あと数ヶ月で30歳になろうとしている私には、最近できたイケメンの年下の恋人がいる。
半年前に離婚して以来、久しぶりに出来た恋人だ。彼の父親は白人系イギリス人で、母親が日本人なのだが、生まれてこの方イギリスで暮らしていたので日本語はあまり話せない。去年、24歳にして自分のルーツである日本語をちゃんと勉強したいと思い、一念発起して日本に移り住んできたのだ。
初めて彼を目にした時、私はこんなにカッコいい人を久しぶりに見たなーなんて思ったのだった。
(思えば、元夫を初めて会った時も、こんなにカッコいい人と久しぶりに会ったなと思ったんだった。)
反ルッキズムを声高らかに叫びたいが、生物的本能には逆らえない。男らしい眉毛と対照的に優しげな目元、そしてしっかりとした顎のラインがたまらなく好きだと思った。背も高く、よく鍛えられた身体をしている。低くて太い声も、正直聞いているだけで体が熱ってしまう。
彼は、自分の容姿が人より優れているということを知っている。初めて自分がカッコいいと気付いたのはいつ?と聞いたら、身長がグンと伸びた高校一年生の時、との答えが返ってきた。小学校と中学校を通して、彼はぽっちゃりとしていたそうなのだが、思春期を迎え身長がぐんぐん伸びるにつれて、体重も落ちていったのだという。そうしてある日、中学時代、学年で一番人気のあった可愛い女の子に久しぶりに街でバッタリ出くわした。出会い頭に彼女は心底驚いた顔で、「すごいカッコ良くなったね!」と言ったそうだ。その瞬間、彼はどうやら自分が人より優れた容姿を手に入れたらしいことに気がついたという。それからも色々な女の子たちから連絡先を聞かれたり、モデルや年上の美しい女性と付き合ったり、自身もモデルをしたりするうちに、その考えは確信に変わっていったと言う。
そんな彼の話を聞いていると、私は下手に外見が良いのも大変だなあと思う。外見だけに興味を持って近寄ってくるものの、中身を知った瞬間に落胆して離れていく人たちもいたという。そして、かくいう私も彼のことを知れば知るほど、ちょっとつまらないな、なんて思い始めているのである。私だって、好きでこんな失礼極まりなく、身の程知らずなことを考えたいのではない。それでもやっぱり、彼の会話とセックスからは、相手を楽しませようとする気概があまり感じられない。相手を心地よくさせたいという欲望は、やっぱりどこか、自分がありのままでは足らない存在だと感じてしまうコンプレックスから生まれるものなのだろうか。
外見を磨く方法はいくらでも思いつくのに、内面を磨く方法はイマイチ分からない。相手のことを自分の思い通りに変えたいと願ってしまうことの、傲慢極まりないことは分かっているのだけれど、想像せずにはいられない。もしかしたら、彼は私の内面は好きだけど、外見がもう少し良かったらと願っているかもしれない。
きっと長続きしないけれど、もう少し、一緒にいたい。