2020-09-13

ひきつる笑顔呪い

写真を撮られるのが嫌いだった。

幼い頃の写真はたくさんあるが小学校に上がってから写真はかなり少ない。





小学校入学入学した。

ピカピカのランドセル可愛い洋服

長い髪の毛をハーフアップにして一番可愛いのは私だった。


1年1組出席番号は20

隣の席の出席番号21番はやんちゃそうな男の子だった。


デメキン


顔を合わせた途端言われた。

驚きすぎてまさしくデメキンのように口をパクパクさせるしかできなかった。

私は目が大きくむしろそれが私のチャームポイントだとすら思っていたのに、横の席の彼はいたずらに笑いながらそう言ったのだ。

褒めているわけではないのは明らかだったし、「ブス」と暗に言っているのもよくわかった。

他人からそんなストレートな悪意をぶつけられたことのない私にはとても衝撃的な小学校デビューの日だった。





その日の夕食時デメキンからかわれたことを家族に話した途端


「アッハツハッハッハッハッハ!!」


と大きな声で母親が笑った。


デメキン! デメキン! アッハッハ!」


何なら慰めてもらうつもりだった私は呆気にとられた。


あんた目が大きいもんね、確かに似てるわ」


一通り笑い終えてから母はそう言った。





その日から学校でも家でもデメキンと呼ばれる日が続いた。

そのうちに学校では隣の席の男の子デメキン以外にもストレートに私をなじるようになり、家ではまだ幼い弟までもが私をデメキンと笑いながら呼ぶようになった。


私はブスだった。

父は毎日のようにカメラを構えて私達姉弟写真を撮っていたが、ブスな私を撮られたくないのでそのレンズからも逃げるようになり次第に父はカメラを構えなくなっていった。





そんなことをしているうちに思春期となり、ますます自分の顔が嫌いになっていった。

クラス可愛い子と比較していか自分がブスかを考えるようになっていた。


ブスだから写真は集合写真以外に写ろうとしなかった。

その結果『カメラの前で笑う方法』がわからなくなり、集合写真にはひきつった顔の私がいた。





小学校卒業して中学校入学した。

ブスだから着ていなかったスカート制服から着ることになった。

ヒラヒラのプリースカート可愛いな。

でもブスが可愛い格好したいなんて滑稽だ、恥ずかしい。


入学式に1枚だけスナップ写真を撮った。

親友とのツーショット彼女の親が撮ってくれた。





しばらくしてその写真親友が焼き増ししてくれた。

家に帰って封筒を開けると満面の笑みの親友の横にブスがひきつった笑顔とも言い難い顔で立っていた。


その写真を見た母親


あんちゃんと笑えないの? いつも引きつってるよね」


と冷やかした。





極力写真を避けて生活し、大学生になった。

学生証についている証明写真は目も当てられない程にひどかった。

学内では学生証に電子マネーを入れて買い物をするのだが常に学生証は裏返しでピッと決済していた。





大学生4年生の春、彼氏ができた。

こんなブスのことを毎日可愛いと言ってくれた。


髪の毛を切れば「その髪型も似合ってるね、可愛い


メイクを少し変えただけで「メイク変えた? 可愛いね」


服を買いに行けば「これが好み! 絶対可愛いよ」


何をしてもしなくても可愛いと言ってくれた。

毎日のように私を撮って、笑って笑って! この顔可愛いよ、と写真を見せてきた。





次第にブスは勘違いしてメイクファッション勉強し始め、自撮り彼氏に送るほどになった。


スマートフォンに写る自分の姿は可愛かった。





大学卒業にあたり、せっかくだから記念写真を撮ろうと母親提案してきた。

プロメイクしてもらって袴を着た。

美容院の大きな鏡に写る私は可愛かった。



「こっち見て笑ってくださーい!」


写真館でアンティーク調の椅子に座り、カメラの前でニッコリ笑顔を作った途端


「無理して笑わなくていいのに」


と笑いながら母親が声をかけてきた。

撮影が進む中、引きつってるよ、自然自然に! と常に母親声援が聞こえていた。


卒業記念の写真にはブスが写っていた。





それから10年以上経った。

私の膝にはようやく首の座った娘とイヤイヤ期真っ只中の2歳の息子がいる。


「みんな可愛い!」


そう言ってスマートフォンを構えて連写をしているのが夫だ。





毎日のように家族写真共有フォルダには可愛い笑顔の私と子どもたちがアップロードされている。

そして時々、いい笑顔の夫の写真も。

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