その女についての噂を耳にすると、不思議と心が泡立った。純粋に嫌いなのだ。不幸話を耳にすればほくそ笑んでしまうし、もっと不幸になれと呪ってしまう。
彼女がどんな女かというと、一言で言えば「マウント女」である。どんな話に対しても「でもアタシは〜」と介入してくる。
不幸にも他の友人と3人での会話になってしまった時のことだ。わたしは他の友人とだけ話したいのにそいつは割って入ってくる。その時点でまず不快だ。まぁいい。わたしがプレイしている某有名アプリの話をした時、彼女は必ず「あ〜、アタシそのアプリアンインストールしちゃったんだよね〜」と言ってくる。話し手が楽しんでプレイしてるアプリだぞ。失礼だと思わないのか。わたしはそのアプリ内であったちょっと面白かったことを話したいんだ。お前にじゃない、他の友達の方にだ。
他の友達の方はノッてくれる。面白がってくれる。自分がやってなくても、共感することはできるだろう。他の友達の方もわたしのやっていない某女性向けアプリの話をしてくる。わたしもそれを面白がる。コミュニケーションだ。会話を楽しんでいるのだ。
彼女にはそれがない。
会話の中心は常に自分。自分と自分の周囲の自分が上位にランク付けしたものについてだ。そのランク付けが透けて見えるところも嫌いだった。わたしが楽しんでいる某有名アプリは彼女にとってつまらない低俗なものなのだ。なんて不快な考え方だ。
そして彼女は自分から申し出て別部署に異動して行った。つまり今までやっていたわたしと同じ仕事はつまらない低俗なものだと彼女の中で結論が出たのだろう。世界に平和が満ちた。
時給制の大したことない仕事である。まあわたしも好きではない。ただ彼女が異動して少しした時、突然時給が200円アップした。ざまあみろ。
彼女は同じテナントの隣の部屋にいるらしい。滅多に会うことはない。他の同僚の噂とか、LINEのタイムラインで近況を知るのみだ。
彼女のタイムラインに「旦那しね.com」のURLが貼ってあった。旦那が家事育児を手伝ってくれないのだろうな。ざまあみろ。
これについては他の同僚が「◯◯さんのタイムライン見た?」と言ってくるのでわざわざ探した。LINEのタイムライン更新する人って自己顕示欲高いよね。
例のタイムラインを見るまで彼女のことは基本的に忘れるようにしていた。あまり関わらないように、考えないようにしてきた。
理由はわたしの心が泡立つからだ。嫌いな人のことばかり考えているとそれに囚われて悪いことばかりが目について耳について楽しいことを見逃してしまう。
嫌いな人のことは忘れろ。その人から離れろ。人生は短い。嫌いな人のことより好きなことを気にして生きよう。
彼女が不幸になるところを遠くからこっそり見たい。でも自分から見に行くことは避けよう。タイムラインについて教えてくれた例の同僚の続報を待とう。
別に総合的に考えたら彼女だって悪い人間ではない。単純にわたしが彼女を嫌いなだけだ。彼女のマウント癖とランク付け癖が不快なだけだ。彼女と話すと彼女に対してマウントかけたくなる自分が嫌いなだけだ。わたしはマウントするような人間になりたくないのだ。おしまい。
追記。
例のタイムラインを見つけた同僚とお昼を一緒したので詳しい彼女の近況を聞いた。
結局今の部署は嫌で、元いた我々の部署に戻りたいらしい。そうかそうか。
彼女と物理的に離れて完全にヲチ対象となったのでめちゃくちゃ面白かった。
例の同僚も上には出てこなかった別の同僚もやはり彼女に思うところがあるらしく、色んな面白いネタが聞けた。例の同僚もニラニラしたくて「旦那しね.comなんて貼ってどうしたの?」とLINEしたらしい。
昼休みがあっという間だった。
これからは例の同僚から情報を聞いてニラヲチするだけにして一切自分から関わらないぞー! 普段は存在自体忘れよう。
しかし今回の件で人の噂とか悪口で盛り上がるおばさんの気持ちがちょっとだけ分かってしまった。
でもやっぱりみんな彼女が嫌いだったんだということが分かっていろいろ粘着されてストレスばかり溜めてたあの頃のわたしも昇華されたわ。よかったよかった。
反応にいちいち腹立ててるうちはまだその彼女にマシな反応を期待してる証拠。 本当にどうでもよくなってくると何言われても何の感情も湧いてこない。 頭おかしい奴のたわごとなんか...
盛大な後出しになるけど、当時素っ気ない態度取ってたら上司から「仲間はずれにすんな(意訳)」って言われたことがあったんで関わらざるを得なかったんですよ。 小学校かな? だか...
気に入らないからって仲間はずれにする方が小学校感。 お互い表面だけ付き合うってのが出来ないのかな。
でもキモくて金のないおっさんが気に入らなくて仲間外れにするのは大人の処世術として肯定してしまうんですよねわかります